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龍馬の参謀力

龍馬の日本グローバル化~目的から「最適な手段」(西村克己)

 龍馬は目的指向の人でした。彼の目的は、「海外に対抗できる強い日本にすること」、そして「日本を諸外国の属(植民地)にさせないこと」でした。これに照らし合わせてみると、龍馬の取った手段と行動には一貫性があります。犬猿の仲だった薩長の同盟を提案し実現にこぎつけますが、薩長同盟を可能にするためには、亀山社中を率いる龍馬の航海術が不可欠でした。目的達成に必要なプロフェッショナルのノウハウを身につけていたのです。日本企業も、東インド会社のように諸外国の属国企業とならないでほしいものです。

 目的指向とは、目的を先に考えてから、その達成に最適な手段を選択していく考え方です。目的が先、手段が後です。手段で迷ったら、目的に戻ってからもう一度「最適な手段は何か?」を問いかけます。

龍馬の日本グローバル化~目的から「最適な手段」(西村克己)

 目的は1つ、手段は無限にあります。たとえば、品川から六本木のミッドタウンに行く方法を考えたとします。手段としては、電車、タクシー、バス、徒歩などがあるでしょう。 目的は1つでも手段は無限です。電車で行く場合でも乗り換えルートがいろいろあり、また徒歩と電車を組み合わせて1駅か2駅を歩いていくという手段もあれば、タクシーで行くことも手段の1つです。手段に迷ったら目的に帰って判断します。

 龍馬は、自由で平和な日本、「海外に対抗できる強い日本にすること」を目的としてビジョン(展望)に掲げました。「日本を諸外国の属国にさせないこと」も目的でした。そして最適な手段は何かを、知恵を出して考え、行動に移したのです。

 当時、中国はアヘン戦争(1840-42年)に負けて、イギリスの属国になっていました。龍馬は目的を達成するための手段として、内乱による国力の分散を避けたいとを考えました。薩長が対立すると、日本は内乱が収拾できず、諸外国に侵略するスキを与えてしまいます。属国になってしまえば、海外に対抗できる強い日本は実現できません。そこで考えたのが薩長同盟です。

 しかし、犬猿の仲だった薩長の同盟は、両藩のプライドもあり一筋縄ではいきません。そこで一見迂回的な経済交易を提案し、亀山社中がその仲介役として貢献しました。亀山社中を作ったのも、それを実現するための手段でした。また、当初から貿易立国を構想していたため、龍馬にとっても薩長経済交易、亀山社中の設立は最適の手段だったのです。

 知恵を出せば最適な手段は必ず見つかるはずです。常に目的を見失わないこと、そして目的のための手段にある程度の柔軟性を持たせることが大切です。目的は1つ、手段は臨機応変に最適な手段を選択するという考え方が、何事かを成功に導くために大切です。

 龍馬が多くの人から評価されたのは、彼自身の人柄だけではありません。目的達成のために必要なノウハウを身につけていたからです。龍馬は戦略家であると同時に、航海術にたけたプロフェッショナルでもありました。

 自由で平和な日本、そして海外に対抗できる強い日本を実現するために何が必要か――。龍馬が導いた結論は、航海術、砲術だったのです。航海術を身につけるため、勝海舟の門人となります。また砲術を身につけるため、龍馬は佐久間象山の弟子、砲術家の徳弘孝蔵の門人となります。それは偶然だったわけではなく、自ら航海術、砲術の重要性に気づき門人に志願しているのです。

 目的達成のために必要なスキルを身につけることも大切です。「あなたは何のプロフェッショナルですか?」という問いに対して、即答できるでしょうか。そして「そのプロフェッショナル分野は何のために役立つのでしょうか?」という問いの答えも用意する必要があるでしょう。

「龍馬の参謀力」は水曜更新です。次回は6月1日の予定です。

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龍馬の日本グローバル化~目的から「最適な手段」(西村克己)

西村 克己(にしむら・かつみ)
ナレッジクリエイト代表取締役、日経ビジネススクール講師

 1982年東京工業大学大学院経営工学科修了。富士フイルムを経て、90年に日本総合研究所に移り、研究事業本部主任研究員として経営コンサルティング、社員研修会などを多数手がける。2003年から芝浦工業大学大学院教授を経て08年客員教授。現在、昭和ホールディングス社外取締役、株式会社ナレッジクリエイト代表取締役。専門分野は、経営戦略、戦略思考、プロジェクトマネジメント、ロジカルシンキングなど。
 著書は『持たないで儲ける会社』(講談社+α新書)、『1分間ドラッカー』『1分間コトラー』『1分間ジャック・ウェルチ』(以上、SBクリエイティブ)、『ゼロから始めるプロジェクトマネジメント大全』(大和書房)『問題解決フレームワーク44』『戦略決定フレームワーク45』(学研パブリッシング)、『ポーター博士の「競争戦略」の授業』(かんき出版)など120冊を超える。

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