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いま求められる6つの上司力

戦略的マネジメント力(3)なぜあなたの会社は会議が多く、成果が上がらないのか(西村克己)

 会議の多さに問題を感じている人は少なくないのではないでしょうか。資料を作成する時間もないほど会議が頻繁にあると、会議自体の効率も落ちてしまいます。また、会議の議題が、別の会議と重複していた経験はありませんか。目的があいまいで、「昨年やっていたから今年も継続しよう」といった連絡的な会議も慢性化していませんか。

1.部分最適で議論した結果が、全体最適にならなかった会議

 会議一つひとつをみると、確かに必要に思えるかもしれません。しかし、社内や部内の会議を一覧表にしてみると、目的や議題が重複しているものはないでしょうか。

 わたしたちは、「全体の視点」を忘れがちです。P.F.ドラッカー博士の「いかに優れた部分最適も全体最適に勝てない」、「いかに優れた部門最適も全社最適に勝てない」を思い出しましょう。

戦略的マネジメント力(3)なぜあなたの会社は会議が多く、成果が上がらないのか(西村克己)

 ある会社で、全社改革プロジェクトと称して、5つの会議体を作りました。「販売力強化」「開発力強化」「生産力強化」「技術力強化」「品質力強化」をワーキンググループにして、定例会形式で発足したのです。

 しかし、それぞれの会議で、ある問題が起きてきました。販売力強化をしようとすると、商品開発力を強化しないと販売単独では限界がくるという問題です。一方、商品開発力を強化しようとしても、どのような商品が売れるのかがわからないので、販売力強化チームの情報が必要になります。かくして、別々の会議体で、同じような現状分析をバラバラに進めていきました。

 その後検討が進み、出された解決策は、バラバラなものでした。たとえば、生産力強化チームは、「生産量を拡大するために、3つの工場建設を進めるべきだ」と提案しました。しかし販売力強化チームは、「海外メーカーとの競争を考えると、国内の工場は閉鎖して海外生産でコスト削減すべきだ」という提案をしました。2つの矛盾する結論を出したチームは対立し、その全社改革プロジェクトは中断したのです。

 この会議の問題は、販売、開発、生産など「機能別」に分けたことにあります。部分最適を深掘りするのは機能別が適しています。しかしその前に、全体最適の議論、すなわち全体の経営方針があいまいだったのです。たとえば、「身軽な経営をめざすために海外を含めたアウトソーシングを推進する」という方針があれば、生産を自社工場ではなくアウトソーシングするという提案になったかもしれません。部分で議論した結論を集めても、全体の整合性が難しいのです。

2.会議体の整理とスリム化が必要

 身の回りの会議を整理してみてはいかがでしょうか。上司としてできる範囲から始めてみましょう。たとえば部長であれば、部内会議の統廃合で、全体最適を考えるのです。課長であれば、課内会議の全体最適を考えます。

重複している会議があれば1つにまとめます。形式化しているものは思いきってやめます。連絡会議も廃止して、月1、2回程度の朝礼は、顔合わせと気分を引き締めるために残すくらいでいいでしょう。

 何ごとにおいても、全体の目的の確認と全体方針の明確化を確保することが第一歩です。会議ごとの目的を整理して、ダブリやモレがないように体系を整理していきます。

 アイデア出し会議と連絡会議を分離するのも一案です。会議の目的は何でしょうか。大きく2つあると思います。1つめは、アイデアを出しあって、よりよい解決策を発見することではないでしょうか。2つめは、関係者の合意を得て、一丸となって実行に取り組める体制を作ることです。連絡会議は電子メールや電子掲示板で代行できるでしょう。

3.「豊洲移転問題」にみる、なぜ全体最適が必要なのかと部分最適の弊害

 築地市場の豊洲移転問題で、多くのニュースが流れています。汚染土壌の除去と、新しい土壌を上乗せすることで汚染問題を解決策するはずでした。しかし、建物の下に地下空間があり、そこには新しい土壌が上乗せされていませんでした。

