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最強のチームビルディング

自分の成長のために何してる? 1位は意外に身近な…(堀 公俊)

第9回「知らなかった」 互いに学び合う関係をつくろう!

自己成長のために何をしていますか?

 皆さんは、ご自分の成長のために、意識的にやっていることはありますか。本を読むとか、ネットワークを広げるとか、社外の研修を受けるとか。もちろん、このコラムを読むのもその一つかもしれません(よね?)。

 転職情報会社のエンジャパンがビジネスパーソン約2700人にこれを調査しています。多くの方は、どんなことを心がけていると思われますか。

 上位を占めたのが、「目の前にある自分の仕事に一生懸命に取り組む」「責任感を持って仕事に取り組む」でした。与えられた仕事をキッチリやり遂げることが、自分の成長への一番の方法だというのです。

 続く第2グループとして登場するのが、「チャレンジングな目標を設定する」「難易度の高い仕事に挑戦する」です。その後で、「本を読む」「人脈を広げる」「セミナー・研修等に参加する」といった自己啓発的な活動が第3グループとして現れます。

 「あなたは何のために仕事をしていますか?」と問われると、多くの人は「お金のため」「生活のため」と言います。あるいは、「世の中に貢献する」「誰かの役に立つ」といった社会的なものを挙げる人もいるでしょう。もう一つ忘れてはいけないのが、「自分の成長のため」です。

 職場に限らず、人と人が協働する場は、仕事や活動を通じて自分やチームが成長する場でもあります。そんな場をつくるのがチームビルディングの目的の一つです。

学習を歓迎し、優越感を刺激する

 そのために覚えていただきたいのが、学習を歓迎し促進するためのフレーズ「知らなかった」(勉強になる、教えてほしい、よくご存じ、聞いて得した、気づきになる)です。承認や感謝のフレーズとセットで使うと、効果が高まります。

NG 「○○は△△なんです」「ふ~ん、そうなんだ」
OK 「○○は△△なんです」「へえ~、知らなかった!」
OK 「それは◇◇だからと言われています」「なるほど。とても勉強になるなあ」
OK 「さらに□□という話もあります」「ありがとう。もっと教えてくれない?」

 こう言われると、ちょっぴり自尊心が刺激されて、優越感に浸れます。互いの絆が深まると同時に、「もっと勉強しよう」「もっと教えてあげよう」という気持ちが高まります。

 なので、ちょっと寂しい中高年の方には要注意。下手な講釈が止まらなくなる恐れがあるからです。そんなときは、いったん相手を持ち上げておいてから、自分にひきつけるようしましょう。いわゆる「ほめ殺し作戦」です。

OK 「○○は△△なんだよ」「さすが、よくご存知ですね。そこから先は、教えてもらうばかりではダメで、自分で勉強しないと身につきませんよね」

経験から、他者から、偶然から

  仕事の学びとは、本やネットではなく、リアルな経験から学ぶものです。言い換えると、誰かがつくった「知識」を身につけることではなく、自身が体験を通じて「智恵」をつくりあげるものです。

 それは、どんな場合も通用するものである必要はなく、個々の状況とセットとなって役立てば十分。「○○のときは△△すればよい(しないほうがよい)」といった小さな教訓を積み上げていくのが、経験を通じた学習です。

 しかも、読書やビデオのように孤立して学ぶのではなく、常に他に人との関わりの中で学んでいきます。教えることは学ぶことであり、学ぶことから教えられます。「教える人vs教えられる人」という関係ではなく、相互作用を通じて互いに学び合っていきます。

 リアルな出来事では、ノリやハプニングのせいで、予想もつかない展開になることもあります。それこそチャレンジであり、絶好の学習のチャンスです。みんなで乗り越えていく過程を通じて、自分やチームの未知の部分が開拓されていきます。

 つまり、「経験から」「他者から」「偶然から」学ぶのが仕事の学びです。学校や研修の学びとは、やり方も得られるものもまったく違います。考え方さえ身につければ、どんな些細な出来事からでも学習することができます。

うまくいくための原理を見つけ出そう

 経験から学ぶといっても、「過去の経験に頼れ」という話ではありません。

 私たちの人生は、常に経験のない新しい問題に対処していかなければいけません。これだけ環境変化が激しいと、過去の経験則が通用しないのも現代社会です。すべてのことを経験しようと思うと、時間がいくらあっても足りません。

 経験に隠された原理、法則、パターン、構造、メカニズムを抽出して、それを次の経験に生かそうというのです。これなら、事情が変わっても、未知の問題にも応用ができます。

 そのためには、「知らなかった」で終わらせずに、「なぜ?」「どうして?」と元になる考え方を尋ね、そこに働く原理や法則を見つけ出すようにしましょう。

OK 「なるほど。知らなかった……。なぜ、そうされたのですか?」

 その上で、これから起こる未知の出来事に対してどう行動していけばよいか、仮説をつくりあげるのです。これが経験学習の基本的なアプローチです。

OK 「なぜ、そうされたのですか?」「それは△△だからだよ」「そうか!だったら、○○のときは□□すればいいのですよね」

失敗に「なぜ?」をあびせるのは禁物

 ただし、うまくいかなかったことに対して、「なぜ?」の質問は要注意です。「なぜ、できなかったの?」と責められている感じがするからです。

 責任追及をされると、心の防衛スイッチが入り、言い訳をしたくなります。自分を守るために「お客様が急に……」「予想外に他社が……」と自分以外のもののせいにしがちです。

 他者や偶然を原因にしてしまうと、もはや教訓になりません。自分ではコントロールできず、再現ができないからです。学習、すなわち思考や行動を変えることに結びつきません。

 そんなときは、いきなり「なぜ?」を持ち出すのではなく、「何?」を問うようにしましょう。

NG 「うまくいかなかったんだよ」「なぜ、うまくいかなかったのですか?」
OK 「うまくいかなかったんだよ」「いったい、何があったのですか?」

 原因や理由を尋ねるときも、「なぜ?」ではなく「何?」を使うのが得策です。少し自分との距離ができて、客観的に考えることができるからです。経験が学習に結びつけるために、ぜひ覚えてほしい言いまわしです。

NG 「またミスしちゃったんだ」「なぜ、いつもミスするのですか?」
OK 「またミスしちゃったんだ」「何が、ミスを引き起こすのですか?」

◇   ◇   ◇

自分の成長のために何してる? 1位は意外に身近な…(堀 公俊)

堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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