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最強のチームビルディング

浮気を追及する妻と辣腕新聞記者が使う「落としテク」(堀 公俊)

第24回 ところで スルーする技を身につけよう!

壮大な物語をみんなでつくろう!

 チーム力を高めるエクササイズを一つ紹介しましょう。インプロ(即興)と呼ばれるゲームの一つで、「ワンワード」と名づけられたものです。

 人数は問いません。チームメンバー全員で輪になって座ります。スタートとなる人を決め、その人から順番に一言ずつ言葉を述べて、全員で一つの物語をつくるのです。たとえば、1人目「昔むかし」→2人目「あるところに」→3人目「おじいさんが」……といったように。

 いっときに話せるのは、単語+助詞のみです。「そこで」「しかし」といったつなぎの言葉でも構いません。思考の瞬発力を生かして、できるだけ早く言葉を回していきます。いったん話が終わっても、次の方が新しく口火を切って、何周でも言葉のリレーを続けていきます。

 みんなの想像力が一つになれば、突拍子もない壮大な物語ができあがり、大きな達成感と一体感が生まれます。逆に、思いがかみあわないと、話がグルグル回っていっこうに進みません。普段のチームのあり方が透けて見えるのが面白いです。

 やってみると分かるのですが、順説にせよ逆接にせよ、関連ある話をつなげるのはさほど難しくありません。いちばん面食らうのが、「ところで」「それはさておき」「話は変わって」といった話題を転換する言葉を出されたときです。ほとんどの人は頭が真っ白になります。

 それを知って、わざと毎回転換の言葉を出す輩(やから)もいます。そんなときは逆回しをしたり、次に発言する人を指さしたりして、特定の人にプレッシャーがかからないようにします。

時には話を受け流すことも大事

 今回は、ちょっと危険なフレーズを取り上げます。先ほど紹介した「ところで」(それはさておき、話は変わって、そう言えば、そんなことより、さて)です。先に使い方を見てください。

OK 「……ということなんだよ」「なるほどね……。ところで、例の件はどうなったの?」

 本稿では、チーム力をアップするためのコミュニケーションのポイントを解説してきました。そのためには、こちらの思いをしっかり伝え、相手にちゃんと受け取ってもらわなければなりません。

 ところが、まともにやろうとすると結構骨が折れます。時には、「受け流す」ということも覚えておかないと体が持ちません。

 それに、すべての話をまともに取り合う必要もなく、話を聞いてもらうだけでスッキリすることもあります。「どうして?」「何ができる?」と問題解決するばかりがよいとも限りません。

 そんなときに、「ところで」のような話題転換のフレーズが重宝します。相手の話をスルーして、次の話に進めるのに使います。これも人間関係を円滑にするためのコツです。

 ですから、必ずいったん受け止めてから転換を図ってください。そうでないと、ロクに話を聞かずに腰を折られた気がして、逆効果になりかねません。

NG 「……らしいよ」「そう言えば、○○はどう?」
OK 「……らしいよ」「そうなんだ……。そう言えば、○○はどう?」

違う話を持ち出してやり過ごす

 話題転換のフレーズ「ところで」は依頼をやんわりと断るときにも重宝します。

 前回まで、角の立たない依頼の断り方をいろいろ述べてきました。それでも、断りきれない依頼があります。そんなときに、直接イエス/ノーを答えず、違う話を持ち出して保留にしてしまうこともできます。

OK 「ということで、悪いけど○○をお願いするよ」「なるほど、○○してほしいんだね。ところで、△△ってどうなったんだっけ?」

 こう言えば、多くの日本人は「受けてもらえなかった」(ノー)だと受け取ります。実際、これで諦める人が結構います。

 ところが、一通り新しい話題が終わった後で、「ところで、○○の話はやってくれるの?」と、話題転換をやり返される場合もあります。そんなときは、仕方ありません。忘れていたふりをして、イエス/ノーをはっきり答えるようにしましょう。

OK 「ところで、○○のお願いはどうなの?」「ごめん、ごめん、そうだったね。申し訳ないけど○○については……」

さらに重要な話題を持ち出せるかが鍵

 こんな話をすると、「煙に巻いて、ごまかしているだけじゃないか」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。まさにその効果を狙っており、そういう面がないとは言えません。やり過ごす、すなわち「優先順位の低いものを放置する」というのも、ビジネスパーソンにとって重要なスキルの一つです。

 大切なのは、「ところで」の後にどんな話題を持ってくるかです。いま話をしていることよりも、もっと重要な話題を出せば、ごまかしている感じが薄れます。本来話すべきことは、それではないと暗に伝えるのです。

OK 「山田さんに困っているんだよ」「それは大変だ……。ところで、そんなことより、今期の売り上げは大丈夫なの?」

 以前、この手を教え子に使われたことがあります。

 ある年、半期の授業を受け持っている某大学の期末試験で「Aについて論ぜよ」という問題を出しました。ところが、ヤマをはずしたある学生が「それはさておき、ここでは現在最も社会で問題になっているBについて論じていくことにする」と全く違うテーマで答案を書いて提出したのです。

 本来ならば、設問には一切答えておらず、不可(落第)にすべきところでしょう。とはいえ、回答そのものはよく書けており、Bという着眼点も悪くありません。結局、「結果オーライ」ということで、ギリギリ合格にすることにしました(ちょっと甘かったかな?)。

「ところで」が来たら身構えたほうがよい

 最後に、このフレーズには思わぬ力があることを紹介しておきましょう。

 冒頭で述べたように、「ところで」は相手をドキッとさせる効果があります。タイミングよく使うと相手のホンネを引き出すのに役立ちます。

 やり方は簡単。まずは、本題とは違う話を出し、「なるほど」「さすが」「その通り」と大げさに相づちを打って、話に乗せていきます。夢中で話をさせて、相手のハードルを下げるわけです。

 そうやって、ひとしきり盛り上がった後、「ありがとう」「じゃあまた」「よろしくね」でいったん話を終えます。相手が去ろうとしたタイミングで、「ところで……」「そうそう……」「あと一つだけ……」と本題を切りだすのです。

OK 「じゃあ、この件はこれくらいで。後はよろしく。そうそう、ところで、○○の話は順調に進んでいる?」

 虚を突かれた相手は、思わずホンネを口走るか、その手がかりを漏らしてしまいます。テレビドラマで、容疑者を追い込む刑事や、不倫をした夫を追及する妻がよく使う手です。辣腕の新聞記者が、自分の仮説の確証を得るのに使う、という話も聞いたことがあります。

 逆に、皆さん上司や両親に呼び出され、「ところで……」と言われたら、警戒モードを最大限にしたほうがよいかもしれません。相手の術中にはまらないために。

◇   ◇   ◇

浮気を追及する妻と辣腕新聞記者が使う「落としテク」(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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