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最強のチームビルディング

「なるほど」を駆使すれば、メンバーの相互理解が進む!(堀 公俊)

第2回 「なるほど」 「知る」と「分かる」は大違い

はたして、それでチームと言えますか?

 皆さんは、チームメンバーのことをどれほどご存知ですか。親しい人を一人思い浮かべ、箇条書きでよいので、「知っていること」をできるだけたくさん書き出してみてください。「関西出身」「趣味はテニス」「二児の母親」といったように。時間は3分です。

 このエクササイズをやると、平均して10個前後の項目がリストアップされ、案外少ないことに気づかされます。重要なのはここからです。では、その方のことをどれほど“分かって”いますか。

 たとえば、「田中さんは購買計画を担当している」というのは「知る」です。「なぜその仕事をしているのか?」「どんな思いでやっているのか?」を知るのが「分かる」です。

 そう尋ねると、多くの人はリストを見つめながら考え込んでしまいます。さらに追い打ちをかけ、「その方は、あなたのことが、どれほど分かっていると思いますか?」と言うと、ほとんどは腕を組んで虚空を見上げるようになります。

そうなんです。チームメンバーとはいえ、知っていることは限られており、ましてや互いに分かっていることなんてほとんどないのです。こんな状態で、はたしてチームと言えるのでしょうか。

 前回述べたように、互いが違う人たちを一つにまとめるのがチームビルディングです。その決め手となるが互いの関係性です。

互いは違うのですから、自分のことを積極的に話し、相手のことをしっかり聴いて、お互いを知ることがすべての出発点になります。その上で、互いの人柄や考え方が分かると、チーム効果が発揮できるようになります。

「知る」と「分かる」は大違い

 私たちは何気なく「知る」と「分かる」を使い分けています。

 たとえば、「ニュースを知る」と言いますが、「ニュースが分かる」とは言いません。「中国語を知る」とは言わず、「中国語が分かる」と言います。

 「知る」とは、自分が持っていない新たな知識や情報を得る(インプットする)ことです。一方、「分かる」とは、インプットされた情報を元に、物事の意味や本質をつかむ(理解する)ことです。

 チームの関係性を高めるには、知るだけでは不十分。互いを分かりあうことが重要です。コミュニケーションで言えば、単に話したことを受けとめるだけではなく、内容や意図が分かってこそ成立したと言えます。

 しかも、「分かった」ということを伝えないと、相手は「分かってもらえなかったのか?」と不安になります。そこで今回紹介したいフレーズが「なるほど」(そうなんだ、分かるよ、つまり)です。関係性を高める相づちとして積極的に活用したい言葉です。

 NG 「実は私、△△が□□なんだよ」「ふ~ん(へえ~、ふむふむ、はあ……)
 OK 「実は私、△△が□□なんだよ」「なるほど、そうだったんだね。分かるよ

相手の考えに同意せずに理解する

 「なるほど」は日ごろのコミュニケーションに限らず、会議や交渉でも使える便利なフレーズです。内容を理解したことだけ伝える、ニュートラルな言葉だからです。

 たとえば、相手が突飛な話をしたとします。意外に思ったものの、相手を気遣って「いいですね」と好意的な相づちを打つと、賛同したものとみなされます。後で引っ込みがつかなくなる恐れがあります。

 そんな時こそ「なるほど」です。評価も同意もせず、理解したことだけを伝えるのです。

 NG 「○○だよ」「いいね」「君もそう思うんだね?」「いや、それは……
 OK 「○○だよ」「なるほどね」「君もそう思うんだね?」「言っていることは分かるよ

 時々勘違いする人がいるのですが、たとえ意見が違っていても、議論の参加者は問題解決のパートナーです。合意という名のゴールを目指すチームの一員です。

 関係性を高めておけば、譲歩や妥協がしやすくなります。かといって、反論すべきところは反論しないと議論になりません。「なるほど」を使って、関係(理解)と議論(合意)を切り分ければ、どちらも効果的に進めることができます。

 OK 「ここは○○すべきだ」「なるほど」「そう思いませんか?」「言い分は分かります。それに対して私は……

軽く要約して理解を確認する

 ただし、便利なフレーズなだけに、多用し過ぎると危険です。慣れてくると、理解もしていないのにオウム返しで「なるほど」と言ってしまいます。わが家でよく起こる失敗です。

 NG 「○○だと思うんだけど」「なるほど」「アンタ、聴いてるの!」「ゴメン、何の話?

 そうならないために、「つまり」(要するに、ポイントは、言いたいのは)をつけて、発言を軽く要約するようにしましょう。これなら、ちゃんと相手に伝わったことが、言葉で確認できます。

 OK 「○○だと思うんだけど」「なるほど、つまり○○というわけだ
 OK 「○○だと思うんだけど」「なるほど。要は○○なんですね。分かります

 特に、目上の人に「なるほど」は失礼にあたる場合もあり、「なるほど、○○ということですね」と確認を入れるとよいでしょう。

 抑揚をつけるのも、マンネリを打破する一つの方法です。「なるほど!」「な~るほど」「なるほどね」「なるほど、なるほど」と感心度合いに応じて言いまわしを変えるのです。

 いずれにせよ、分かってもいないのに「なるほど」を使うと、「お前に分かるわけがないだろう!」と逆効果になりかねません。本稿で紹介するフレーズを覚えることは重要ですが、どんな言い方をするか、どんな気持ちを込めるか、言外のメッセージが大切であることを忘れないでください。

プレゼントで相手を喜ばせるには?

 分かるとは、「本質を理解すること」だという話をしました。では、チームメンバーの本質とは、一体何なのでしょうか。

 ある企業が、見知らぬ二人をペアにしてプレゼントを送り合うという制度をつくりました。相手を喜ばせたり驚かせたりするには、よほど本人のことが分からないとできません。もちろん、直接本人には聞けないので、上司や同期などに取材することになります。プレゼントをきっかけにネットワークづくりをしようというのが狙いです。

 相手が分かるというのは、その人がどんな興味や関心を持っているか、価値や原則で動いているかを理解することです。

 仕事で言えば、決められた手順をキッチリやり遂げることに喜びを感じる職人肌の人もいれば、次から次へと新しいことにチャレンジしないと燃えない人もいます。そういった行動の裏にある根源的な欲求は人それぞれです。

 ところが、人はどうしても自分を基準に相手を判断しがちになります。自分とは違うタイプに対して、「ワケが分からん」「あいつはおかしい」とレッテルを貼ってしまいます。しかしながら、それは単なる持ち味の違いであって、良しあしではありません。

 チームビルディングとは、全員を一つの色に染めることではありません。それぞれの持ち味を生かしつつ、巧みに組み合わせて相互作用を高め、最高のパフォーマンスを実現することです。

 そういう意味では、相手は自分とは違う人間であること、自分は相手のことが分かっていないことを分かるのが、本当の意味での「分かる」なのかもしれません。

◇   ◇   ◇

「なるほど」を駆使すれば、メンバーの相互理解が進む!(堀 公俊)

堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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