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最強のロジカルシンキング

「お金が貯まらない」をロジカルに解決するには?(堀 公俊)

第7回 「どうやって」 できない理由よりできることをこの連載の一覧

ロジカルになれない2つの原因

 このコラムをお読みの方は、少なからずロジカルシンキングが苦手な人だとお見受けします。でないと、「最強の~」「ワンフレーズ」なんて言葉に引かれて、安直に学ぶ方法を知ろうとしないからです(失礼!)。

 では、なぜ皆さんはできないのでしょうか。物事の訳を探ることが論理の出発点です。闇雲にやろうとするよりは、できない原因を掘り下げてみましょう。

 原因の一つは、おそらく生まれつきです。私の娘たちを見ていて強くそう思います。

 小さい頃、長女に「なぜ?」を尋ねると、「○○だから」と、教えもしないのに理由を述べようとしました。ところが、次女は「なんとなく」「そんな気がするから」と埒(らち)があきません。「じゃあ、どんな気がするの?」と尋ねても、「ギュイーンといった感じかな」と擬態語で表現します。まあ、美大に入ったので、特段困っていないようですが……。

 もう一つは、努力不足です。たとえ、本来苦手な人でも、日々鍛錬を積み重ねれば着実に上達します。そんな人を何人も知っています。要は、やり方ではなく、やる気の問題です。

 本気でやる気になれば、普段のビジネスで使う程度の論理思考は誰でも身につきます。このコラムに書かれていることを毎日実践してみてください。結果は保証しますから。

コントロールできないものは対処できない

 もちろん、これらは悪い冗談です。気を悪くした方がいたらゴメンナサイ。

 原因や理由を考えることは、ロジカルシンキングの基本です。だからといって、原因や理由を見つけ出すだけで、すべての問題が解決できるとは限りません。

 生まれつきと言われても、生まれ直すことも、脳を入れ替えすることもできません。両親を責めても、「それは、おばあちゃんに言ってくれ!」と責任転嫁されるだけです。

 では、努力なら対処できるかといえば、そうとも限りません。努力できるというのも才能の一種だからです。過去のしつけや家庭環境といった本人以外の要因も大きく左右します。

 それに、「頑張ろう」「やる気を出そう」といってやる気が出るようなら苦労しません。うつ病の患者に「クヨクヨするな」と言うようなもの。それができないから悩みなのです。

 ましてや、「努力不足だ」「やる気がない」と他人から言われて、やる気が出るようになるでしょうか。余計やる気が下がって問題を悪化させるだけです。

 そんなときこそ目的論です。「なぜ?」で原因を探るのではなく、「どうやって?」(どうやったら、何をすれば)目的を達成するか、手段や方策を考える。これはこれで、理にかなった思考法です。

[OK] どうやったら、ロジカルシンキングが身につくか?
[OK] 何が、論理思考を身につけるためにできるか?

アイデアは限定されたほうが考えやすい

 皆さんの回りで、できない理由ばかり挙げる人はいませんか。そんなときこそ、「どうやって?」を使って、できることを探し出すように促しましょう。

[NG] できないのは、○○が△△だからなんです。
[OK] どうやったら、できると思いますか?(何だったら、できますか?)

 アイデアが思い浮かばないようなら、考える領域を絞ることです。漠然と考えるよりも、適度に制限があったほうがアイデアは考えやすくなります。

 ロジカルシンキング習得の話で言えば、話せるようになりたいのか、書けるようになりたいのか……。前者だとしたら、いつ、どんな場面での話なのか。そうやって対象を絞り込んでいくと方策が考えやすくなります。

[NG] どうやったら、ロジカルになれるんだろうか……。
[OK] どうやったら、プレゼンのときにロジカルな話ができるようになるのか?

 アイデアに行き詰まるようなら、そもそも何を目指しているのか、大もとの目的に戻ることです。そうすることで、今まで考えつかなかったアイデアが生まれるかもしれません。

[OK] 何のために、プレゼンのときにロジカルな話ができるようになりたいのか?  それは、説得力を増したいからだ。だったら、何をすれば説得力が増すようにできるのか?

時には一歩前に進めることを優先する

 そうやって見つけ出した方策を「完全な解決策ではない」「根本的な解決にならない」と言ってつぶしていくデストロイヤー(破壊者)がいます。ところが、完璧を求めて何もしないよりも、小さくてもできることをするほうが得な場合もあります。

[NG] そんなことをやっても根本的な解決にならないだろう。
[OK] それはそうですが、何から手をつければ解決に近づきますか?

 それに、完全な解決策は実行が難しいのが常です。結局、手がつけられず、棚ざらしになることもよくあります。それよりは、目的に一歩近づくことを狙うのも、あながち悪くない手です。

[NG] 根本的には○○するしか手はない。
[OK] それは分かりますが、まずはどこから始めましょうか?

 そのヒントは過去にやったことにあります。うまくいったことは繰り返せばよく、そうでなかったことはやり方を変えればうまくいくかもしれません。過去の事例はアイデアを生み出す資源となるのです。

[OK] どんなことが、過去にうまくいきましたか?
[OK] うまくいかなかったことを、どう変えればよいでしょうか?

原因論と目的論を使い分けよう

 実際には、原因論と目的論を組み合わせて、合理的に物事を考えて行きます。

 原因論のよいところは、因果関係がはっきりしているため、2度と同じ過ちを繰り返しにくいところにあります。一般的には、ミスが減らない、売上が増えない、肩こりが治らないといった「技術的問題」(やり方の問題)には原因論が向いています。

 原因は必ず結果の前にあります。原因論とは過去を振り返ることに他なりません。どちらかといえば後ろ向き(ネガティブ)な思考になりがちです。

 また、人がからむ問題においては、原因追究(何がマズイのか?)が責任追及(誰がマズイのか?)になりがちです。原因が見つかったとしても、責められた当人はやる気になりません。そこを、「やらねばならぬ」「やるべきだ」と押しつけてもよい結果を生みません。

 一方、目的は必ず手段の先にあります。目的論は未来を切り開く考え方であり、思考が前向き(ポジティブ)になりやすいです。完全な解決策を求めないので、効率性(費用対効果)よりも効果性(やる気)が重要視されます。「何ならできる」「何に取り組んでみたい」を考えることになり、明るい問題解決となります。ただし、下手をすると対症療法になる恐れがあります。

 ビジョンが浸透しない、上司と仲が悪い、お金が貯まらないといった、「適応的問題」(考え方の問題)には目的論が向くと言われています。できれば両方を身につけ、どんな問題にでも対処できるようになりたいものです。

最強のロジカルシンキング」は毎週木曜更新です。次回は6月2日の予定です。

この連載の一覧

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「お金が貯まらない」をロジカルに解決するには?(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ファシリテーション・ベーシックス』(日本経済新聞出版社)、『問題解決フレームワーク大全』(日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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