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いま求められる6つの上司力

コミュニケーション力(1)危機的な上司と部下のコミュニケーション、解決法は?(西村克己)

Yes・But法でコミュニケーションを活性化する

 コミュニケーションできない社員が増えています。上司と部下のコミュニケーションは危機的状況に向かっています。相手の意見を聞かないで自分の意見ばかり主張する人、理由や状況を説明しないで結論だけを短絡的に話す人……。メールで一方的に連絡する業務スタイルが広がっていることも一因ですが、上司と部下のコミュニケーション不足は、確実に組織の活力をそいでいます。

1.コミュニケーションできない人間関係の増加

 仕事を円滑に進め、組織やチームのパフォーマンスを高めるためには、人間関係も重要です。良好な人間関係を構築して維持するためには、コミュニケーションが不可欠です。あなたの会社や職場では、コミュニケーションが円滑にできているでしょうか?

 コミュニケーションは、双方向の情報交換です。双方向、つまり2Way(ツー・ウェイ)に情報交換ができていなければ、コミュニケーションは成り立ちません。また、コミュニケーションは会話のキャッチボールです。投げられたボールをキャッチして、相手のストライクゾーンに投げ返せば、正常なコミュニケーションが継続します。

 コミュニケーションとプレゼンテーションは根本的にルールが異なります。プレゼンテーションは一方向、つまり1Way(ワン・ウェイ)の情報提供です。一度に多くの人に情報伝達する場合はプレゼンテーションです。

 しかし、1対1での会話の場合は、コミュニケーションでなければ、信頼関係が構築できません。一方的な話し方では、会話が成立しません。

 上司の一方的な話し方が、部下のやる気をそぎ落とします。たとえば、ある業務指示をしたとします。一方的にやり方を指示するのではなく、「この目的を達成するためには、どういう方法が最善だと思いますか?」といった問いかけをすることも一案です。また、「なぜこの仕事が必要なのか?」「なぜあなたを担当にするのか?」という理由は、部下にきちんと伝えることが必要です。

2.コミュニケーションを改善するYes・But法

【図解1】 【図解1】

 部下が相談に来たら、親身になって相談に乗っているでしょうか? 部下の話を十分に聞いているでしょうか? もしかしたら、部下の話を途中で遮って、「こうすれば解決するだろう」と、上司としての意見を押しつけていないでしょうか?

 部下とのコミュニケーションだけでなく、自分の上司や同僚との関係においても、きちんと相手の話に耳を傾けているでしょうか? いきなり意見を否定したり、話を遮ったりしていないでしょうか。人の話を聞く姿勢をみせることは、コミュニケーションの第一歩です。

 人は、自分の話をていねいに聞いてくれる人に好意を持つのです。人の話を引き出す便利な手法があります。それが、「Yes・But法」です。「なるほど、あなたの言いたいことは~ですね」というリアクションを話し手に伝えるのです。(【図解1】

 「Yes」を意志表示する方法は極めて簡単です。「①相手の言葉の一部を繰り返す」「②相手の気持ちを言葉にして返す」「③上記の①と②を適度に組み合わせる」の3つです。

 相手の言葉の一部を繰り返すだけで会話が続きます(①)。同時に、話し手の好感度が上がります。たとえば、「先日の金曜に大阪に出張したんですよ」と相手が言ったとします。そこで「金曜日ですか」「大阪ですか」「大阪出張ですか」と、相手の言葉の一部をおうむ返しに話すのです。相手にとっては、否定要素がないので、無意識に「そうなんですよ」「よくわたしを理解してくれる人だな」と思うのです。

 ある程度会話が続くと、相手の気持ちを言葉にして返してあげます(②)。楽しそうに話していると感じたら「楽しかったのですか?」と、相手の気持ちを言葉にして返します。さらに「いいことあったのですか?」と質問形式にすると、ますます相手はいい気分になって話が盛り上がります。あとは、①と②を適度に繰り返します。

 Yesを適度に繰り返すと、話し手との信頼感が構築できます。話し手も自分を認めてくれる人だと安心感が得られます。信頼感が構築できたら、聞き手は自分の意見を思いきって言うことができます。「But」として、話し手の反対意見を言ったとしても、受け入れようと無意識に努力するのです。

 「Yes・But法」は、頭ごなしに人の提案を否定しないという留意点をわかりやすくした手法です。とりあえず自分の意見を受けとめてくれたという安心感を話し手に与えます。そして自分が認められたことで、相手も認めようとする気持ちになるのです。

3.クレーム対応のオールYes法

 大人の対応は、「Yes・Yes・But法」が実用的です。何度かYesを繰り返してから自分の意見を言うと、話し手の好感度が上がります。上司から部下への関係、部下から上司への関係のどちらでも使えます。

 部下が上司である自分に報告に来たときは、部下の報告を十分聞いてから、上司としての自分の意見を言います。上司が頭ごなしに、「その考え方はおかしい」と言った瞬間に、部下は本音を話さなくなるのです。

 上司が部下である自分に話しかけて来たときは、上司の言葉の一部をおうむ返しにします。また上司が怒っているときは、「お怒りもごもっともです」と、上司の気持ちを言葉にして返します。上司の気分がよくなったら、「But」として、自分の意見を発言します。

 クレーム対応では、「オールYes法」です。相手(多くの場合顧客、時には上司)の話を、オールYesで「①相手の言葉の一部を繰り返す」「②相手の気持ちを言葉にして返す」「③上記の①と②を適度に組み合わせる」に徹するのです。

 怒っている相手が落ち着いたら、はじめて問題発生の原因説明や、解決策を提示します。怒っている間に原因説明をすると、「言い訳するな」「屁理屈を言うな」と、相手の気持ちを逆なでします。落ち着くまでは、オールYes法がお勧めです。

4.「I'm OK! You're OK!」をめざせ

【図解2】 【図解2】

 「OK牧場」をご存じでしょうか? タレントのガッツ石松さんが、OKを言う代わりに、「OK牧場」と言っていました。OK牧場は本当にあるのです。

 人間における「信頼関係」の価値観は、4タイプに分けられます。評価軸としては、対人関係である「自分」と「相手」、許容できるか否かの「OK」と「not OK」です。すると、【図解2】のような分類ができます。

 1つめは、「I'm OK! You're OK!」(私も正しい、あなたも正しい)で、人間関係として最上級の価値観です。理想的な上司は、自分を信頼し、かつ部下を信頼できる人間関係を構築する人です。

 2つめは、「I'm OK! You're not OK!」(私は正しい、あなたは間違い)です。自己中心的な人の価値観です。

 3つめは、「I'm not OK! You're OK!」(私は間違い、あなたは正しい)です。謙虚すぎるか、自信喪失の人です。自信がないので、意見がころころ変わるとか、部下の統率力が危うい人です。

 4つめは、「I'm not OK! You're not OK!」(私も間違い、あなたも間違い)です。人間不信の人です。コミュニケーション能力が疑われる人です。

 理想的な上司は、「I'm OK! You're OK!」です。お互いを尊重し、部下を信頼して仕事を任せられる上司を目指したいものです。懐疑心を持っていては、良好なコミュニケーションによる信頼関係は構築できません。

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