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最強のロジカルシンキング

最近20年の歌謡曲で4倍使われるようになった言葉は?(堀 公俊)

第11回 「考えます」 文章の意味は最後で決まる

意味不明の質問はやめてくれ!

 想像してみてください。あなたは、きょう一日、仕事場を抜け出して日経ビジネススクールのロジカルシンキングの公開研修を受けています。「もう少しロジカルになってほしい」という上司の配慮によるものです。

 ようやく一日の研修が終わり、メールを処理するためにオフィスに戻ってきました。あなたの顔を発見した上司が、最も口にしそうな質問は何でしょうか。

 答えは簡単。「研修どうだった?」ではないかと思います。

 その後の受け応えも想像がつきます。「はあ、よかったっス」「そうか。よかったか」「ハイ」「それは、よかった」「ありがとうございました」 大方はこんな感じです。

 「どうだった?」と聞かれても、何を問われているのか分かりません。相手が何を知りたいのか、空気を読んで察するしかありません。たいていは適当にお茶を濁し、様子を探ろうとします。問うほうもよく考えずに質問しており、同じように対応します。結局、先ほどのような中身のない会話をして、何かが通じ合えたような気になるだけです。

 研修の内容を知りたいのなら「研修でどんなことをやった?」、感想なら「研修で何を感じた?」、成果なら「研修で何を学んだ?」と問うべきです。述語を適切に使い分けることで意味がハッキリしてきます。

語尾を省略せず、述語をつける

 先回、「日本語は主語を省略する言語だ」という話をしました。ところが、実際の会話では、主語どころか述語まで曖昧にすることが多くあります。それが先ほどの会話です。

 会議で発言する際も同じです。述語をハッキリとせずに意思表示をすることがよくあります。語尾がムニャムニャとなってしまう、日本語特有の婉曲な言い回しです。

[NG] それはどうなんでしょう。いや、別に反対しているわけでないのですが、違うやり方もあるんじゃないかと……。

 これではロジックどころか、何を言いたのかよく分かりません。述語をつけることでメッセージの内容が明らかになってきます。

[OK] 今のご提案に対しては、少々疑問を感じています。
[OK] もっとよいやり方があるのではないかと考えています。

 日本語では述語が最後にでてきます。「考えます。」「思います。」「感じます。」「信じています。」と、読点「。」を打つまで文章をつくらないと意味が確定しません。特に口頭でのコミュニケーションでは、「……」と語尾が消え入りがちになるので注意しましょう。

確からしさの程度を使い分ける

 自分の考えを組み立てるのに、多くの方が「思う」を述語として使います。それが悪いわけではありませんが、「思う」は意味の幅がとても広い曖昧な動詞です。

 気持ちを抱くのも「思う」なら、考察するのも「思う」です。感情的なものから理性的なものまで、すべて「思う」で表現できてしまいます。

 英語で言えば、feel(感じがする)、suppose(想定する)、guess(推量する)、wonder(心配する)、expect(期待する)、think(考える)、believe(信じる)、consider(熟慮する)……すべて「思う」に含まれてしまいます。

 以前述べたように、ロジカルシンキングでは結論や判断の確からしさが問われます。安易に「思う」で片づけず、どれくらい結論に自信があるか、確からし さが分かる動詞を使うほうが望ましいでしょう。

[NG] なんか、今の話って、しっくりこないんだよね……。
[OK] 話は分かるのですが、少なからず疑問を感じています。
[OK] もっとよいやり方があるのではないかと考えています。
[OK] 大きな効果を生まないのではないかと推察します。
[OK] 間違いなく大変な目に遭うことを確信しています。

「Think」と「思う」はイコールではない

 「私は○○と思います」と「I think ○○」は必ずしも同じ意味になるとは限りません。

 英語のthinkも幅広い意味を持つ言葉ですが、ビジネスシーンでは、「理性的に考えて」というニュアンスで使います。ぼんやりと「なんとなく、そんな感じがするんだけどなあ……」というのはthinkには当たりません。

 日本人がロジカルシンキングという言葉をつくったのも、この違いから来ています。わざわざロジカルと頭につけなくても、thinkingというのは「ロジカルに考えて」という意味があります。それを知らない日本人のために、ロジカルシンキングという言葉が必要だったのだと推察します。

 同様に、マインドとmindも同じではありません。日本では「心構え」という意味になり、どこにあるかを問えば、多くの方は胸のあたりを指差します。英語のheartに近いものです。

 対する英語のmindは「思考様式」です。感覚や感情と区別をして、理性を働かせる精神です。胸ではなく頭にあるものです。

 こんな風に、日本語の言葉は感情的なイメージを持ちやすく、ロジカルシンキングを実践するには、「考察する」「判断する」「確信する」といった理性的なニュアンスを持つ言葉を、意図的に使う必要があります。

思いは秘めつつ、考えを語る

 使い分けが面倒な方がいたら、せめて、「思う」ではなく「考える」をお勧めします。これが今回お勧めのワンフレーズです。

 「考える」は、理性的なニュアンスを持ちつつも、幅広く使える言葉です。「思う」を「考える」に変えるだけで、随分ロジカルに聞こえます。

[NG] ウチの会社は○○すべきだと思います。(主観的・感情的)
[OK] ウチの会社は○○すべきだと考えます。(客観的・理性的)

 ○○が長くなるようなら、文頭に「考える」を持ってくるようにします。こうすれば、さらにロジカルな感じがします。前回同様、翻訳調で文を組み立てるやり方です。

[OK] 私の考えを述べるとすれば……
[OK] これらの事実を元に考えると……

 誤解があってはいけないのですが、「思い」そのものを否定しているわけではありません。主観的・感情的な意味での思いも大切であり、思いのない考えは実現しません。単に、思いは思い、考えは考えで区別して扱いましょう、と言っているだけです。

 ちなみに、歌謡曲の歌詞の頻出単語を調べた研究によれば、この20年で急増した言葉がいくつかあるそうです(東部豊「流行した歌謡曲の歌詞における表現特性」)。自分、手、前、強い、空、明日、今、信じる、歩くなどなど。思い(想い)もその一つであり、出現率がなんと4倍にも増えています。やはり、日本人は “思い”という言葉に思いを寄せているようですね。

最強のロジカルシンキング」は毎週木曜更新です。次回は6月30日の予定です。

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最近20年の歌謡曲で4倍使われるようになった言葉は?(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ファシリテーション・ベーシックス』(日本経済新聞出版社)、『問題解決フレームワーク大全』(日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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