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龍馬の参謀力

筆まめだった龍馬、キーパーソンとの交流深める(西村克己)

 いつの時代も、信頼関係の構築にはコミュニケーションが不可欠です。龍馬は手紙によるコミュニケーションを重視していました。

筆まめだった龍馬、キーパーソンとの交流深める(西村克己)

 19歳で江戸に出てから、多くの手紙を書いています。19歳から暗殺される33歳までの約15年間で、現存する手紙は139通です。妻のお龍(りょう)に宛てた手紙は、お龍の手で全て焼却されたため、いかに多くの手紙を書いたかがわかります。

 龍馬は手紙によるコミュニケーションを重視していました。手紙であれば、自分がわざわざ移動しなくても、情報を相手に伝えることができます。キーパーソンと交流を維持するためにも、そして忘れられないためにも、手紙は有効なコミュニケーション力だったのです。

 1862年(文久2年)12月、勝海舟との初会談で、龍馬は勝海舟のすごさを実感します。また同時に勝海舟は龍馬を門人として迎え入れます。

 当時の厳しい身分制度では、身分が異なる人と対等に話すことは常識では考えられませんでした。対等に話をしなければ、コミュニケーションは成り立ちません。たとえば、身分が高い人が発言したことを、身分が低い人間が意見をするとか、否定することは無礼討ちに値する時代でした。

 龍馬は勝海舟に初めて出会って、わずか4カ月あまりで新設の神戸軍艦塾の塾頭を任せられました。それほど、龍馬は勝海舟に認められていたのです。そして神戸軍艦塾は1年後の1864年4月に、神戸海軍操練所として幕府のお墨付きで設立されます。

筆まめだった龍馬、キーパーソンとの交流深める(西村克己)

 龍馬が多くのキーパーソンから信頼関係が得られたのも、コミュニケーション力に寄るところが大きく、相手からホンネを引き出す力に優れていたからです。

 薩長同盟を狙って1865年に、薩長同盟のために下関に長州藩の桂小五郎を待たせていました。しかし、西郷隆盛はドタキャンして京都に逃避します。

 龍馬は西郷に会いに行き、西郷が逃避した理由を知ります。第一次幕長戦争で大敗した長州藩に、なぜわざわざ勝者の薩摩藩が頭を下げなければいけないかというプライドの問題があったのです。

 龍馬がもし一方的に西郷の逃避を非難していたら、薩長経済交易も、亀山社中も、薩長同盟も成り立たなかったでしょう。相手の意見に耳を傾けホンネを引き出す龍馬のコミュニケーション力があってこそ、西郷を薩長同盟に向けることに成功したのです。

 薩長同盟後、両藩の幕府内での発言権が拡大する一方で、土佐藩は発言権を失いつつありました。龍馬は後藤象二郎に嘆願されて、土佐帆船夕顔で船中八策(大政奉還案)を草案しています。

 龍馬は相手の真剣さには、自分の真剣さを持って答えようとします。龍馬の「窮地は知恵で救える」という信念が、土佐藩の窮地を救う船中八策を生み出しました。もしも龍馬が、後藤象二郎の嘆願に耳を貸さなければ、無血開城の大政奉還は実現しませんでした。

 このほかにも龍馬は、キーパーソンをつなぐ仲介役として活躍しています。身分の上下関係で、うまく議論ができなかった時代において、会話の本質を突いた龍馬のコミュニケーション力は一流だったといえるでしょう。

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筆まめだった龍馬、キーパーソンとの交流深める(西村克己)

西村 克己(にしむら・かつみ)
ナレッジクリエイト代表取締役、日経ビジネススクール講師

 1982年東京工業大学大学院経営工学科修了。富士フイルムを経て、90年に日本総合研究所に移り、研究事業本部主任研究員として経営コンサルティング、社員研修会などを多数手がける。2003年から芝浦工業大学大学院教授を経て08年客員教授。現在、昭和ホールディングス社外取締役、株式会社ナレッジクリエイト代表取締役。専門分野は、経営戦略、戦略思考、プロジェクトマネジメント、ロジカルシンキングなど。
 著書は『持たないで儲ける会社』(講談社+α新書)、『1分間ドラッカー』『1分間コトラー』『1分間ジャック・ウェルチ』(以上、SBクリエイティブ)、『ゼロから始めるプロジェクトマネジメント大全』(大和書房)『問題解決フレームワーク44』『戦略決定フレームワーク45』(学研パブリッシング)、『ポーター博士の「競争戦略」の授業』(かんき出版)など120冊を超える。

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