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いま求められる6つの上司力

ヒューマンマネジメント力 部下との関係のストレス、「4つの価値観の違い」から(西村克己)

4つの価値観の違いが人間関係のストレスに

 自分との価値観が合わない部下や上司に悩んでいる人は多いでしょう。どうして自分の伝えたいことがうまく伝わらないのか、ストレスがたまってしまいます。たとえば、部下を注意したとします。ある部下は、屁理屈をこねてしつこく反発するタイプ、黙り込んでしまい「恐い人」というような目で上司を見るタイプ、注意を無視して一向に反省しないタイプなど。疲れますよね!

1.どうして部下によって反応が違うのか?(脳の使い方の違い)

ヒューマンマネジメント力 部下との関係のストレス、「4つの価値観の違い」から(西村克己)

 自分と同じ価値観の人は、数パーセントに過ぎません。なぜなら、人間の価値観は大きく4タイプに分かれ、さらに4タイプの複合系(組み合わせ)を加えると15のタイプがあるからです。つまり、自分とツーカーで価値観が共有できる人は15人に1人なのです。ただし、「やや」共有できる人を含めると、数人に1人になります。

 なぜ人間には、価値観の違いがあるのでしょうか。それは、脳の使い方のクセが人によって異なるからです。人間が考えるときに使う脳は4箇所あります。人類の持つ大脳新皮質の左脳と右脳、そしてほ乳類が生きていくために必要な脳(まとめて辺縁系という)の左と右があるからです。人間が考えるためのシワは、左脳、右脳、辺縁系の左、辺縁系の右の4箇所なのです。

 人によって、優位脳が異なります。優位脳とは、優先的に使う脳です。論理的な人は、左脳が優位脳です。無意識に左脳を使っているのです。脳は使い慣れていると、あまり疲れを感じなくなります。論理的な人は、左脳を使い慣れているので、自然に論理的に考える習慣がついています。

 ズバリ価値観は、優位脳で決まります。同じ優位脳なら、価値観が一致します。異なる優位脳同士では、価値観が異なるため、コミュニケーションがスムーズにいかないのです。優位脳の違いが、コミュニケーションの壁になるのです。

2.価値観は大きく4タイプに分けられる

ヒューマンマネジメント力 部下との関係のストレス、「4つの価値観の違い」から(西村克己)

 人間のタイプ分けには、使用する目的によって、さまざまな流派があります。たとえば、交流分析(TA;Transactional Analysis)では5タイプに分けています。交流分析は、私が20代のころ、富士フイルム時代に合宿形式で受けました。自己理解にとても役立ちました。自分の行動が、第三者からどう見られているかを客観的に知るための手法です。私はさまざまなタイプを一切否定していません。

 今回ご紹介するのは、「ハーマンモデル」という、大脳生理学に基づいた分析と11万人の実施検証を経て確立されたタイプ分けです。コミュニケーションを改善し、人間関係のストレスを軽減させる手法です。米ゼネラル・エレクトリック(GE)の教育研究所で開発されました。

 人間が考えるためのシワは、左脳、右脳、辺縁系の左、辺縁系の右の4箇所です。ハーマンモデルでは、左脳から反時計回りに、A、B、C、Dタイプと記号化しています。Aタイプ(論理的人間)は左脳、Bタイプ(管理的人間)は辺縁系の左、Cタイプ(感情的人間)は辺縁系の右、Dタイプ(独創的人間)は右脳が優位脳です。

 なお、どのタイプが良いか悪いかではありません。どのタイプも良い面と悪い面があります。

3.タイプ別の特徴

(1)Aタイプ(論理的人間);Why人間

 Aタイプは理論家で、事実と分析が大好きです。現実的なため、仕事ではビジネスライクです。クールでドライな印象は、周囲の人にとっつきにくい人と思われがちです。数字も大好き、整合性があるもの、整理整頓が大好きです。金銭感覚も抜群です。しかし、人間的や感情的な面が現れにくいので、人間性を疑われることに留意する必要があります。

