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最強のロジカルシンキング

あなたの人生を充実させる「ロジカルな習慣」とは?(堀 公俊)

第9回 「中でも」 大きな壺は石からつめる

ライフワークvsライスワーク

 皆さんは、ご自分のキャリアに関心はありますか。「Yes」という方は、理想とする姿に近づくために、今やっている仕事や活動を棚卸しするエクササイズをやってみませんか。5分もあればできると思いますので。

 白紙を1枚ご用意ください。そこに十文字の線を書いて紙面を4分割して、縦軸・横軸の端に「+」と「-」をつけてください。

縦軸は、組織や社会にとっての必要度(Need)です。上(+)が「必要である」、下(-)が「必要でない」です。横軸は欲求度(Want)で、右(+)が「やりたい」、左(-)が「やりたくない」です。

 自分がやっている仕事や活動を洗いざらいピックアップして、4つの象限に振り分けてみましょう(付箋を使うと便利です)。どこに偏っているのか、全体のバランスや傾向を調べてみるのです。

①ライフワーク(Life Work:右上) 使命感のある仕事、人生を掛けた活動
②ライスワーク(Rice Work:左上) 生活のための仕事、義務や奉仕活動
③ライクワーク(Like Work:右下) 好きな仕事、趣味や息抜き的な作業
④ライワーク(Lie Work:左下) 見せかけの仕事、単なる暇つぶし

 一般的にはこの順番で優先順位が高くなります。どこを増やしてどこを減らせば望ましい姿に近づくか。Need/Wantマトリクスを見ながら考えてみましょう。

メリハリをつけて効率的に考えよう

 物事に優先順位(プライオリティー)をつけると、エネルギーを注ぐポイントが絞られてきます。限られた時間をできるだけ有効に使うには、優先順位が欠かせません。

 前回、「他に」「あるいは」と考えて、選択肢や考え方の筋道を増やすという話をしました。検討の幅を広げて考えるほうが理にかなっていると。

 ところが、広げたままでは焦点が定まりません。すべての考え方を調べたのでは、時間がいくらあっても足りません。

 そこで必要となるのが優先順位です。メリハリをつけて重点的に考えることです。「他に」で広げた後は、「中でも」(とりわけ、特に、まずは)で絞り込む。それが、合理的に考えるためのコツです。

[OK] 今取りうる選択肢は3つあります。 中でも、もっとも望ましいのは……。
[OK] 課題としては○○があり、他に△△と□□が考えられます。 とりわけ、○○は……。

思い切りの良さが大切

 世の中には、あれもこれもテンコモリにしたがる人がいます。選択肢を増やすことで安心を求めたり、取捨選択による失敗のリスクを避けようとしたりする人です。自分一人でならまだしも、会議でそんなことをやられると、日が暮れてしまいます。優先順位をつけるよう働きかけましょう。

[NG] たとえば、○○とか△△とか……。他に□□や◇◇もあるよね。
[OK] 中でも、どれが一番大切ですか?

 「絞り込む」ことは、「切り捨てる」ことに他なりません。あえて、完全を求めず、少々のヌケモレには目をつぶります。

 それでもうまくいくのは、「上位20%が全体の80%をカバーする」という「パレートの法則」(20:80の法則)が働くからです。特にビジネスの話であれば、80%どころか50%もあれば十分。正確に考えることよりも、早く判断をして行動に移すことのほうが大切です。

[OK] 無理にでも、やるべきことを1つに絞るとしたら?

 優先順位をつけるときは思い切りが大切です。バッサリと捨て去る勇気がないと、重点思考はできません。割り切りが苦手な方は、「捨てる」のではなく、「後に回す」と考えれば気が楽になります。 あくまでも順位を決めているだけと割り切って。

[OK] その中で、まずは、どこから手をつけていきましょうか?

基準は合理的には決まらない

 優先順位をつけるときは、判定する基準が問題になってきます。

 原因論に立てば、より本質的なもののほうが重要とみなされます。結果に寄与する割合で決めるという方法です。

 一方、目的論に立てば、目的の達成にどれくらい貢献できるか、が判定の基準となります。あるいは、希少性で測るという手もあります。他に換え難いものは重要だからです。

 他にもいくつか基準は考えられますが、最後は価値観の話に帰着します。

 冒頭のNeed/Wantマトリクスの話にしても、(1)ライフワークよりも(2)ライスワークを重要だと考える人がいてもおかしくありません。愛、安定、正義、挑戦、完遂など、人が大切にしているものは十人十色。価値観やライフスタイルによって基準は変わってきます。

 企業を見ても、売上を重視するところもあれば、利益に重きをおくところもあります。業績ではなく、社会への貢献や社員の幸福を第一義に掲げているところもあります。企業や追及する目的や価値に合っていれば、他人がとやかく言う筋合いではありません。

 残念ながら、基準を合理的に決める方法はありません。多くの人が賛同しやすい基準はあっても、「今この時点で何が大切なのか?」を都度考えるしかありません。

砂で満杯になっていませんか?

 1つ注意してほしいことがあります。思考の優先順位は、必ずしも行動の優先順位とは一致しない、という話です。重要でないもののほうが手をつけやすいからです。

 分かりやすいのが会議です。たくさんの議題が並んでいると、「とりあえず、簡単なものから」という人が必ず現れます。ところが、すぐに片付くと思った議題に意外に時間をとられ、肝心の話が先送りに……。

 あまり頭を使わない話に時間を費やし、戦略立案などの複雑な案件の議論が疎かになってしまう、「計画におけるグレシャムの法則」と呼ばれる現象です。皆さんの会社でも同じようなことが起こっていませんか。

 大きなつぼを、小石、砂利、砂でバランスよく満たすには、どんな順番で入れたらよいか、考えてみてください。最初に砂をどっと入れてしまったら、石を入れる機会をなくしてしまいます。最も重要なものから取り掛からないと、瑣末(さまつ)なことで一杯になってしまうわけです。

 身動きがとれないときは、「とりあえず」(ひとまず、当面)で始めるのも悪くありませんが、どこかで「とりわけ」にスイッチしないと大きなことができません。

[NG] とりあえず、△△からやってみるか。
[OK] とりわけ重要な○○から取りかかろう。

 優先順位をつける習慣は、合理的に考えるだけではなく、充実した人生を送るためにもなくてはならないものなのです。

最強のロジカルシンキング」は毎週木曜更新です。次回は6月16日の予定です。

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あなたの人生を充実させる「ロジカルな習慣」とは?(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ファシリテーション・ベーシックス』(日本経済新聞出版社)、『問題解決フレームワーク大全』(日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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