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いま求められる6つの上司力

プロジェクトマネジメント力(2)プロジェクトが失敗する理由と 成功する企画書の作り方(西村克己)

 現状打破の起爆剤として、プロジェクトによる取り組みが増えています。上司力の1つに、プロジェクトを成功させる能力が不可欠になっています。プロジェクトは目的を達成するために結成された臨時組織による活動です。新しい構成員が集まり、今まで経験したことがない新しいテーマに取り組みます。現状維持と定型化された業務を前提とした階層組織の取り組みとは全く異なるマネジメント方式が必要です。

1.プロジェクトが失敗する4つのパターン

 プロジェクトが失敗する主な原因は、上から下への命令系統が確立した階層組織のマネジメント方式を使っているからです。プロジェクトは臨時組織による活動ですから、構成員もルールもすべてがゼロスタートです。臨時組織に適合したマネジメント方式であるプロジェクトマネジメントの適用が不可欠です。

プロジェクトマネジメント力(2)プロジェクトが失敗する理由と 成功する企画書の作り方(西村克己)

 たとえば、階層組織では、業務手順(作業計画)があらかじめ決められています。コンピューターに登録されている業務手続きもあります。しかし、プロジェクトは業務手順(作業計画)がないゼロの状態からスタートします。また、誰がプロジェクトの意思決定者なのかも決まっていません。したがって、さまざまな決めごとが不可欠になります。

 プロジェクトを階層組織のマネジメント方式を使うと、どのような悲劇が起きるのでしょうか。

 1つは、空中分解です。プロジェクトを進めているうちに、先が見えなくなる五里霧中状態になります。リーダーがやる気でも、メンバーたちの熱意が冷めて、途中で終息・解散になります。

 2つめは、オーナーの不在です。継続を前提とした階層組織では、役職によって誰が意思決定者かは決まっています。しかしプロジェクトは意思決定者であるプロジェクトオーナーが決まっていません。オーナーが不在だったり、オーナーが意思決定を放棄したりすると、ステークホルダー(利害関係者)に振り回されます。

 たとえば、豊洲市場の移転プロジェクトでは、歴代の都知事が明確な意思決定をしていないので混迷しているのです。その結果、議論すれども結論が出ないか、いつの間にか決定がなされていて、責任をとる人がいなくなるのです。小池百合子知事は、意思決定の正常化を回復しようとしているのです。

 3つめは、見切り発車です。「急ぐから早く動き出せ」と、役職が高い人はせき立てます。「考えるヒマがあったら走り出せ」ととどめを刺します。しかしそれは、目的があいまいなまま、「とりあえず何か結果を出せ」という無責任な人たちなのです。その結果、計画不足、予算不足、人員不足で、プロジェクトは行き先を見定めることのないまま、猪突猛進モードに追い込まれます。的外れの努力で、計画変更の嵐になります。

 4つめは、丸投げです。何をやるかが決まっていないのに、予算だけが決まるのです。たとえば、「営業が5億円で、システム開発を受注しました!」と営業部長に報告します。「5億円の中身は?」と聞かれると、担当営業は「何も決まっていません。顧客ニーズに応えるだけです」という要件定義が不明な一括受注。ほぼ例外なく、顧客のたび重なる過剰な品質要求により、開発コストの超過で大赤字のプロジェクトになります。

 東京オリンピックの競技会場の予算は、どこまで具体的にコストを積算しているのでしょうか。工事予算が安易に変更されるのは、中身があいまいなまま、百億円単位で見積もっているのかもしれません。コスト超過にならないように、かなり高めの予算を主張しているようにも見えます。

2.プロジェクトに不可欠な企画書

 プロジェクトはゼロスタートの取り組みですから、企画書(または計画書)が必要です。プロジェクトを始めるときは、計画書と同じ意味で、企画書という表現を使います。

 企画書がない状態でプロジェクトを始めると、前述のプロジェクトが失敗するパターンに陥ります。また、作業計画も作成しなければ、メンバーが何をしていいのかわからず路頭に迷い、時間をロスしてしまいます。