戦略的マネジメント力(3)なぜあなたの会社は会議が多く、成果が上がらないのか(西村克己)

 何が本質的な問題だったのでしょうか。それは、「全体最適なき、部分最適の弊害」です。新しい土壌を上乗せするという基本方針が、どこかで忘れ去られていたのでしょう。全体の最高責任者である意思決定者の不在も、部分最適になった原因です。誰も全体を見ていなかったし、責任ある意思決定もしていないのです。

 部分最適の集合体になると、予算においても大きな弊害が出てきます。市場移転問題では、各部会がバラバラに検討した結果、総予算が当初の1.5倍以上になっています。

 部分最適では、努力を惜しまず、それぞれの担当エリアで努力していたと思います。しかし全体を統括する人、そして一貫した意思決定をする人が不在だったのが問題です。

 通常の会社では、CEO(最高経営責任者)が一貫した経営方針を出し、意思決定をします。たとえば、A案かB案かで迷ったら、その最高責任者が意思決定します。

 しかし部分最適では、全体の方針があいまいなため、「議論すれども結論出ず」になりがちです。各人が発言していることは、確かにもっともなことばかりでしょう。しかし全体としての方針があいまいだと、狭い視野での局所解(局所だけ見れば正しい解決策)を出してしまいます。

 たとえば、前述の全社改革プロジェクトでは、生産力強化チームは、「生産力強化だから自社工場を新設すべきだ」と結論を出します。しかし販売力強化チームは、「自社生産では競合との価格競争に負けるので、工場を持たないでアウトソーシングすべきだ」という結論になります。さらに技術力強化チームは、「自社工場でなければ、技術力が低下する」と結論を出すでしょう。

 狭い視野では、すべてのチームの局所解は、当事者にとって正しいかもしれません。しかし、全社にとっての最適解は、CEOの全体方針によって異なるのです。

4.東京五輪の予算問題を全体最適で考えると?

 東京オリンピックの予算問題も深刻です。各競技会場の予算が3~6倍にふくれあがっているのです。たとえば、ヨットレース会場の予算が、数十億円から数百億円に膨れました。確かに、1競技だけ見ると必要なのかもしれません。しかしオリンピック全体を考えると、総予算に限りがあるはずです。遠隔地になりますが、既存の会場を使えば、20億円もかからないという話が出ています。

 部分最適の集合体になると、局所解では正しくても、全体では矛盾になるのです。オリンピックの総予算が3兆円を越えるかもしれないという情報を発表したのはマスコミでした。開催責任者や当事者たちは、総予算の設定はもとより、現時点での総予算の把握もしていなかったのです。もし総予算を管理しているというのであれば、予算を削るべきだという議論がでていたはずです。

 全体の予算管理、収支管理しない組織は存続できません。民間企業では明らかに経営破綻です。「わが社は出費が多すぎて、資金繰りができずに大赤字で倒産した。しかし、各部門はよくがんばったから、まったく問題はない」という経営者が、どこにいるでしょうか。

5.どうすれば全体最適にできるのか

 どうすれば、全体最適にできるのでしょうか。それは、「企画―設計―実施」で物事を進めていくことです。または「概要―詳細―具体化」でもかまいません。

戦略的マネジメント力(3)なぜあなたの会社は会議が多く、成果が上がらないのか(西村克己)

 自部門の会議の全体最適を考える場合、会議の目的と全体方針を決めます。たとえば、会議はアイデア出しと合意を得るために実施する。そして連絡は会議以外の手段で行うと決めておけば、どのように会議体を統廃合するかの方針が明確になるでしょう。

 「企画―設計―実施」「概要―詳細―具体化」を常に念頭に置いて仕事を進めましょう。いきなり部分の議論をするのは、一見正解なようで、実は的外れの議論になることが多いのです。オリンピックの競技場と予算問題も、全体最適と全体予算の中で議論してほしいものです。

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