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どう攻める新興アジア 課題を好機に変える「考え方」

日経ビジネススクールアジア特別講座 サシン・セッション(上)

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の広域経済連携の枠組み「ASEAN経済共同体(ACE)」が2015年末に発足、急速に発展するASEAN市場で日本企業が競争を勝ち抜くには、現地を熟知した次世代のリーダー育成が急がれる。日本経済新聞社はタイ国立チュラロンコン大学サシン経営管理大学院と提携して9月、タイ・バンコクで「日経ビジネススクールアジア特別講座」の日本人エグゼクティブ向け講座「サシン・セッション1」を開催した。同大学院のクリッティーニ・ナタブシット准教授は「マーケティング戦略 タイ人消費者の特性を知る」と題した講義で、「社会階層ごとの課題と心理的・社会文化的な背景を捉えることがマーケティング戦略の鍵を握る」と説いた。

■新興アジアが抱える社会問題とは

タイ国立チュラロンコン大学サシン経営管理大学院准教授 クリッティーニ・ナタブシット氏 タイ国立チュラロンコン大学サシン経営管理大学院准教授 クリッティーニ・ナタブシット氏

 新興アジアビジネスでは、急激な都市化や脆弱なインフラ、まん延する汚職、貧富の差など、市場が抱える課題をチャンスとしてとらえることが重要です。タイが抱える喫緊の課題の一つに、少子高齢化問題があります。先進国入りしてからこの問題に直面した日本とは異なり、タイは社会保障制度が未整備のまま高齢化社会に突入してしまいました。タイの老人の70%、あるいはそれ以上が子供や孫といった家族からの支援を受けて、生活費や病院代を賄っていると言われています。タイ人には親や家族のために預金をするという慣習があり、これまではこのバランスが成り立ってきましたが、高齢化と同時に少子化も進んでいるため、負担のバランスが崩れる可能性もあり得ます。特に都市部の若者は晩婚化しており、子供を作らない夫婦が増えています。高齢者の面倒を見る人口は減りゆくばかりなのです。

 タイ人女性で最も多く子供を産んでいるのが、15~19歳の層であることも憂慮すべき点です。この世代は人間としては未成熟で、まだやりたいことがたくさんあり、収入に対して子供に与えられる投資も限られます。タイ政府も20歳以上の女性が子供をつくれる社会づくりを目指して動いており、このような「Teen Mom」の教育レベルを上げることが有効な方策になりますが、教育には授業料のほか、通学に必要なバス代など多面的な負担が生じます。「勉強することは良いことだ」と説得してまわる啓蒙的なソーシャルマーケティングが求められます。

■相手を理解するには相違を知ること

 このように、企業が国境を超えてビジネスを展開するには、相手国を理解したコンセプト作りが必要です。各国の文化を理解するための鍵となる、以下6つの指標が挙げられます。それぞれの指標の数値を日本とタイで比較して互いの相違を知っておけば、パートーナーが取る行動についても理解できるようになります。

(1)Power Distance(権力の格差)
(2)Individualism(個人主義)
(3)Muscularity(男性らしさ対女性らしさ)
(4)Uncleanly Avoidance(不確実性の回避)
(5)Long Term Orientation(長期計画性)
(6)Indulgence(楽しみへの投資)

■セブンイレブンが業界トップな理由

どう攻める新興アジア 課題を好機に変える「考え方」

 タイではアッパーミドルと呼ばれる中間層が増加しており、高い購買力を持つこの層は、小売業界にとって「約束されたマーケット」と言えます。近年では、流通の約60%を占めるトラディショナルトレード(小規模な個人経営店など、伝統的な小売業態)に迫る勢いで、モダントレード(ショッピングモールやスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの近代的小売業態)が伸びています。モダントレードの中でも伸びが目覚ましいのはコンビニで、地方コミュニティでは大規模なモールよりも、利便性の高いコンビニが好まれる傾向にあります。

 米国発祥のコンビニ「セブンイレブン」の店舗数は、現在では日本に次いでタイが世界で2番目に多く、2016年6月末現在で国内9252店とタイでは業界トップです。これだけのチャネルがあるということは、企業が消費者と会話の機会を持っていることを意味します。タイのセブンイレブンは、地域の家族の一員という立ち位置を明確にすることで顧客との関係性を構築する戦略を取っているのですが、これはタイでは非常に効果的なコンセプトです。いつでも食べ物があって、雨が降れば雨宿りができて、待ち合わせ場所としても使えるとアピール。もはや買い物だけをする場所を超えた立ち位置を確立することに成功しました。

 また、公共料金の支払いや送金機能などのレジカウンターサービスを始めたことで、「稼いだお金を親や子供に送りたい」という、都市で働く若者と田舎で暮らす家族の両者からのニーズを満たし、買い物をするだけの場所から、家族をつなぐ場所としての存在意義を見出し、付加価値を提供するコンビニに変身することに成功しました。

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