出世ナビ 記事セレクト

最強のチームビルディング

仲間も騒然、チーム力を高める「特別な自己紹介」とは?(堀 公俊)

第10回「実は」 自分の扉を開けば相手も開く

目からウロコになるスペシャル自己紹介

 私は1年を通じて、かなりの数のワークショップや研修をこなしています。いつもは、軽いあいさつの後、お互いを知り合うところから始まります。

 ところが、「グループ内で自己紹介してください」というと、「今さら……」という声が挙がる場合があります。そんな時は、「本当に必要ないか、試してみましょう」といってやるエクササイズがあります。やれば少なからず目からウロコになるスペシャル自己紹介です。

 「実は私(こう見えても)……」というテーマで、まだ誰にも話をしていない秘密を各自一つだけカミングアウトしてもらうのです。人気アイドルの遠縁に当たる、祖父が徳川の埋蔵金を探し続けている、子どもの頃に水難事故で死にかけた……。どんなことでも構いません。

 意外な秘密の暴露に会場中が「え~!」「マジ?」「知らなかった!」「そんな奴とは……」という声が響き渡ります。ある程度知っている人の話だからこそ、普段とのギャップが楽しめます。秘密を分かち合うことで、互いの距離がグッと近づきます。

 時間があるときは、「では2順目をいきましょう」と何度も回していきます。当たり障りのない秘密でお茶を濁していた人も、いずれとっておきの話を出さざるをえなくなります。

 もちろん、講師の私も、率先して秘密を暴露しなければいけません。いつもは、「実は私、昔ダンス部の部長をしていて、ヒップホップから社交ダンスまで何でもこなせます」といって、今なら「恋ダンス」を実演してみせます。あまりやりたくないのですが……。

チームづくりは情報の共有から

 今回紹介したいフレーズが「実は」(本当は、正直に言えば、打ち明けると、ぶっちゃけ)です。一歩踏みこんで、真実やホンネを披露するときに使います。

OK 「実は、今回の件の本当の狙いは……」
OK 「本当は、私、この会社に入る前に……」

 いきなりメンバーが集まっても、互いの意思や行動の調整が十分に取れず、すぐには効果的なチームにはなりません。目標、規則、役割、手順といった決まり事を共有して、チームとして機能するようになります。

 ところが、いったんチームとしての制度や仕組みが整うと、今度はそれを守ることが仕事だと勘違いしがちになります。たとえば、売上高1億円という目標を掲げると、どんな手を使っても目標を達成すればよいと考え、顧客の観点がおろそかになります。あるいは、役割分担を決めてしまうと、自分の領分をかたくなに守り、自分にとって都合よく仕事をしようとします。

 それを防ぐための一つの方法が、情報共有の拡大と深化です。

 目標や規則が形骸化するのであれば、それができた背景や経緯を共有する必要があります。部分最適の罠(わな)から抜け出すには、チーム全体の情報をみんなで分かち合うのが特効薬です。そうやって、互いに一歩踏み込んで情報を出し合う必要があるのです。

OK 「なぜ、ウチは○○なんですか?」「実は、ここだけの話……」
OK 「なぜ、ウチは○○なんですか?」「正直に言えば、それにはワケがあって……」

自分の扉を開いていますか?

 情報共有でもう一つ大切なのは、人(組織)に関する情報です。

 誰がどんな能力や志向を持っており、どんな思いで仕事をしているのか、それを分かち合わないと本当のチームになれません。自分の扉を開くことから「自己開示」と呼びます。いわゆる「腹を割って話す」ことです。ホンネを語り合えば、互いの理解が深まっていきます。

OK 「実は、以前に専務とやり合ったことがあって……」「そうだったんだ……」
OK 「本当のことを言えば、○○には反対なんだよ」「え、知りませんでした」

 内容が個人的な話であればあるほど、「あなたは特別な人だ」「信頼している」というメッセージを送ることにもつながります。秘密を分かち合った者同士の連帯感も高まっていきます。

