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最強のロジカルシンキング

会議に出没する“そもそもオジサン”の取り扱い方(堀 公俊)

第15回 「いずれにせよ」 今までの考えをまとめる

会議に出没する“そもそもオジサン”

 前回は、「そもそも」と本質に立ち戻ることの大切さについて話をしました。ただし、何でもかんでも「そもそも論」をふっかける“そもそもオジサン”にならないようにしてくださいね。

 一つ例を挙げましょう。ある部署からの提案を会議で審議しています。ていねいな説明があり、懸念点や代替案が検討され、概ね結論の方向性が見えてきたところで、さっきから黙っていたオジサンが満を持して発言します。

「そもそも、こんなことよりも、企業戦略そのものを見直すべきではないのか?」

 確かに、正論はそうかもしれません。しかしながら、それをやる時間もなければ準備もしていません。そこまで戻してしまうと、今までの議論が無意味になってしまいます。

 やんわりとそう説明しても、一本取ったつもりのオジサンは言うことを聞きません。正論だけにむげに却下することもできません。仕方なく、少しつきあってみたものの、「やっぱり、今ここでは難しいので、このくらいで……」となるのが、よくあるオチです。

 最後に議長が「いずれにせよ、提案は承認ということでよろしいですか?」と尋ねると、気が済んだのか、そもそもオジさんからも承諾の返事が。「だったら、そもそもなんて言うなよ!」と全員が心の中でツッコミを入れるのでした。

いったん現実に引き戻して考える

 たしかに、「そもそも」と目的、論点、前提に立ち戻ることは重要です。ところが、そればかりやっていると、肝心の方策、結論、議論が疎かになってしまいます。毎度それをやられたら、面倒でたまりません。

 それに、そもそも論は、少なからず思考や議論を後戻りさせます。本人(男性、中年、理系に多いのでオジサンとしました)は何か高尚なことを指摘したつもりでも、状況によっては何も生み出さないこともあります。タイミングを見極める必要があるのです。

 もし、そもそも論をやり過ぎて、あまりに本来考えるべきことから離れてしまったら、いったん元に戻しましょう。そのときに使うのが「いずれにせよ」(とにかく、何はともあれ)というフレーズです。

【OK】 そもそも、この議論は何のためにやるのでしょうか?

【OK】 いずれにせよ、この問題を解決する必要があるということですね。

 「そもそも」が俗世間から離れて天に昇っていく感じがするのに対して、「いずれにせよ」は現実の世界に降りていくイメージがします。それまでの内容を総括したり、最後のまとめで使うことが多くなります。

最後に「いずれにせよ」で総括する

 「いずれにせよ」が効果的なのは、考え方が複雑になりすぎたときです。

 ロジカルシンキングでは、いろんな視点から検討し、ヌケモレなく根拠を調べ、さまざまな選択肢を吟味することが大切です。ところが、そのまま人に伝えるとなると、筋道が複雑すぎて、理解しづらくなってきます。

 だからといって、最初からはしょってしまうと、「本当にこの人はいろいろ考えたのだろうか?」と疑いたくなります。なので、いったん多様な考え方を説明してから、最後に「いずれにせよ」とやるのが効果的です。

【NG】 いろいろありますが、とにかく私たちが取るべき方向としては……

【OK】 たしかにAという考え方がある。とはいえ、Bも考えられる。でなければ、Cもあるかもしれない。いずれにせよ、私たちが取るべき方向としては……

 会議でも同じです。各方面からさまざまな意見を一通り集めてから、いったんそれらを総括するのに使います。

【OK】 Aというご意見がありました。かたや、BやCという見解があり、Dという話も出てきました。何はともあれ、今すぐにやるべきは……

共通項を見つけ出す3つのパターン

 「いずれにせよ」で取り出すべきは、前段ででてきた内容の共通項です。それは3通りのパターンがあります。

 たとえば、社員旅行の行き先を議論していて、A(熱海)、B(温泉)、C(保養地)の3つの考え方があるとします。Cであれば、AとBを包含することができます。

【OK】 AやBはCに含まれるということで、いずれにせよ、Cであればいいのですね。

 同じく、懇親の方法を議論していて、A(お花見)、B(飲み会)、C(バーベキュー)の3つの考え方があるとします。いずれも、活動の中に「飲食」(X)が含まれており、その部分では重なり合っているといえます。

【OK】 AとBとCが重なり合っているのはXです。とにかく、Xが求められるのですね。

 また、職場活性化の方法に対して、A(飲み会)、B(朝礼)、C(SNS)の3つの考え方があるとします。3つとも、手段は違っていても、「コミュニケーションを促進する」(Y)という上位目的は同じです。

【OK】 AとBとCともに目的はYです。ともあれ、Yを進めていこうということですね。

 3つのパターンを覚えておくと、会議でのまとめにも重宝します。分かりにくい方は、図を描いて考えると共通項がつかみやすくなります。

切り捨てや誘導には使わない

 逆に言えば、これら3つのパターンに当てはまらないのに、「いずれにせよ」とまとめてしまうのは論理的とはいえません。

 よくあるのは、自分の都合のよいように、相手の考え方を解釈してしまうケースです。何を言っても、持論に持っていってしまいます。

【NG】 なんだかんだいって、とにかく、君はこの役割が気に入らないんだな。

 会議でもよくあります。少数意見や都合の悪い意見を切り捨て、強引に結論を誘導しようとするのに「いずれにせよ」を使う人がいます。

【NG】 いろいろご意見を賜りましたが、いずれにせよ、皆さんご賛成ということで、よろしいですね?

 こういう傲慢な態度に対しては、「いずれにせよ」の前のロジックに異議を唱えるようにしましょう。

【OK】 「いずれ」とは、何と何と何ですか? それらが、どうして今の総括になるのですか?

 「いずれにせよ」はいわば両刃の剣です。上手く使えば、考え方の筋道が明確になり、傲慢に使えば、それまでの努力を台無しにしてしまいます。使う人のセンスと姿勢が問われるフレーズの一つです。

最強のロジカルシンキング」は毎週木曜更新です。次回は7月28日の予定です。

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会議に出没する“そもそもオジサン”の取り扱い方(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ファシリテーション・ベーシックス』(日本経済新聞出版社)、『問題解決フレームワーク大全』(日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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