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最強のチームビルディング

日本のチームビルディングの元祖、あの人望なき武将?(堀 公俊)

第26回 組織の生活習慣病を治すには?

理想のチームづくりを目指した武将がいた

 理想のチームを語るときによく使われるフレーズに「One for All、All for One」(一人はみんなのため、みんなは一人のため)があります。どこから生まれた言葉なのか諸説があるのですが、スポーツチームや協同組合の合言葉としてよく用いられています。

 実は、日本にも同様の言葉を掲げて戦った有名な武将がいます。日本におけるチームビルディングの元祖といっても過言ではありません。さて、どこの誰でしょうか。

 答は、豊臣秀吉を支えた知将・石田三成です。彼が掲げた「大一、大万、大吉」の旗印は、「一人が万人のために尽くし、万人が一人のために尽くせば、みんなが幸せになれる」という意味です。三成のオリジナルではないのですが、常に大切にしてきた言葉だったそうです。

 あの時代、こんな高邁な理念を掲げた武将は三成くらいです。しかも、頭も回れば、仕事もできる。にもかかわらず、味方の裏切りにあい、関ケ原の戦いではあっさりと負けてしまいました。

 理由の一つとしてよく挙げられているのが人望のなさです。中でも致命的だったのは、上司の秀吉とは違い、人の感情や人間関係に疎かったことです。昨年の大河ドラマ「真田丸」でも、同僚の加藤清正に「お前には情ってものがないんだよ!」と詰め寄られるシーンがありました。

 情に薄いからこそ、欲得に目がくらむことなく、理想に向けていちずに頑張れるもの。それを言うのはかわいそうじゃありませんかね。清正さん。

「自律性」と「協働性」を兼ね備える

 イキイキとしたチーム(組織)には2つのものが求められます。一つは、メンバー一人ひとりが「自律性」、すなわち自分で考え自分で行動することです。

 言われたからやる、規則だからやる、与えられたことだけやる、というのでは自律的とは言えません。組織の目標達成に向けて、自らが何をすべきかを自分の頭で考え、積極的に行動していく。「言われなくてもやる」のが自律性です。

 とはいえ、みんなが勝手気まま、てんでバラバラに自律性を発揮されても困ります。もう一つ大切なのが「協働性」です。互いに力をあわせ、一枚岩となって行動することです。

 そのためには、自分のことだけを考えていたのではいけません。相手のために何ができるか、みんなのために何をしなければいけないかを考え、チームの一員としてふさわしい行動を取らなければなりません。

 かといって、戦前の日本社会のような滅私奉公では、組織の目標は達成できても個人は元気になりません。自律性と協働性が両立してはじめて活性化された組織ができあがります。

人を変えるのではなく、関係性を変える

 ところが、人間と同じように、組織にも生活習慣病があります。年を取れば取るほど、組織を維持してくことが目的になる病気です。「自己目的化」と呼びます。進行しだすといずれ成果が落ち、メンバーも疲弊していきます。命取りになりかねない重大な病です。

 典型的な症状の一つが、自分の役割を果たすこと(部分最適)を優先し、組織全体の視点(全体最適)で考えられなくなることです。「One for One」になりがちになるのです。

 そんなとき、私たちは、どうしても個々のメンバーに注目しがちになります。「田中さんは自分勝手だ」「リーダーの人望が足らない」といったように。集団を要素(人)に分解するほうが考えやすいからです。

 ところが、他人の性格ややる気を変えるは至難の技。リーダーシップ力なんて簡単に身につきません。問題児を別の人と交換できればよいのですが、そんなぜいたくが許される状況ではありません。

 だったら、彼(彼女)らを生かすことを考えてはいかがでしょうか。

 みんな優れた能力とやる気を持っているものの、今、このチームでは十分に発揮できていない人がいる。それは「本人たちと他のメンバーの関係がうまくいっていないからだ」と考えるのです。

 自分が変われば、相手との関係性が変わります。関係性が変われば、発揮できていなかった才能やパワーが開花します。それがチームの関係性によい影響を与えます。そんな、人と関係性の好循環をつくることこそが、チームビルディングの本質となります。

互いの領分に踏み込み合おう

 部分最適になってしまった関係性を打ち壊す最善の方法は、全員がすべての仕事をこなせるようになることです。実際に、営業や総務といった、すべての仕事を掛け持ちにしている会社もあるくらいです。まさに全員経営です。

 それが無理なら、うまくいかないことを自分以外の人のせいにせず、精一杯自分の持ち場でできることをしっかりやることです。まずは、自律性を最大限に発揮するようにしましょう。

 OK 「自分は、自分の持ち場でさらに何ができるだろうか?」

 その上で、自分は自分、相手は相手ではなく、相互乗り入れを考えます。互いに、相手の領分に踏み込み合うことで、新たにできることを探していきます。これこそが協働性です。

 OK 「自分は、相手の持ち場に対して、どんな貢献ができるだろうか?」

 OK 「相手からどんな協力が得られれば、自分の持ち場で何が可能となるだろうか?」

 さらに、チーム全員が力を合わせないとできないことを考えます。誰かに貧乏くじを引かせるのではなく、みんなで危ない橋を渡ることを考えるのです。それでこそ本当のチームです。

 OK 「私たちみんなが力を合わせるからこそ、できることはないだろうか?」

 会社にせよ、コミュニティーにせよ、今の日本では何かをするのにぜいたくに人的資源を投入することはできません。「今ある資源をいかに活用するか?」を考えるしかありません。よい関係性が構築できれば、同じ資源を使いながらも、見違えるほど成果を高めることができます。

 厳しい環境の中でチームが生き残っていくためには、チームビルディングのスキルとノウハウを高めることがまさに生命線となります。誰かが悪いとぼやく暇があったら、ささいなことでもできるところから着実に実践していきましょう。今回紹介した24個のワンフレーズを使って。

日経ビジネススクールでお会いしましょう!

 一方、非日常(ハレ)の場をつくって、そこで一気にチームビルディングをやる手もあります。いわゆる組織開発のワークショップです。今や、ワークショップを企画・進行するスキルは、チームビルディングを進める上で欠かせないものとなっています。

 残念ながら、この部分は本連載では触れることができませんでした。興味のある方は日経ビジネススクールの私のセミナーに来てください。まったくの初心者から百戦錬磨のツワモノまで、同じ悩みを持つ多彩な人が集まり、スキルとマインドを磨き合っています。日程は下記ウェブサイトをご覧いただければと思います。

創発を生み出す!ワークショップ講座(教育研修・問題解決・商品開発・組織変革)
 ①ワークショップ・ファシリテーター編
 ②ワークショップ・デザイナー編

 ということで、ご好評いただいた「最強のチームビルディング」は今回で終了となります。長い間、ご愛読いただき、本当にありがとうございました!

◇   ◇   ◇

日本のチームビルディングの元祖、あの人望なき武将?(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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