 とはいえ、「ホンネを語るのは苦手」という人もいます。どれだけ自己開示するかは個人差があり、性別、年齢、兄弟順、性格などに大きく左右されます。

 心理学者・榎本博明氏の研究によれば、知的側面(知識、知的能力、関心事)、志向的側面(価値観、目標、生き方)、物質的自己(ライフスタイル、趣味)などが語りやすいテーマとされています。できるだけ親しい人を見つけて、このあたりから始めてみてはいかがでしょうか。

 それでもうまくできない方は、その名もズバリ『実は私は』という、TVアニメにもなったラブコメ漫画(増田英二著)がありますので、やり方の参考にしてみてください。

まずは自分からコートを脱いでみせる

 他人から自己開示を受けると、それと同程度の内容や深さの自己開示をお返ししようという性質があります。相手の信頼にこたえようという気持ちも抱くようになります。

 つまり、相手のホンネを引き出そうとするなら、まずは自分がホンネで語ることが重要となってきます。相手のコートを脱がせるために、まず自分がコートを脱いでみせるのです。

 といっても、自慢話や説教をしたのでは、余計に相手の扉を閉じてしまいます。見たくもない裸を見せて、「俺も見せたのだからお前も」と迫るのは筋違いです。

 効果的なのは、過去の失敗や自分の欠点など、今まで隠していた弱い内面をさらけ出すことです。心のハードルが少し下がり、相手も打ち明けようという気持ちになります。見本があると、やりやすくなります。上司や先輩といった立場の強い人がやると、効果が高まります。

OK 「実は、若い頃、会社で大きな失敗をやらかしたことがあるんだよね……」
OK 「実は、俺、こう見えても、本当はプレゼンがとても苦手なんだ……」

 うまくすれば、相手がそれに応え、またこちらが応え返す。自己開示が相互に繰り返され、どんどんそのレベルが上がり、深いホンネの語り合いへと進んでいきます。まさにチームの相乗効果が発揮されるわけです。

灯りを落としてろうそくをつけると……

 自己開示を促進するには環境づくりが大切であることを付け加えておきます。

 以前、私が所属する日本ファシリテーション協会で、「話し合いのカタチがどのように内容に影響を与えるか?」を実験したことがあります。スクール型、シアター型、サークル型など、座席のレイアウトをいろいろ変えてみて、参加者の振る舞いがどのように変化するのかを調べたのです。

 最もタテマエの話になりやすかったのがスクール型と「ロ」の字型。対立を生みやすいカタチであり、チームの一体感を醸成するには不向きです。まさか、こんなカタチで会議をしていませんよね。

 逆に、最もホンネが出やすいのが、椅子だけを円形に並べて話し合うサークル型でした。灯りを落として、円の中心にろうそくを立てると、深い自己開示が起きやすくなります。いわゆるキャンプファイヤー効果です。腹を割るには、机という心理的なガードをなくして腹を見せるのが一番。おぼろげながら表情が分かるというくらいが、扉を開きやすい明るさです。

 一対一で話し合うときは、対面で座るのではなく、横並びのカタチが最も自己開示がやりやすくなります。心の距離が近くなると同時に、同じ側にいることで共感が芽生えやすい。しかも、直接目線がぶつかり合わず、気恥ずかしさが減るからです。彼(彼女)を口説きたかったらこれが一番!

 もちろん、会社でろうそくを立てるわけにはいきません(消防法違反?)。ここで述べた原理原則を生かして、自己開示がしやすい演出に工夫を凝らしてみてください。

◇   ◇   ◇

仲間も騒然、チーム力を高める「特別な自己紹介」とは?(堀 公俊)

堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

  • 顧客満足を高める・プライシング戦略の進め方

    戦略的に価格を決めるための7つのステップ続きを読む

  • ロジカル・シンキング

    論理的に考え、ビジネスで活用するためのスキル続きを読む

  • デジタル化と破壊的イノベーション

    MBA Essentials 2017 <アドバンスコース>続きを読む

バックナンバー

NIKKEI STYLE

最新記事一覧

おすすめの講座

  • ビジネススキル再点検
  • 日経ビジネススクール アジア
  • 日経緊急解説Live!
  • 日本版エグゼクティブ研究会
  • お気に入り登録&マイページ便利な使い方