出世ナビ 記事セレクト

最強のロジカルシンキング

日本人が好きな「3」をロジカル思考に役立てるには?(堀 公俊)

第13回 「一つ目は」 覚悟を決めて指を立てる

切っても切れない縁がある

 今回はクイズから始めます。NTT、JAL、NHK、JCB、NEC、IBM、UCC、HIS、YKK、FBI。さて、これら10の組織に共通するものは何でしょうか?

 いずれも誰もが知っている著名な組織ばかり。日本を代表する企業もあれば米国の政府組織もあります。業種や活動領域もバラバラですが、1つだけ明確な共通点があります。何だか分かりますか。

 答えは、小学生でも(のほうが?)分かりますよね。見ての通り、アルファベット3文字で表されていることです(真面目に検討した方、ゴメンナサイ)。

 3は不思議な魅力を持った数字です。日本全国を旅して歩けば、日本三名園、日本三大祭、日本三名瀑、日本三大温泉、日本三大美林、日本三大松原、日本三名橋、日本三大夜景、日本三霊山、日本三大秘境といったものに遭遇します。

 ことわざを見ても、「三度目の正直」「石の上にも三年」「仏の顔も三度まで」「早起きは三文の得」など、3を使ったものが山ほどあります。そもそも、日本という国は、天から「三種の神器」を授けられたところから始まっており、3とは切っても切れない縁があります。

 なぜ、これほどまで3が好まれるかといえば、ひとえに覚えやすいからです。加えて、3本の線分で図形が安定するように、落ち着き感があるからだと思います。ある程度に幅を持ちながらも、扱いやすくバランスもよい。それこそが、3が持つ不思議な魅力ではないでしょうか。

「分ける」と分かりやすくなる

 複雑なものを分けて考えるというのは、人間誰しもが持っている素晴らしい能力です

 たとえば、ビジネスをしていると、やるべきかやらざるべきか判断に迷うことがでてきます。そんなときは、メリットとデメリットといったように、分けて考えると決断しやすくなります。

 あるいは、近江商人に伝わる「三方よし」という教えがあります。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の3つです。今風に言えば、自社、顧客、社会の3つの視点でビジネスを考えようというものです。分けて考えれば検討しやすくなります。

 物事を「分ける」と「分かる」ようになります。だから、「分ける」と「分かる」とは同じ漢字を使うわけです。

 だからといって、10個や20個にも分けてしまうと処理しきれません。そこでバランスのよい数字である3の登場となります。物事を3つに分けて考えると格段に分かりやすくなります。ロジカルシンキングでぜひ覚えてほしいテクニックです。

ヌケモレなく根拠を3つ挙げる

 この連載の第2回で「根拠の幅を出す」大切さについて述べました。「違った根拠を複数出すと説得力が増す」という話です。3つも挙げれば必要かつ十分な根拠となります

【OK】 ウチの会社は○○すべきです。理由の一つ目は○○だからです。2つ目に△△があって、3つ目としては……。

 常にピッタリ3つにしなくても、3つ前後、すなわち2~4つなら問題ありません。

ただし、3つ前後なら何でもよいわけではありません。そう言い切るのに十分な根拠を、モレなくダブリなく挙げてこそ意味があります。「そう言い切るために、何と何と何が必要か?」を考えて、幅広く出すようにしましょう。

 すぐに思いつかないときは、漢字の熟語に手掛かりがあります。異なる切り口や視点をセットにしたものが熟語の中にたくさんあるのです。

 2字熟語:損得、長短、善悪、新旧、利害、公私、自他、入出、遠近、内外、主従、難易……
 3字熟語:衣食住、心技体、人物金、知情意、守破離、報連相、正反合、走攻守、大中小……
 4字熟語:起承転結、老若男女、古今東西、加減乗除、喜怒哀楽、冠婚葬祭、生老病死……

 こういった熟語を頭に置きながら考えると、バランスよく根拠を出すことができます

 【OK】 なぜなら、1つ目にヒトの面で言えば○○です。2つ目にモノの観点で見ると……。

不動産屋の販売テクニックから学ぶ

 3つに分けるもう1つの使い方が、物事を判断するときです。

選択肢を広げてから最善のものを選ぶことで決定の質はアップします。とはいえ、あまり広げ過ぎると判断に迷います。「やっぱり、あっちのほうが……」と、未練が残る恐れもあります。

 やはり、広げるなら3つくらいが適当です。実際、不動産屋がお客に物件を紹介するときは、3つ、4つを1セットにして見せるそうです。

【NG】 お客様には○○がおススメです。

【OK】 お客様にふさわしいのは、1つは○○です。もう1つは△△があります。さらに□□なんかもいいかもしれません。この3つの中で言えば……。

 選ぶ基準を出すときも、3つくらいあると多面的に考えることができます。なるべく違った観点から判断の物差しを出すようにしましょう。

【NG】 今は新規性を最優先すべきだ!

【OK】 判断に際しては、1つは新規性を考えなければいけない。2つ目に効果性の視点がある。3つ目に実現性も忘れてはいけない。それらを総合的に考えると……。

 中には3つも出せるか自信のない人がいるかもしれません。安心してください。「1つは」と話し始めれば、最低もう1つは出さなくてはいけなくなります。そうなれば、あと1つくらいは思いつきます。まずは思い切って「1つは」と言ってみることが、3つ出すためのコツです。

スマートな指の出し方を身につける

 できれば、「3つあります」と潔く最初に宣言するほうが、聞いているほうは分かりやすくなります。前回の「結論から言えば」の応用です。

【OK】 ポイントは3つあります。一つ目には……。

 あわせて指を立てて数字を示すとアピール力が強くなります。「無理でも3つ出さないといけない」という覚悟も決まります。

 日本では人差し指、中指、薬指の3本で表すのが一般的です。「1つ目に」のところで、指を折っていくのか、いったん握ってから出していくのか、あるいはもう片方の指で押さえていくのか、数え方にもいろいろあります。

 ちょっとカッコをつけたかったら、欧米人がよくやる親指、人差し指、中指を立てるやり方をお勧めします。ただし、一部の国では8を意味するらしく、要注意です。

あるいは、OKサインのように親指と人差し指を折って、残りの中指、薬指・小指で3を表す方法もあります。このときは、手のひらを自分に向けておかないと、0と勘違いされる恐れがあります。

 スマートに指を出せば、考え方もスマートな印象を受けます。とっさのときにマゴマゴしないよう、鏡の前で練習に励んでみてはいかがでしょうか。

最強のロジカルシンキング」は毎週木曜更新です。次回は7月14日の予定です。

この連載の一覧

◇   ◇   ◇

日本人が好きな「3」をロジカル思考に役立てるには?(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ファシリテーション・ベーシックス』(日本経済新聞出版社)、『問題解決フレームワーク大全』(日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

  • 1日でわかる・戦略的思考力強化の進め方

    問題を発見・分析・解決するスキル続きを読む

  • よくわかる管理会計の基礎と実践

    会計の基礎知識を考える力にする続きを読む

  • 財務諸表分析と企業価値評価の基本

    企業価値向上の好循環を生みだす続きを読む

バックナンバー

NIKKEI STYLE

最新記事一覧

おすすめの講座

  • 会社役員・経営幹部向けベーシックコース 2017夏
  • SUMMER SCHOOL 2017
  • 上司力養成講座特集
  • ビジネス基礎力特集
  • ビジネススキル再点検
  • 日経緊急解説Live!
  • 日本版エグゼクティブ研究会
  • お気に入り登録&マイページ便利な使い方