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龍馬の参謀力

シナリオプラニングに不可欠な「大局観」とは(西村克己)

 日本企業の多くは、外部環境の変化にあまりにも鈍感です。もしあなたの会社で「前例重視」という風潮があるなら、ガラパゴス化に向かっています。なぜなら前提重視は、外部環境が不変であるという前提のみにおいて有効だからです。外部環境が変化すれば、過去の成功体験は陳腐化します。間違った方向にミスリードすることで、組織のデスマーチ(死の行進)に突入するのです。さて、あなたの会社は大丈夫でしょうか?

不確実な中で描く問題解決のシナリオ

シナリオプラニングに不可欠な「大局観」とは(西村克己)

 問題解決のほとんどは、多くの障害を乗り越えていく必要があります。坂本龍馬の場合、平和な日本を実現するために、犬猿の中であった薩長に同盟を組ませ(薩長同盟)、そして大政奉還というシナリオを描いたといえます。

 シナリオプラニングとは、「不確実性(リスク)と複雑な環境の中で問題解決のシナリオを描くこと」です。そのためには、組織の内外で何が起きているのか、これから何が起きようとしているのか、不確実性と環境変化を先読みし、障害を乗り越えて目的を達成することが求められます。現状の延長線上だけで考えるとか、やみくもな猪突(ちょとつ)猛進では、シナリオプラニングはできないのです。

 近年、グローバル化、デフレ経済、アジア諸国の経済発展など、日本を取り巻く経営環境が激変しています。また将来の環境変化を正確に予測できる人はいません。このような前人未踏の時代においては、不確実性と複雑性の中でも、問題解決のシナリオが描ける力、シナリオプラニングの力が求められているのです。

脱藩した龍馬とできなかった半平太

 シナリオプラニングは、部分に固執する前に全体の視点を重視することが不可欠です。龍馬のシナリオプラニングは、土佐藩の中にとどまっていたとすれば、間違った方向に行ったでしょう。実際、土佐藩の枠に縛られた土佐勤王党の武市半平太(瑞山)は、結局は藩の弾圧により捕らえられ、切腹に追い込まれました。武市半平太は優秀でしたが、土佐藩の枠組みから抜け出せなかったのです。

 藩を会社に置き換えれば、会社内部の価値観にこだわっていては、間違った方向のシナリオプラニングになるでしょう。龍馬は萩(長州藩)の久坂玄瑞を訪ね、鉄砲の時代、脱藩の必要性を理解し、土佐藩を脱藩します。藩に縛られず、世界や日本の枠で発想するためには脱藩が不可欠だったのです。

 龍馬は、自由で平等な社会、強い日本作りのビジョン(展望)を描いていますが、その道のりは単純ではありません。米国からの開国要求をどう解決するか、藩体制の維持を求める保守派、尊王攘夷派を求める過激派、幕府弱体化による社会秩序の崩壊など、問題は山積みでした。

 いかにして問題解決のシナリオを描くか、その結論として龍馬が実行したのが、薩長同盟による国内の秩序の回復と、「船中八策」による法律で政治を運営する自由で平等な社会だったのです。

「龍馬の参謀力」は毎週水曜更新です。次回は4月27日の予定です。

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シナリオプラニングに不可欠な「大局観」とは(西村克己)

西村 克己(にしむら・かつみ)
ナレッジクリエイト代表取締役、日経ビジネススクール講師

 1982年東京工業大学大学院経営工学科修了。富士フイルムを経て、90年に日本総合研究所に移り、研究事業本部主任研究員として経営コンサルティング、社員研修会などを多数手がける。2003年から芝浦工業大学大学院教授を経て08年客員教授。現在、昭和ホールディングス社外取締役、株式会社ナレッジクリエイト代表取締役。専門分野は、経営戦略、戦略思考、プロジェクトマネジメント、ロジカルシンキングなど。
 著書は『持たないで儲ける会社』(講談社+α新書)、『1分間ドラッカー』『1分間コトラー』『1分間ジャック・ウェルチ』(以上、SBクリエイティブ)、『ゼロから始めるプロジェクトマネジメント大全』(大和書房)『問題解決フレームワーク44』『戦略決定フレームワーク45』(学研パブリッシング)、『ポーター博士の「競争戦略」の授業』(かんき出版)など120冊を超える。

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