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映画でTOEICリスニング(国際弁護士 湯浅卓)

ジョブズとマスクの名言も覚えよう! シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

 ビジネス英語に大切なのは、意思をはっきりと伝えること。交渉ごとはもちろんのこと、仕事に対する「ビジョン」を周知させることが重要です。
 今回題材にする「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」からは、マネジメント、リーダーがどう周囲に意思決定を伝えていくか、そのヒントをつかむことができます。

アベンジャーズが直面する重大危機

(C)2016 Marvel. (C)2016 Marvel.

 公開中のアメリカ映画「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」を観ていて、名優ロバート・ダウニー・Jrが演じるアイアンマンのセリフに、2人の起業家の影を感じました。イーロン・マスクとスティーブ・ジョブズです。

 アイアンマンといえば、最新技術の粋を凝らしたマシンのスーツを着て戦うスーパーヒーローですが、映画では、アイアンマンことトニー・スタークが全面的に支援しているヒーローチーム「アベンジャーズ」に重大な危機が訪れます。

 悪を倒す過程で一般人にも大きな被害を出してしまったアベンジャーズを、今後は国連の管理下におく、というのです。国防長官からの説明に、それを受け容れるか否かでチームは内部分裂してしまいます。

 ハイテク技術の天才であり、企業のトップ、プレイボーイの大富豪、慈善事業家といったさまざまな顔を持つトニーは、きわめて現実的な判断をします。「遅かれ早かれ、こうした制約を受けるのは避けがたいだろう。であれば、いまは国連の管理下に入るのが得策だ」というのです。もちろん、被害者の遺族からの怒りの声が心に刺さるという繊細な一面も併せ持っています。

アイアンマンのモデルとなったのは

「国連の管理下に入るべきでない」というメンバーに向かってトニー(アイアンマン)はこう述べます。

That's why I'm here.
(そういうときのために、僕がいるんだ)

(C)2016 Marvel. (C)2016 Marvel.

 国連の管理下におかれることで、思わぬ事態が発生したときには、高度なハイテク技術を事実上独占していることにモノをいわせて事態を打開する、というわけです。

 さて、アイアンマンは具体的なモデルが実在することでも有名ですが、皆さんは、それが誰か、知っているでしょうか。ペイパルの創業者のひとりで、その後、ロケットを開発するスペースXや、太陽光発電会社のソーラーシティを起業、電気自動車メーカー、テスラモーターズCEOのイーロン・マスクです。

 以下は、2013年のインタビューでのマスクの言葉です。太陽光エネルギーの開発が、ライバルであるシェールガスなどに対して競い勝つだろうと自信を示しています。

I'm confident that solar will beat everything.
(僕は、太陽光エネルギーの活用が、あらゆるものを打ち負かすだろうと思っています)

マスクのスピーチが自信満々に聞こえるワケ

 この発言を聞くと、「緩急に差をつける」のが彼のスピーチの特徴だと気づきます。一般のビジネスリーダーの英語と比べると、マスクのスピーチは、「決めるところで決めよう!」しています。相手の反論をコントロールする雄弁術といってもよいでしょう。ポイントは次の3つです。

(1)「自信がある」という動詞部分(am confident)は、文字どおり、自信を持って明快に言っています。

(2)「打ち負かす」という他動詞beatは、素早く歯切れよく言っています。TOEICリスニングと比べると、聞き取るのが難しいくらいです。攻撃的な動詞だからでしょう。

(3)反対に「打ち負かす」の目的語となる名詞everythingは、非常にゆっくり発音しています。これによって、イーロンの自信が、ちょっとした自信ではなく自信満々であることがリスナーに伝わり、強烈なビジネス・メッセージとなるのです。

 もちろん、太陽光エネルギーが、シェールガスなど他のエネルギーを打ち負かすかどうかは、市場動向や技術動向によって異なってきます。ここでの発言は、太陽光エネルギーの開発に邁進する企業の経営者としてのものです。

 たとえば、数年前、シェールガス革命で生まれた雇用は、テキサス州の1州だけで、他の49州の合計に匹敵するほど、と言われていました。ちなみに、太陽光エネルギーは米国でも順調に伸びていますが、その伸びが期待したほどではなかったのは、地方議会の承認が必要という事情があったためと考えられています。

ジョブズのスピーチにあふれる感性

 また、名優ロバートの人間味あふれる演技やセリフから、もうひとりの起業家を思い浮かべました。非常に個性的な人格で有名だったシリコンバレーの伝説の起業家、スティーブ・ジョブズです。

 以下は、1994年のインタビューでジョブズが語ったものです。文章は以降も続きますが、この語り出しの一節がウォール街では非常に好まれています。

Technology is nothing. What's important is that you have a faith in people,…
(技術には意味などない。重要なのは、人々に信頼をおくということだ……)

 優れた人材を見出し、高い技術力を生み出すという、鮮やかなリーダーシップで時代を切り開いたスティーブならではの名言だといえるでしょう。先のマスクの発言が理詰めだとすれば、このジョブズの名言は、人間的な感性にフォーカスしたものです。

 先に取り上げたトニーのセリフには、国連との関係を配慮しつつ、仲間への温かな思いも込められています。2人の起業家の個性と相通じるものがあるといえるでしょう。アベンジャーズの戦いとともに、ビジネス・エグゼクティブならではの名セリフを心ゆくまでご鑑賞ください。

【映画情報】
作品名:シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
公開:公開中
原題:Captain America : Civil War
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
監督:アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ロバート・ダウニーJr./クリス・エヴァンス/スカーレット・ヨハンソン/ジェレミー・レナー/セバスチャン・スタン/アンソニー・マッキー/ドン・チードル/ポール・ベタニー/エリザベス・オルセン/チャッドウィック・ボーズマン/ポール・ラッド 他

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ジョブズとマスクの名言も覚えよう! シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

湯浅卓(ゆあさ・たかし)
国際弁護士

 1955年11月24日東京生まれ。港区立白金小学校、麻布中学・高校を経て、東京大学法学部卒業後、UCLA、コロンビア及びハーバードの各法律大学院に学ぶ。国際弁護士としての専門分野はウォール街の銀行法及びIT法の2つだが、ウォール街でのワシントン担当の実務も行う。ワシントンでは複数年にわたり、現地のアメリカ人法律大学院生2年生、3年生の「国際比較法」(4単位)を担当し、英語で授業や試験、採点を行ったこともある。書籍や論稿、並びに政府や地方公共団体、シンクタンクなどでの講演も多数。

 TOEICは、アメリカの名門、Educational Testing Service(ETS)の登録商標です。本連載では、『TOEICテスト新公式問題集』(国際ビジネスコミュニケーション協会)を推奨します。

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