 プロジェクト企画書には、どのような項目を明記すべきなのでしょうか。目的はいうまでもありません。たとえば、対象範囲は不可欠です。対象範囲が明記されていないと、想定していた範囲よりどんどん広がって、やることが多すぎて収拾がつかなくなります。

 また、作業計画が文書化されて伝わっていないと、メンバーは働かなくなります。「リーダーから具体的な指示がないので、何もやる必要がありません」とメンバーは考えるのです。

 企画書は大きく2つのブロックに分けられます。1つめが、企画書の前半である「要件定義」です。要件定義は、「このプロジェクトで何を実現するのか?」を具体的に明らかにするところです。

 2つめは、企画書の後半である「実行計画」です。要件定義を実行するための作業計画、スケジュール、推進体制などを明らかにします。

3.プロジェクトの要件定義

 企画書の前半部分であるプロジェクトの要件定義について考えてみましょう。目次のヒナ型は次の通りです

プロジェクトマネジメント力(2)プロジェクトが失敗する理由と 成功する企画書の作り方(西村克己)

 「1.背景」「2.目的(目的、達成目標、対象範囲)」を合わせて、テーマ設定と呼んでいます。目的が途中で変更しないように、目的の明確化は極めて重要です。

 テーマ設定に続いて、「3.前提条件と制約条件(現状分析のデータを加えることもある)」「4.コンセプト」を明確化します。コンセプトとは、目的を達成するための基本方針です。

 次に「5.企画提案の概要(全体像、達成後のあるべき姿)」「6.企画提案の詳細(企画提案の具体化、達成後の詳細)」を記述します。します。現状の問題点を明らかにすることで、改善ニーズがより具体的に伝わります。具体的に「このプロジェクトで何を実現するのか」を、できるだけ図解を使いながら表現します。

 「7.投資対効果」も早い段階で検証が必要です。プロジェクトの投資対効果がマイナスであれば、一般的にはプロジェクト自体を中止すべきでしょう。

4.プロジェクトの実行計画

 プロジェクトで何を実現するのか、プロジェクトの要件定義が明確化になったら、プロジェクトの実行計画を作成します。

プロジェクトマネジメント力(2)プロジェクトが失敗する理由と 成功する企画書の作り方(西村克己)

 まず「8.作業計画とスケジュール」の作成です。プロジェクトの作業計画は、WBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー)という手法を使います。ロジックツリーを用いて、大小関係の階層に分けて作成します。

 作業のレベル1(大分類)は、時系列で大きく捉えます。たとえば、「リサーチ-方針決定-基本設計―詳細設計-試作品製作」という時系列で並べます。作業のレベル2(中分類)とレベル3(小分類)は、具体的な作業項目に分解します。

 スケジュールは、WBSの右側に矢印で右方向に引いていきます。矢印でスケジュールを作成する人も多いのではないでしょうか。作業計画をレベル1~3まで詳細化すると、WBSになります。

 「9.推進体制(組織図、構成員)」も実行計画に必要です。プロジェクトでゼロスタートですから、プロジェクト組織図が不可欠なのです。

 追加項目としては、「10.リスクマネジメント」があるといいでしょう。リスクを先読みして低減できれば、先手必勝になります。

 プロジェクト企画書を見た人が、「なるほど、うまくいきそうだな!」と感じられればいい企画書です。リーダーが細かい指示をしなくても、メンバーもついてくるでしょう。

 企画書は、プロジェクト構成員が、ステークホルダーから身を守ることにも役立ちます。ステークホルダーはヤジ馬のごとく、いちいち口を挟んできます。しかしプロジェクトの一貫性を維持し、当初の目的を達成するために、企画書は「水戸黄門の印籠」のごとく、「謀反を起こすでない」という押さえに使えるのです。

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