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チームの「困ったちゃん」対処法 あなたがすべき4つ(堀 公俊)

第25回 とりあえず チームの問題児に対処する

欠けたドーナツばかり見ていませんか?

 チームビルディングの講演や研修をしていると、必ず出てくる質問があります。「やる気のないワガママな田中さんをどうにかできませんか?」といった類いのものです。チームの「困ったちゃん」(問題児)への対処法を知りたいというのです。

 相手が何らかの精神的な疾患を持っているなら、専門家に任せたほうが無難です。そうでなければ打てる手があります。ただし、その前に頭に入れておいてほしいことがあるのです。

 完全に輪のカタチをしたドーナツの写真と、視力検査で使う輪のように、一部が欠けたドーナツの写真を2枚見せると、大抵の人は後者に目が奪われます。どうやら私たちは、足らないところに目がいく性質があるようです。

 チームについて言えば、どうしてもうまくいっていない部分に目がいきがちになり、完全なドーナツにしようとします。そんなイバラの道より、うまくいっている部分に着目して、伸ばすことを考えてはいかがでしょうか。

 そうすれば、うまくいっていない部分がカバーできるかもしれず、欠けている部分それほどが気にならなくなるかも。うまくいっていない人も、つられてうまくいくようになるかもしれません。

 人を見るときも同じです。どうしても足らない部分に目がいきがちになりますが、できていることに光を当てて、勇気づけてみるのです。そのほうが、本人にとってもチームにとっても近道です。そのためのフレーズをこの連載でたくさん紹介したつもりです。

新たな体験をすれば人は変われる

 そう言っても、どうしても問題児を変えたいと考え、「先生の研修を一日受けさせたら変わりますか?」という無茶な質問を受けることがあります。そんなことしたら、ヤバいですよ。洗脳(マインドコントロール)せよと言っているのに等しいのですから。

 残念ながら説得や研修で人は変わりません。その人の持つ考え方や価値観は経験から生み出されたものだからです。新たな経験なくして、信念に揺らぎを与えるのは、極めて難しいと言わざるをえません

 一つ例を挙げましょう。ある会社でチームビルディングのイベントを実施することになり、企画メンバーとして各部門から20~60代の十数人が集められました。ところが、コンセプトを決める段階で、若手とベテランとで意見が真っ二つに分かれ、会議が紛糾してしまいました。

 ベテラン勢の親玉は60代の男性です。数の上では若手が優勢なのに、「ありえない」「理解できない」と全面否定して、耳を貸そうとしません。とうとう、多数決で決着をつけるしかないとなったときに、「そこまで言うのなら、若い人がやりたいようにやればいい。絶対に失敗するから」と捨てゼリフを残し、しぶしぶ引き下がりました。

 ところが、実際やってみると大いに盛り上がり、ベテランの親分も楽しそうに協力してくれました。「こういうやり方もいいもんだね。とても勉強になったよ」とお礼まで言われる始末。新たな経験さえ積めば、いくつになっても成長できることを実感した一件でした。

仲間の支えがあれば一歩踏み出せる

 人を変えたければ、「どうやって新しい経験をさせることができるか?」を考えるのが近道。だましたり、そそのかしたり、なだめすかしたりして……。そこで、今回ご紹介したいフレーズが「とりあえず」(ひとまず、さしあたり、一時的に)です。

NG 「○○の考え方が正しいです。あなたの言う□□は間違っています。」
OK 「とりあえず、一度試しにやってみるというのはどうでしょうか?」
OK 「理屈はともかく、ひとまず少しやってみてから考えませんか?」

 だからといって、みんなが見ている前に、船から海に投げ込むようなことは逆効果です。チーム全員が一緒に海に飛び込むから、本人も飛び込もうと思うのです。

 先日、絶叫マシンで有名な遊園地を舞台にチームビルディングの研修をやりました。数人のチームに分かれて、どれだけ怖いマシンに何人乗れるかを競い合うゲームをしたのです。

 各チームには「絶叫マシンLOVE♪」という人もいれば、「絶対無理!」という人もいます。そんな中、一人ひとりの気持ちを大切にしつつ、どれだけ難度の高いチャレンジに誘えるか、チームの力を競い合ったわけです。

 ビックリしたのは、「絶対無理!」と諦めていた人たちの大半が、最難度の絶叫マシンをクリアしたこと。「一皮むけた」「トラウマを克服した」「やればできるんだ」と自信をつけた人が続出しました。

 感想を尋ねると、「一人では無理」「仲間の支えがあったから」「山田さんがやったから私も」「みんなの期待に応えたかった」といった発言が。チームの相互作用が自己変革に一役買ったわけです。

変えられないものは受け入れよう

 こんなふうに、相手を変えようと思ったら、まず自分が変わることです。みんながそう思って、チームが先に変わることです。そうすれば、相手が変わらざるをえなくなります。

OK 「とりあえず、私があなたの言う通りにやりますから、次はあなたが私の言う通りに」
OK 「ひとまず、ここは全員で一緒にやってみるというので、どうでしょうか?」

 人は、本気で関わる人には応えようと思うもの。「私のためにそこまで……」という気持ちが相手を勇気づけるのです。皆さんは、相手を変えるためにそこまで関わる気がありますか。問われているのは、相手ではなく、皆さんの覚悟なのかもしれません。

 もし、覚悟がないのなら、現状を受け入れるしかありません。中途半端に手を出しても改善が見られず、ストレスが余計にたまるだけです。そんなときは「まあ、いいか」(それもあり、そんなこともあるよな)というフレーズを活用するようにしましょう。

NG 「なんで、田中さんはワガママなんだ。許せない!」
OK 「世の中にはワガママなやつもいるよ。まあいいか

 変えられないことに悩むのは時間とエネルギーの無駄です。自分の受け止め方を変えるしか手がありません。心の健康を保つためにも、このフレーズは重宝します。

 それに、チームの中にはいろんな考え方の人がいて、原則論を持ち出すとまとまらなくなります。ある程度は、「まあ、いいか」「それもあるよな」と認め合わないと、ギスギスした関係になってしまいます。チームの健康を保つためにも、必要なフレーズなのです。

肯定も否定もせずに受け流すのが無難

 中には、「よくない行動を認めていたら、つけあがるんじゃないか」と心配される方もいらっしゃると思います。おっしゃるとおりであり、これは自分の心の中のセリフであって、必ずしも相手に言うわけではありません。相手には毅然とした態度をとるべきです

 ただし、「それはダメだ」「そんなことは許されない」という否定はあまりお勧めできません。

 こういった問題行動は、「注目を浴びたい」「力を示したい」といった隠れた欲求が元にあります。肯定にせよ否定にせよ、こちらが反応すること自体、欲求を満たすことにつながります。味をしめて、また同じことを繰り返すかもしれないからです。

 一番よいのはとりあわないことです。反応をせずにニュートラルに受け流してしまうのです。

NG 「こんなワガママなことをやっちゃった」「ダメだよ。そんなことしては!」
OK 「こんなワガママなことをやっちゃった」「あ、そう

 こう言われると、相手はかなりショックを受け、自分を見直すキッカケになるかもしれません。こちらの心の健康にも役立ちます。なかなか、言えないかもしれませんが、とりあえず一度使ってみて、効果のほどを実感してみてはいかがでしょうか。

◇   ◇   ◇

チームの「困ったちゃん」対処法 あなたがすべき4つ(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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