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映画でTOEICリスニング(国際弁護士 湯浅卓)

大統領のジョークをわがものに/エンド・オブ・キングダム

 映画を見ながらTOEICリスニング試験の力を磨く「映画でTOEICリスニング」。今回は、政治の世界を描いた映画を取り上げます。
 映画が描くフィクションの世界と本物の大統領のスピーチを題材に、リスニング力アップのポイントを解説します。

大統領のジョークをわがものに/エンド・オブ・キングダム

大統領とシークレット・サービスのコンビが大活躍

 映画のなかのアメリカ大統領と、本物のオバマ大統領。2人のジョークを比較しながら、そのセンスを自分のものにしましょう。どちらも超一流のジョークです。

 アクション映画「エンド・オブ・ホワイトハウス」の待ちに待った続編「エンド・オブ・キングダム」では、イギリスを訪問したアメリカ大統領(アーロン・エッカート)と最強のシークレット・サービス(ジェラルド・バトラー)のコンビが、大都会ロンドンで凶悪なテロリスト集団に命を狙われ、孤軍奮闘、壮絶極まりない戦いに挑みます。

 イギリス首相が謎の死を遂げ、世界中の首脳が葬儀に参列するためにロンドンを訪れると、そこには、とんでもない陰謀が待っていたのです。各国首脳が悪のテロリスト集団の罠に陥り、一瞬にして壮絶な戦場と化すロンドン。固い絆で結ばれた大統領とシークレット・サービス、その2人の運命は?

心温まるアメリカン・ユーモアに注目

 すさまじいアクションと最強のシークレット・サービスの活躍は、映画で思う存分味わっていただくとして、以下では、心温まるアメリカン・ユーモアを見ていきます。

 大統領が超多忙なスケジュールを次々とこなし、ホワイトハウスの執務室に入ってくると、スタッフがパソコンを持って部屋を訪れ「ご子息とビデオ・チャットをなさってはいかがですか」と問いかけます。大統領は笑顔で「息子は昨日が、ガールフレンドとの初デートの日だったんだ」と明るく応じます。

 これから来る緊急電話の前フリとなる明るい空気を、監督が巧みに演出しています。アクション大作でありながら、こうした演出は実に精密で見応えがあります。

大統領からの絶妙なジョーク

大統領のジョークをわがものに/エンド・オブ・キングダム

 以下は、女性スタッフと大統領のやり取りです。「副大統領の休暇は、いつまでだった?」という大統領の問いかけに「後3日ほどですが、休暇中は声を聞きたくないと言われています」と女性スタッフが明るく愚痴ると、すかさず大統領から絶妙なジョークが発せられます。

Yeah, never get between that man and a fish.
(そりゃそうだよ、彼と魚のあいだに入ろうたって、お邪魔虫扱いされちゃうって)

「get between」は「~のあいだに入る、割って入る、邪魔をする」などの意味です。ここで注意していただきたいのは、家族的な温かい空気のなかで、こうした会話やジョークが成り立つということです。

 また、この映画に限っての話ですが、そこにはもっと深い意味があります。副大統領(モーガン・フリーマン)は大魚を狙うのが得意です。大統領は軽快に話していますが、このセリフには「巨大な陰謀」が隠喩として潜んでいるのです。

「大魚」を英語にすると「a big fish」ですが、この単語にはもうひとつの意味があります。それは「大物、重要人物」です。映画のなかの最重要人物といえば、もちろん大統領です。

 また、「that man」は文字どおり「あの男」、すなわち、大統領を狙うテロリストです。

 そして「そのあいだに割り込む=邪魔をする」のが、もうひとりの主役、シークレット・サービスです。

オバマ大統領のスピーチから

 次は、2011年、ホワイトハウスに人々を招いてメキシコの記念日を祝うパーティーを行ったときのオバマ大統領のスピーチからです。「食事の前の私のスピーチは手短にしましょう」と言いつつ、隣に立つミシェル夫人にユーモラスな突っ込みを入れました。「夫人はメキシコ料理が大好物だ」という事実を明かして、それに続けます。

You do not want to be between Michelle and a tamale.
(ミシェルがタマルを目にしたときは、そのあいだに入らないに限る)

「tamale(タマル)」とは、挽肉やトウモロコシ粉、唐辛子などをトウモロコシの皮で包んで蒸した有名なメキシコ料理のひとつです。「a tamale」は、その一包みを指します。何包みでも食が進む、パーティー料理の定番です。

 この軽い突っ込みを入れるときの、ミシェル夫人が愛しくてたまらないという大統領の優しい表情が、トークの味を最高に引き立たせていました。その後、パーティー会場では、思う存分タマルを食し、にこやかに微笑むミシェル夫人との仲睦まじい姿がありました。

音の強弱に注目しよう

 ここで、音の強弱に着目しましょう。英語リスニングでは、出だしの音の強弱のリズムをつかむと、文章全体をスムーズに聞き取ることができます。オバマ大統領は、上記の一文の出だし「You do not」を、どういう強弱で語ったのでしょうか。

 一番強く発音したのは「not(文の否定を意味する副詞)」です。

 次が「You」。これは、パーティー出席者を含めた「人々一般」という意味です。

 そして、3番目が、明快な強さで発する「do(助動詞)」です。

 アメリカ史上の名だたる雄弁家のひとりといわれているオバマ大統領は、この順番で鮮やかに発したのです。

ユーモアを増幅させる音の強弱

「否定のnot」が強いのは、理屈からいっても理解しやすいと思います。そして、2番目に強い「You」にこそ、「パーティー会場にいるすべての人々(もちろんオバマ大統領自身も)も含めて」というアメリカン・ユーモアのエッセンスが凝縮されています。「You」を強く発音することで、「誰も、ミシェル夫人とタマルのあいだには入れない」というユーモアが増幅するのです。

 このオバマ大統領のスピーチが2011年であったことを考えると「同映画の脚本家が、オバマ大統領のジョークを意識して、同映画の大統領のセリフをオマージュしたのかなあ?」という知的興味をそそります。「ビッグ・フィッシュ」な大物ならではのジョークのエッセンスを、ぜひ、ものにしちゃいましょう。

【映画情報】
作品名:エンド・オブ・キングダム
公開:公開中
配給:ショウゲート
監督:ババク・ナジャフィ
出演:ジェラルド・バトラー/アーロン・エッカート/モーガン・フリーマン 他

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大統領のジョークをわがものに/エンド・オブ・キングダム

湯浅卓(ゆあさ・たかし)
国際弁護士

 1955年11月24日東京生まれ。港区立白金小学校、麻布中学・高校を経て、東京大学法学部卒業後、UCLA、コロンビア及びハーバードの各法律大学院に学ぶ。国際弁護士としての専門分野はウォール街の銀行法及びIT法の2つだが、ウォール街でのワシントン担当の実務も行う。ワシントンでは複数年にわたり、現地のアメリカ人法律大学院生2年生、3年生の「国際比較法」(4単位)を担当し、英語で授業や試験、採点を行ったこともある。書籍や論稿、並びに政府や地方公共団体、シンクタンクなどでの講演も多数。

 TOEICは、アメリカの名門、Educational Testing Service(ETS)の登録商標です。本連載では、『TOEICテスト新公式問題集』(国際ビジネスコミュニケーション協会)を推奨します。

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