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最強のロジカルシンキング

会議の資料づくりに困ったら、新聞を読んでみる?(堀 公俊)

第12回 「結論から言うと」 相手が知りたいことから伝える

刑事コロンボvs名探偵コナン

 ミステリーの世界に「倒叙モノ」と呼ばれるジャンルがあります。かつて一世を風靡(ふうび)したテレビドラマである「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」がそれにあたります(古い!)。

 名探偵コナンのような一般的なミステリーでは、不可解な出来事が次々と起こり、どんどん謎が深まっていきます。それを、優れた刑事や探偵が1本の糸に編み上げ、意外な真犯人をつきとめて事件を解決します。終始、捜査する側の視点で物語が進みます。

 対する倒叙モノは、犯人側の視点で描かれています。物語は、ある人物が事件を起こすところから始まり、冒頭で犯人が明らかになります。それを一歩一歩追いつめていく刑事と逃がれようとする犯人との手に汗握る攻防戦こそが倒叙モノの醍醐味です。

 ミステリーも問題解決の一種だとしたら、根拠→結論の順で展開するのが一般的なミステリーです。そのため、謎解きパズルのピースとなる証拠や証言は、結末にならないと一つに組み合わさりません。最後になって「なるほど、そうだったのか!」となります。

 それに対して、結論→根拠の順に描くのが倒叙モノです。結論が分かっているので、安心してストーリーを楽しむことができます。途中の出来事もどの部分に当てはまるのか分かり、一つずつ組み上げて行く楽しさがあります。はたして皆さんはどちらがお好きでしょうか。

思考と理解ではプロセスが逆になる

 ロジカルシンキングでも2通りのやり方があります。おそらく、物事を考えるときは前者のやり方を使う人が多いと思います。たくさんの根拠を集めて、そこから最も合理的な結論を導いていくアプローチです。

 ところが、そうやって得た結論を人に伝えるときは、順番をひっくり返さないと、聞いているほうはたまったものではありません。一体何の話をしているのか、何が言いたいかが最後まで聞かないとわからず、まさにミステリーとなるからです。

 つまり、自分が考えるプロセスと、人の話を理解するプロセスはまるで逆。相手の立場に立てば、先に結論や全体像を明らかにしたほうが、伝わりやすいのです。そこで、活用したいフレーズは「結論から言うと」です。

[NG] 先日、○○という話があり、少し調べてみると△△らしく、さらに……。
[OK] 結論から言えば☆☆です。なぜ、そう考えたかと言えば……。

 頭に持ってくるのは、結論ばかりと限りません。要は、最初に伝えておいたほうがよいものや、最も相手が興味のあることを冒頭に持ってくるのです。

[OK] 着目すべきは○○です。その点で言えば……。(ポイント)
[OK] 議論すべきは「○○ができるかどうか?」です。当社では……。(論点)
[OK] 今回の収穫は○○です。そのために我々は……。(成果)

習得したい2つのコミュニケーション技法

 この考えを応用したコミュニケーション技法があります。結論を先に述べてから、理由、事例と説明を加えて行くやり方で、本稿で紹介したフレーズの組み合わせでできています。

①結論(Point)   結論から言えば、セールスの人員を倍増すべきです。
②理由(Reason)  なぜなら、今回の新製品の販売に際して……
③事例(Example)  たとえば、ライバルでは100名もの陣容で……
④結論(Point)   だから、セールスの人員を倍増すべきなんです。

 同じくインストラクション(教示)技法の中にも同様なものがあります。

 上司が部下に依頼や指示をしたり、研修講師が演習のやり方を説明したりするときに使います。考え方は先ほどと同じで、依頼内容を先に伝えてから、理由や方法を明らかにしていきます。

①何をするか?(What)   お願いしたいのは、営業所での販売の応援なんだ。
②なぜするか?(Why)   その理由は、今度の新製品を販売する人手が足らず……
③どうやってするか?(How)具体的には、来週からさいたま支店の所沢営業に……

 どちらも、考えながら話をしているようでは間に合いません。口癖になるまで繰り返し練習をしましょう。

新聞に学ぶ分かりやすい資料づくりのコツ

 読者諸氏の中には、「毎日、会議の資料づくりで大変」という方がいらっしゃるかもしれません。どんなツッコミにも耐えうる資料をつくろうと思うと、ボリュームがどんどん増えてしまいます。読むほうも大仕事です。

 そのため、「A3用紙1枚にまとめる」「1枚ベスト、2枚ベター、3枚マックス」といった制限を設けている会社があります。賢い方法なのですが、既存の資料を会議資料に変換し直す手間がかかるのが玉に傷。情報を圧縮するのに四苦八苦する羽目になります。

 そんな面倒なことをするくらいなら、既存の資料をそのまま流用してしまいましょう。「サマリー(要約)」とタイトルをつけた1ページを頭につけて。そこに、提案書なら「提案の骨子」、起案書なら「議論してほしいポイント」、報告書なら「今回の成果」を書いておくのです。こうしておけば、結論が先に頭に入り、残りの資料は必要なところだけを読めば済みます。

 文書をつくるときも同じです。手近に新聞があったらご確認ください。一つの記事で、同じ内容が、少なくとも3回書かれているはずです。見出し、リード(要約)、本文といったように。

 忙しい方のために、一目で結論が分かると同時に、興味に応じたところまで読み進められるようになっているのです。文書づくりでも同様のことを心がけると伝達の効率が格段にアップします。

いつもストレートがよいとは限らない

 「結論から言えば」「ポイントを先に言うと」「成果を先に挙げるとしたら」というフレーズを使う際に注意してほしいことが1つあります。いきなりストレートに結論をぶつけると、相手が面くらう恐れがあることです。たとえば、医者にこう言われたらどう思いますか。

[NG] 結論から言えば、あなたはもう助かりません。

 直球すぎて身も蓋もありませんよね。だからといって、結論を後回しにして検査結果をくどくど説明されると「先生、いったい、私はどうなんですか!」となります。そんなときは、結論を先に述べる際に、少し表現を和らげるようにしましょう。

[OK] 結論から言えば、状況は芳しくありません(難しい状況にあります)

 会議でも同じです。中でも、相手から反論される意見を述べる際には、対抗意識を高めないようにするのが賢明です。同じ結論を述べながらも、言いまわしを少し工夫するだけで、随分印象が変わります。

[NG] 結論を先に言えば、あなたの意見に反対です。
[OK] 結論を先に言えば、私はあなたとは違う意見を持っています。
[NG] 結論としては、この事業は失敗です。
[OK] 結論としては、この事業はまだ成功に至っていないと言わざるをえません。

最強のロジカルシンキング」は毎週木曜更新です。次回は7月7日の予定です。

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会議の資料づくりに困ったら、新聞を読んでみる?(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ファシリテーション・ベーシックス』(日本経済新聞出版社)、『問題解決フレームワーク大全』(日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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