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いま求められる6つの上司力

リーダーシップ力(2)部下たちのバラバラな価値観を「大きな成果」に変える方法(西村克己)

組織の価値観をスローガンで共有化する

 グローバル化やダイバーシティが進み、多様な価値観をもつ部下たちに戸惑っている方も多いのではないでしょうか。外国人の部下が配属されることも珍しくない時代。価値観がバラバラで収拾がつかず、思うように動いてくれない部下たちにストレスがたまりがち、なんてことも。しかし、部下は部下で、上司の価値観が理解できずにストレスをためています。このような事態は、どう克服すればいいのでしょうか?

1.人はもともと多様な価値観を持つという前提で

 部下も自分と同じ価値観であるべきだという考えは間違っています。そこには2つの間違いがあります。1つめは、そもそも自分と同じ価値観の人は、数パーセント程度と極めて少ないこと。2つめは、自分と価値観が違うからと、部下を洗脳しようとしてもムダな努力だということ。上司と部下の両方にストレスがかかるだけで成果を生みません。

 ダイバーシティの時代といいますが、ますます価値観は多様化する方向に向かっています。多様な価値観を持った部下たちが集まるから、多様なアイデアを出すことも可能なのです。自分の価値観だけがすばらしいと考える上司ほど、部下との価値観の違いにストレスをためるのです。

 移民の国である米国に比べれば、日本はまだ単純な方です。総人口における日本人の比率は99%以上です。また外資系は例外として、外国人を部下に持つ上司は、海外に比べればわずかです。

2.米国が多様な価値観を束ねている3つの秘訣

 米国では、どのように多様な民族や価値観を束ねているのでしょうか。米国は国を統治するために、大きく3つのことにこだわっています。

(1)ルールを決めて正誤の境目を明確にする

 ルールによって、「ここまでは問題なし、これ以上は問題あり」と明確に正誤の基準を決めています。数値基準と判定方法をはっきり定めることで、正誤の判断をするのです。

 数値基準と判定方法を明確にし、正しい検査方法を守り、かつウソをついていなければ、誰がやっても同じ結果になります。個人の自由裁量を可能な限り排除し、正誤の境目を明確にすることに注力しているのです。ですから、ルール違反に対しては極めて厳しい措置をとります。

 ある日本の会社が、IBMから発注された部品を納品しようとしました。納品するためには、IBMが定めた検査基準をクリアする必要があります。検査装置、検査基準表、検査方法のルールがIBMから提示されます。100万個の部品を納品しようとしたのですが、検査データが一部だけ、わずかに基準値を下回ったのです。その結果、100万個の部品の受け取りが拒否され、全数検査するか、すべて作り直すかという事態になりました。コスト的にはかなりの犠牲を払いましたが、対策の過程で、ある慢性的な不良発生の原因究明が発見され、品質水準が向上して、同種の不良の再発防止ができたのです。

(2)共通の目的を共有化して一体感を持たせる

 多民族ですから当然価値観は多種多様です。また所得層も天と地ほどの差があります。どうやって米国は愛国心を高めているのでしょうか。それは、共通の目的を共有化して一体感を持たせることです。

 永遠のテーマは、「自由の国」「資本主義の国」です。そして地上に注意を向けると現実的な問題に直面するので、国民を宇宙に向けさせます。具体的には、「アポロ計画」「スペースシャトル」です。そして「火星に人類を送る」という新しい目標を提示しました。

(3)論理的に説明責任を果たす

 多様な価値観を納得させるために必要なのは、論理的に説明責任を果たすことです。政治のスポークスマンは、論理的に国民に説明責任を果たす役割を担っています。論理的な説明であれば、国民は納得せざるを得ません。また論理的に説得されれば、価値観の違いに関わらず、多くの人の納得度が高まります。

3.経営理念に学ぶ「ミッション」「ビジョン」「バリュー」

 会社には経営理念が定められています。米国企業の経営理念は、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3点セットで構成しています。

 ミッション(使命)は、企業が果たすべき使命です。「そもそもわが社は何のために存在するのか?」という存在意義を問うものです。たとえば、「政府は何のために存在するのか?」「自治体は何のために存在するのか?」を問いかけます。「国民や県民(市民)の豊かな生活を実現&支援するため」であってほしいものです。

 ビジョン(展望)は、あるべき姿の展望を示したものです。たとえば自治体では、「より高度な利便性と豊かな生活環境の実現をめざす。また地域以外の人々も住みたいと思えるような魅力ある地域社会を実現する」といったところでしょう。

 バリュー(価値観)は、共通の価値観です。米国企業ではバリュー(価値観)をきわめて重視しています。バリューとは、普遍的な共通の価値観を明記したものです。たとえば、「顧客第一主義」「働きがいのある職場」「開かれたコミュニケーション」「創造する」「チャレンジする」などです。東京都は小池知事になってから、「都民ファースト」という方針を職員に伝えています。これもバリューの例です。

リーダーシップ力(2)部下たちのバラバラな価値観を「大きな成果」に変える方法(西村克己)

4.組織の行動指針の価値観をスローガンで共有化する

 では、米国の多民族の統治、経営理念から何を学べばいいのでしょうか。それは、個人単位での価値観の違いを気にするのではなく、方針レベルで価値観を共有化するのが重要だということです。

 部下の一人ひとりとの価値観の違いを気にしても、上司と部下の消耗戦になるだけです。共通の価値観としてバリューを決めます。そして各人が「バリューを共通の旗印として守る」という意志を確認すればいいのです。

 バリューというと、イメージがわかない人も多いでしょう。そこで「スローガン」と言いかえてみましょう。つまり、組織の行動指針の価値観をスローガンで共有化するのです。

 スローガンを決めるために、1つ忘れてはいけないことがあります。前回にご紹介した「戦国時代の作戦会議」です。この意味がわからない方は、ぜひ前回を読んでください。

(1)ステップ1:アイデア出し会議

 まず上司と部下が集まって、フラットな人間関係で、どのようなスローガンにするかの自由意見を出し合います。「アイデア出しと評価を分離する」ことは必要です。まずはアイデア出し、全員に会社や部門を活性化させるためのキーワードを自由な雰囲気でどんどんあげてもらいます。数十個くらい出しましょう。発言に対して批判するとか、意見するのは厳禁です。それらは評価になるからです。

(2)ステップ2:評価

 キーワードを出し切ったら、次に評価します。5段階評価でもいいし、重要と思うキーワードに挙手をしてもらい、その人数で点数評価する方法お勧めです。評価をまとめてやると、楽しい雰囲気になります

(3)ステップ3:決定

 評価が終わったら、スローガンとなるキーワードを数個選びます。最終決定は上司がすべきです。その後は、「ノットアグリー・バット・コミットメント」を徹底しましょう。(第6回目参照)

リーダーシップ力(2)部下たちのバラバラな価値観を「大きな成果」に変える方法(西村克己)

※「戦国時代の作戦会議」「アイデア出しと評価を分離する」「ノットアグリー・バット・コミットメント」の意味がよくわからない方は、前回(第6回目)をご参照ください。

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