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最強のロジカルシンキング

「ロジカル思考を使える人は仕事ができる」は正しい?(堀 公俊)

第25回 「少なくとも」 どこに防衛ラインを引くか

論理クイズにチャレンジしてみよう!

 本連載もはや25回目。初回から通して読んでいただいている方は、かなりロジカルシンキングのセンスが磨かれてきたのではないかと思います。ここらで、それを試す簡単なテストをやってみましょう。

 仕事ができる人はロジカルシンキングが使える。この話が正しいとしたら、以下のどれが正しくて、どれが間違っているでしょうか。単純にイエス/ノーのどちらかでお答えください。

~仕事ができる人はロジカルシンキングが使える~
1)少なくともロジカルシンキングは、仕事ができるのに必要だ
2)仕事ができていれば、ロジカルシンキングができるのに十分だ
3)ロジカルシンキングを使える人は仕事ができる
4)仕事ができない人はロジカルシンキングが使えない
5)少なくともロジカルシンキングが使えない人は仕事ができない

 いかがでしょうか。似たような文章ばかりで、かなり頭の中が混乱してきたのではありませんか。分かりにくい方は、図を書くと論理のつながりがつかみやすくなります。簡単に考えるのを諦めず、じっくりと考えてから次をご覧ください。

論理だけを取り出すと分かりやすい

 正解は1、2、5がイエスで、3、4がノーです。さて、何問正解されたでしょうか。

 要は、論理のつながりをチェックすればよく、「仕事ができる人」を「日本人」に、「ロジカルシンキング」を「日本語」に置き換えても同じです。そうすれば、かなり分かりやすくなります。

~日本人は日本語が話せる~
1)少なくとも日本語は、日本人であるのに必要だ →イエス
2)日本人であれば、日本語が話せるのに十分だ →イエス
3)日本語が話せる人は日本人だ →ノー 日本語が話せる外人はたくさんいます
4)日本人でない人は日本語が話せない →ノー 外人でも日本語が話せる人がいます
5)少なくとも日本語が話せない人は、日本人ではない →イエス

 図で言えば、日本人(仕事できる)の小さな円を、日本語(ロジカルシンキング)の大きな円がすっぽりと取り囲んでいる形になります。日本人の総数よりも、日本語が話せる人の数が多いので。納得していただけましたでしょうか。

 え、「日本人でも日本語が話せない人がいる」ですって。だから、「この話が正しいとしたら」といったじゃないですか。仮定の話を前提に論理のつながりを考えてもらったわけです。

大切なことだけにフォーカスする

 今回のワンフレーズは、先ほどのクイズの中で何度も登場した「少なくとも」(最低、最悪、何はともあれ)です。ロジカルに考える際によく使う言葉です。

【OK】 少なくとも、ロジカルシンキングは仕事ができる人には必要だ

 仕事ができる人はいろんなスキルを持っており、そのうちの一つとして必ず身につけているのがロジカルシンキングです(と仮定しました)。だとしたら、他はともかく、ロジカルシンキングができないようでは、仕事ができる人になれません。

こんな風に、「少なくとも」は、「他はすべて考慮の対象からいったんはずして、これだけにフォーカスすれば」という意味で使います。

 ロジカルシンキングでは、いろんな角度から多面的に考えなくてはなりません。扱う問題が複雑になればなるほど、どこが正しくてどこが間違っているか、入り組んで分かりにくくなります。

 そういうときこそ「少なくとも」の出番です。大切なことにだけスポットライトを当て、シンプルに考えられるようにします。死守すべきロジックの防衛ラインを引くのです。

【NG】 わが社も悪いかもしれないが、顧客が正しい使い方をしていれば……
【OK】 少なくとも、わが社にも落ち度があったことは認めざるをえません

「必ずしも」で予防線を張っておく

 「これ以上は引き下がれない最低限度を示す」のが「少なくとも」です。なので、この言葉の後には、絶対に通して(認めて)ほしいロジックが出てきます。

それでも、そこにイチャモンがつく場合があります。そうなりそうなら、あらかじめ予防線を張っておきましょう。便利なフレーズに「必ずしも」(あながち、一概に)があります。「少なくとも」とセットで使うと効果的です。

【NG】 少なくとも、ロジカルシンキングは仕事に役に立つ
【OK】 (たしかに)必ずしもすべての仕事にロジカルシンキングは必要だと限らない。(とはいえ)少なくともできないよりできるほうがよいに決まっている

 「100%完全無欠ではない」「例外がある」ことは、あなたに言われなくても百も承知。でも最低限これだけは言えるよね、というのが「必ずしも」「少なくとも」のセットです。さらに、それぞれの頭に「たしかに」「とはいえ」つけるとさらにパワーアップします。

 ちょっと回りくどい言い方ですが、こう言われるとツッコミどころが見つけにくくなります。ストレートに結論を述べるよりも、いろいろ考えた上で結論づけているような印象を与えます。結果的に説得力が高まるわけです。

ミニマムの見積もりを示すのに使う

 「少なくとも」にはもう一つの用法があります。量や程度に対する最低限を示す使い方です。

 最低ラインとして見積もっていることを示せば、数字の意味が共有しやくなります。誤解や行き違いが減ります。

【NG】 この仕事をやりきるには10人くらいが必要となる
【OK】 この仕事をやりきるには、少なくとも10人は必要だ

 前回紹介した「できれば」は最大値、つまり努力目標でした。それに対して「少なくとも」は最小値、すなわち必達目標です。両方をセットで使うと、意味に幅を持たせることができます。

【OK】 この仕事をやりきるには、できれば15人欲しい。少なくとも10人は必要だ

 ちなみに、最低限度のことを「ボトムライン」と呼ぶ人を時々見かけます。「この仕事をやりきるには10人がボトムラインだ」といったように。

ところが、英語のbottom lineはかなり意味が違います。最終結果、すなわち結論という意味です。だから、損益計算書の最終損益をbottom lineと呼ぶわけです。

 したがって、「10人がボトムラインだ」と言えば、「結論として10人が必要」となってしまい、「少なくとも10人」とはかなりニュアンスが変わってきます。この言葉を使うときは、相手を見てからにしたほうが無難です。

最強のロジカルシンキング」は毎週木曜更新です。次回は10月20日の予定です。

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「ロジカル思考を使える人は仕事ができる」は正しい?(堀 公俊)

堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ファシリテーション・ベーシックス』(日本経済新聞出版社)、『問題解決フレームワーク大全』(日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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