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最強のロジカルシンキング

会議に遅れる“困ったちゃん”への賢い対処法は?(堀 公俊)

第6回 「何のため」 本懐を遂げてこそ意味があるこの連載の一覧

感動の物語は理にかなっているか?

 ディズニーランドにやってきた若い夫婦が2人でレストランを訪れました。夫婦それぞれの料理に加え、お子さまランチを注文したところ、「申し訳ありません。お子様ランチは9歳以下の方にしか提供できません」とキャスト(店員)に断られてしまいました。

 哀しい顔をする夫婦に、お子様ランチを頼んだ理由を尋ねたところ、意外な話が語られました。「今日は昨年亡くなった娘の誕生日だったのです。親子3人でお子さまランチを食べようという約束を果たしにきたのですが、とても残念です」というのです。

 それを聞いた店員は、夫婦を4人がけ席に移動させ、新たに子ども用の椅子を夫婦の間にセットしました。やがてそこにお子さまランチが届きました。店員は「どうぞ、ご家族でゆっくりとお楽しみください」といって笑顔でその場を去ったのでした。

 おそらく、多くの方が一度は聞いたことのある、ディズニーランドでの感動のエピソードです。何度聞いてもよい話ですね。

 店員の行為は明らかな規則違反です。ところが、ディズニーランドでは、とがめられるどころか賞賛され、多くの方に語り継がれる美談となっています。それは、この行為が「人々に感動を与える」というディズニーランドの目的にかなっているからです。

すべてのことには目的がある

 第2回で、ロジカルシンキングでは「すべてのことは訳がある」と考え、原因と結果(理由と結論、根拠と主張)を確かな筋で結ぶことが大切だ、という話をしました。これを「原因論」と呼びます。先ほどの逸話も前半は原因論で展開しています。

[OK] なぜ、このご夫婦はお子さまランチを頼むのか?

 それに対して、もう一つ異なる筋のつくり方があります。「すべてのことには目的がある」と考え、目的と手段(狙いと方策)の筋を通すやり方です。「目的論」と呼びます。目的に対して手段が理にかなっているかどうかを問うわけです。

[OK] 何のために、ディズニーランドではお客様にサービスを提供しているのか? お子さまランチをこの方々に提供することは、目的にかなっているだろうか?

 そこで、今回覚えたいフレーズが「何のために」(何を目指して、何を狙って、何が欲しくて)です。目的をあぶり出す言葉です。

[OK] 何のために、私はこの仕事をしているのか?

“困ったちゃん“への賢い対処法

 原因論と目的論は、どちらかが正しいわけではありません。うまく使い分けることが肝要です。

 たとえば、会議によく遅刻してくる“困ったちゃん”(問題児)がいたとしましょう。原因論で対処する方が大半だと思います。

[OK] どうして、彼はいつも遅刻するのだろうか?

 その結果、タイムマネジメントができていない、会議の数が多すぎる、会議の場所がオフィスから遠い、といった物理的な原因が見つかれば、有効な手立てが打てます。

 ところが、会議への参加意欲が低い、時間にルーズだ、人の迷惑を省みないといった心理的な話だとしたら、なかなか対処できません。他人の心や頭の中を他人が変えるのは難しいからです。

 そんなときは、目的論で考えてみましょう。遅刻には必ず何らかの目的があると考えて、当人の得たいものを探し出すのです。

[OK] 何が欲しくて、彼はいつも遅刻するのだろうか?

 たとえば、最近注目を浴びているアドラー心理学では、不適切な行動には(1)注目、(2)権力、(3)復讐(ふくしゅう)、(4)無力、の4つの狙いがあると考えます。これらを、会議以外の場で違った方法で満たしてあげれば、問題行動は減らせるかもしれません。根本的には、正しい目的に導くために勇気づけをするというのがアドラー心理学の考え方です。

手段の目的化に気をつけよう

 私たちの脳は非常によくできています。なるべく効率的に思考回路を動かすために、さまざまな仕組みがビルトインされています。

 たとえば、私は今パソコンに向かってコラムの原稿を書いています。目的は、言うまでもなく読者の皆さんを楽しませることです。そのためには、ユーモアのある話や退屈させないための事例など、最後まで読んでもらうための工夫が必要です。

 ところが、「読者を楽しませる」という目的は漠然としています。それに比べればユーモアのある話を考えるほうが、的が絞られています。すると、脳の省力化機能がスイッチオンになり、後者ばかり考えるようになります。いわゆる「手段の目的化」です。

 あるいは、締め切りが迫ってくると、既定の字数で原稿を埋めることに頭が働くようになります。ますます目的を見失い、どうでもよいことに気をとられてしまいます。

 そうならないよう、自分の思考や行動が本来の目的にかなっているか、を考えることが大切になります。

[NG] 来年こそは管理職にならないと……。
[OK] 管理職になることで、どんないいことがあるのか? それは私の何のためになるのか?

 その目的を達成するための最善の方法なのか?

本懐を遂げた赤穂浪士に合理性はあるか?

 もちろん、目的さえかなえば手段はどうでもよいわけではありません。

 たとえば、有能な政治家であれば、少しくらい政治資金をごまかすのは許されるのでしょうか。忠臣蔵で赤穂浪士が吉良上野介を集団で暗殺するのは、忠義を実現する手段として最適なのでしょうか。「アジアを解放する」という大義名分を掲げ、周辺諸国に侵略をしていった旧日本軍の行為は、理にかなっていると言えるのでしょうか。

 冒頭の事例にように、手段よりは目的を優先する話が美談になりがちです。そのため、筋の通らない行為を正当化するために、大義を掲げる人すらいます。

 それでも、うまくいけば「勝てば官軍」「結果オーライ」とばかり、手段の妥当性は問われなくなります。それは、ロジカルシンキングとは対極にあるものです。

 一つの目的に対して手段は多数にあります。目的の目的といったように、どのレベルで目的を設定するかで取りうる手段もまるで違ってきます。

 その中で、もっとも適切な手段を選んでこそ、誰が見てもそうと思える筋道ができあがります。「目的合理性」を考えないといけないのです。

 そのためにどうすればよいでしょうか。ページが尽きたので、続きは次回。

最強のロジカルシンキング」は毎週木曜更新です。次回は5月26日の予定です。

この連載の一覧

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会議に遅れる“困ったちゃん”への賢い対処法は?(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ファシリテーション・ベーシックス』(日本経済新聞出版社)、『問題解決フレームワーク大全』(日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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