(2)Bタイプ(管理的人間);How人間

 Bタイプは官僚的で、計画と秩序を重視します。ルール優先で保守的なため、頑固で堅物だと、周囲の人たちは感じています。簿記、伝票作成、コンピューター入力、定型業務の推進など、ルールがあることには最大の能力を発揮します。また時間や約束をきちんと守ろうとします。しかし、イレギュラーな事柄への対応、リスクを取ることが大の苦手です。臨機応変に向かないのも堅物と思われる一因です。

(3)Cタイプ(感情的人間);Who人間

 Cタイプの人は、人間関係を重視する感情豊かな人です。包容力があり、やさしい反面、涙もろいところがあります。話好きで、他人の気持ちを理解しようとします。人を喜ばせることが大好きです。しかし、ビジネスや目的達成に無頓着なため、遠回りや試行錯誤を頻繁にします。また、のんびりしていて、スピード感覚に乏しいため、周囲からイライラされることがあります。

(4)Dタイプ(独創的人間);What人間

 Dタイプの人は、やんちゃ坊主、いたずらっ子、鉄砲玉などの表現がピッタリの人です。「おもしろいな!」が大好きな好奇心旺盛、自由奔放な反面、無防備です。直観が鋭いため、発明やアイデア出しが得意です。また全体を把握する能力が高く、芸術家やデザイナーに向いています。リスクが大好きなため、ベンチャー企業をめざすのはDタイプです。しかし、周囲から孤立するとか、暴走することに留意しなければいけません。周囲の人からは、手が付けられない人と感じられています。

4.複合タイプの特徴

ヒューマンマネジメント力 部下との関係のストレス、「4つの価値観の違い」から(西村克己)

 ハーマンモデルは大きく分けて4タイプですが、2つ以上を合わせ持つ複合系があります。2つの組み合わせは、AB、AC、AD、BC、BD、CDの6タイプです。3つ以上の組み合わせは、ABC、ABD、ACD、BCD、ABCDの5タイプです。すべての組み合わせは、合計15タイプ(4+6+5)になります。

 複合タイプは、基本となるA、B、C、Dタイプの組み合わせで考えます。4つだけ覚えておくといいのです。

 3つの組み合わせは、どこが弱いかに注目します。たとえば、ABCタイプは、「-Dタイプ」とすれば、「D以外はバランスよし」と判断します。

 4つすべてを持ち合わせている人はABCDタイプで、全脳タイプともいいます。タレントの「タモリさん」はABCDタイプです。さまざまな芸能人を上手に転がして笑いをとります。さまざまなタイプの能力を引き出すことに長けています。タモリさんと共演している芸能人にもストレスがたまらないのです。ABCDタイプは、40人に1人のリーダータイプです。

5.相性の法則と活用法

 同じタイプは、価値観が合い、相性良好です。ハーマンモデルでは、「同じタイプは、コミュニケーションが良好な関係」と定義しています。コミュニケーションが良好であれば、双方にわかり合えるので、結果的に価値観が同じと感じるのです。

 共通項がないと、コミュニケーションがギクシャクします。特に相性が悪い組み合わせは、A対C、B対D、AD対CD、AB対CDの組み合わせです。

 ハーマンモデルの最終目的は、「組織力の最大化」です。さまざまなタイプの社員たちが、上手くコミュニケーションをとりながら仕事ができれば、組織力が最大化です。タモリさんの番組「笑っていいとも」は、まさに全脳タイプのタモリさんが、芸能人の能力を適材適所で活躍させた賜たまものといえるのです。

 上司として、部下と自分の価値観が異なることを否定するのは消耗戦になります。上司も部下もストレスがたまります。価値観が異なること認めてあげて、部下のタイプの能力を引き出せるように誘導するのです。

 たとえば、Aタイプは、目的をきちんと理解すれば、論理的に仕事をきちんとこなしてくれます。Bタイプは、上司命令に忠実で、計画通り業務を遂行することを心がけるでしょう。Cタイプは、人間関係を重視し、アシスタント的な仕事が得意な人です。Dタイプは自由奔放で危なっかしいですが、チャレンジ精神が旺盛でアイデアをたくさん出せる人です。

 タモリさんのように、さまざまな価値観の部下たちの能力を生かしてこそ、理想の上司になれるのです。対立ではなく、コミュニケーションによる対話が大切です。

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