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龍馬の参謀力

龍馬に学ぶ人材育成術、賄賂もらった部下の運命は?(西村克己)

龍馬に学ぶ人材育成術、賄賂もらった部下の運命は?

 龍馬は28歳で勝海舟と初めて会談したときに、人材育成の重要性を理解していました。人材育成によって将来の日本を支えていくことの重要性に共感しています。龍馬がすぐさま勝海舟に入門し、4カ月後には航海術を教える神戸海軍塾の塾頭になったのも人材育成のためでした。

 1863年4月に開塾した神戸海軍塾は、1年後の64年5月に幕府の資金で開設される神戸海軍操練所に運営が引き継がれます。操練所には2艘の船があり、航海術の実践の場でした。

龍馬に学ぶ人材育成術、賄賂もらった部下の運命は?(西村克己)

 神戸海軍操練所の解散後、勝海舟の口添えによって西郷隆盛預かりで、龍馬をはじめとするメンバーは薩摩藩に拠点を移します。そして活動拠点としては、長崎の亀山の地において、貿易商社の亀山社中を設立します。航海術の人材育成は、亀山社中によって引き継がれたのです。

 ここでは、航海術のほか、武器弾薬の輸入による貿易術、そして組織運営術を実践で学ぶことができました。また龍馬は25歳の時、砲術家の徳弘孝蔵の門人になっているので、砲術についても人材を育てられたでしょう。

 そして薩長同盟成立後、亀山社中の存在意義が薄れると、仮に解散し、土佐海援隊に運営が引き継がれました。土佐藩としては、航海術を実践で身につけてきた亀山社中が、のどから手が出るほど欲しかったのです。

 龍馬の人材育成法は、権限を委譲して部下に運営を徹底して任せることでした。適材適所を見極めながら、能力がある人に思いきって委ねたのです。亀山社中では、組織運営、貿易交渉、金勘定など、さまざまな仕事が発生します。龍馬は担当を決めて、社中メンバーに任せました。

 権限委譲しても、部下に裏切られることはあります。実際、近藤長次郎(通称“だんご屋長次郎”)が、薩長経済交易の成功により、長州藩主から謝礼を個人的に受け取っています。亀山社中の平等と協議で決める運営方針では、隠し事はタブーでした。この謝礼は、社中メンバーに黙っていたら賄賂になります。龍馬の留守中に、任せたメンバーによって、長次郎は切腹に追い込まれました。しかし龍馬は、その後もメンバーを信じて亀山社中の運営を任せています。

 龍馬のすごさは、自分でやるべきことと、他人に任せることをきちんと識別していた点にあります。土佐海援隊時代、「いろは丸」が紀州藩「明光丸」によって沈没させられた海難事故においては、龍馬が率先して解決しています。部下に任せる限界も知り、自分でやるべきことは自分で実行したのです。

 神戸において、勝海舟の逸話があります。操練所が神戸にできて以後、漁村だった神戸は港町として発展するようになります。それを見越していた海舟は、自分の世話をしてくれた者に「今のうちに土地を買っておくがいい」と助言したそうです。その後、見事に地価が高騰し、支援者たちは大きな利益を上げたといいます。

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龍馬に学ぶ人材育成術、賄賂もらった部下の運命は?(西村克己)

西村 克己(にしむら・かつみ)
ナレッジクリエイト代表取締役、日経ビジネススクール講師

 1982年東京工業大学大学院経営工学科修了。富士フイルムを経て、90年に日本総合研究所に移り、研究事業本部主任研究員として経営コンサルティング、社員研修会などを多数手がける。2003年から芝浦工業大学大学院教授を経て08年客員教授。現在、昭和ホールディングス社外取締役、株式会社ナレッジクリエイト代表取締役。専門分野は、経営戦略、戦略思考、プロジェクトマネジメント、ロジカルシンキングなど。
 著書は『持たないで儲ける会社』(講談社+α新書)、『1分間ドラッカー』『1分間コトラー』『1分間ジャック・ウェルチ』(以上、SBクリエイティブ)、『ゼロから始めるプロジェクトマネジメント大全』(大和書房)『問題解決フレームワーク44』『戦略決定フレームワーク45』(学研パブリッシング)、『ポーター博士の「競争戦略」の授業』(かんき出版)など120冊を超える。

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