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「ワケあり」全盛、人間だってワケを話せばうまくいく!?(堀 公俊)

第14回「そのワケは」 すべてのことに原因と目的がある

世の中には「ワケあり」があふれている

「海外一流ブランド品がすべて80%オフ!」

 こんな宣伝を見たら、皆さんは何を考えますか。「うさん臭いなあ……何かあるんじゃないか?」とワケを考える方が大半だと思います。

 そこで宣伝文をよく見ると、「すべて旧モデルや展示品であり、多少の傷があります」と書いてあました。「やっぱり、ワケありなんだ」となり、ストンと腹落ちした感じがします。買うにせよ買わないにせよ、ワケを考慮した上で決定します。

 モノに限らずヒトにもワケありはあります。先日、友人(男性)がある婚活パーティーに出たところ、「!」と思った人はすべてワケありだったと残念がっていました。再婚、子持ち、親の介護のどれかだというのです(自分だってワケありのクセに!)。

 学生時代に妹と二人でスキー旅行をして温泉旅館に泊まったら、ワケあり、つまり不倫のカップルと間違われたことがあります。兄妹だと訂正すると、仲居さんが「まあ、いろいろワケがおありでしょうから」とワケ知り顔でほほ笑んでいたのをよく覚えています(違うってば!)。

 私たちは、理解できないものに出合うとワケを知りたくなります。ワケが分かったときに、はじめて「なるほど」「そういうことか」と内容が腹に落ちます。それは、人間が「なぜ?」「どうして?」と意味を求める動物だからです。

 考えてもみてください。ワケも分からずモノやヒトに飛びつく人と、ワケをじっくりと吟味した上で行動する人の、どちらがよい人生が送ることができるでしょうか。私たちは、後者の方法で生き延びてきた人類の子孫です。ワケを考えることが、遺伝子の中にビルトインされているわけです。

ワケを話せばストンと腹に落ちる

 チームのコミュニケーションで大切なのは、言いたいことだけではなく、そのワケをしっかりと話すことです。思いや考えを伝えるときは、必ず「そのワケは」(なぜなら、どうしてかと言えば、事情を言えば)というフレーズを後に付け加えるようにしましょう。

NG 「今日中に仕上げほしいんだ」「ン?(なんでだろう)」
OK 「今日中に仕上げてほしいんだ。そのワケは・・・」「なるほど」

 ただし、ワケをつければ何でもよいわけではありません。よくあるのは、同じ話を繰り返すだけで、ワケになっていない説明です。言いたいことの意味が理解できなければワケになりません。

NG 「今日中に仕上げてほしいんだ。そのワケは、急いでいるから」「ン?(なんで?)」
OK 「今日中に仕上げてほしいんだ。そのワケは、お客様から催促の電話があったから」

 また、ワケを先に言ってから、思いを語る人がいますが、聞いているほうとしては何の話か分からず、イライラさせられます。言いたいことが先で、ワケは後にするのが相手への配慮です。

NG 「先ほどお客様から催促の電話あって……」「ン?(なんの話なの?)」
OK 「今日中に仕上げてほしいんだ。実は、先ほどお客様から催促の電話があって……」

原因を述べるか、目的を語るか?

 ところで、ワケを話すというのは、何を語ることなのでしょうか。

 一つは、その思いや考えに至る原因や根拠です。火のないところに煙は立たちません。物事は必ず原因が先にあって、結果が後にあります。

 つまり、「過去にどんな事件や事情があったのか?」「その思いを抱くにはどんな考えが前提としてあるのか?」、考え方の道筋を語るのがワケに他なりません。

OK 「新商品を開発しよう。そのワケは、今の商品に不具合が見つかって……」(原因)
OK 「新商品を開発しよう。なぜなら、競合から新しい商品が発売されて……」(根拠)

 もう一つは、思いや考えの目的や効用です。「何を目指しているのか?」「どんな結果を生み出すのか?」、言い分の行きつく先や、予想される未来を語るのがワケです。

OK 「新商品を開発しよう。そのワケは、もっと多くの客を取り込むには……」(目的)
OK 「新商品を開発しよう。なぜなら、新しい技術を使えば飛躍的に性能を……」(効用)

 つまり、相手が腑(ふ)に落ちない顔をしたら、過去の話か未来の話を語らないといけません。にもかかわらず、「だって、新しい商品が必要じゃないか」「たとえば、こんなふうな……」と現在の話を繰り返すから、「ワケが分からん」と言われるわけです。

言い訳なんてもう聞きたくない!

 ワケはワケでも、「言い訳」はあまり感心しません。言い訳とは、失敗の責任を逃れたり、自分に都合の悪いことを取りつくろう釈明です。

 人は、必ず「自分とはこういう人だ」「こういう人でありたい」というイメージを持っています。ところが、失敗をしたり、思うようにことが進まないと、イメージとのギャップができてしまいます。自己イメージと現実との間に矛盾が生まれてしまうわけです。

 そのときに、自分のイメージを傷つけずに、現実をねじ曲げて解釈するのが言い訳です。自分以外のもののせいにする、大したことがないと弁明する、都合のよい理由を持ち出す、といったパターンがあります。

NG 「仕事が進んでいない。そのワケは、まわりがうるさくて集中できないから」(他責)
NG 「仕事が進んでいない。なぜなら、予定通りに進まなくても大丈夫だから」(過小評価)
NG 「仕事が進んでいない。だって、みんなもできていないんだから無理だよ」(正当化)

 そんな人がいたら、現実の解釈を変えるのではなく、「あなた自身のワケをきかせてください」と自己イメージの修正を促すようにしましょう。

性格を持ち出すとワケが分からなくなる

 ワケの中でやっかいなのが、性格を理由に挙げる場合です。

 理由としてはよく分かるのですが、性格を持ち出されると、これ以上踏み込みづらくなってしまいます。今さら、大きく変えることができず、ましてや他人がどうこうできる話ではありません。

NG 「仕事が進んでいない。だって、私、要領が悪いんだもの」(性格)

 ところが、考えてみてください。なぜ、「要領が悪い」と言えるのでしょうか。先天的に脳のどこか欠陥があることを発見したのでしょうか。いついかなる場合もそうなのか、誰がどうやって確認したのでしょうか。

 言えるのは、仕事が進んでいないことが、「要領が悪い」を裏づけていることです。つまり、「要領が悪い」は「仕事が進んでいない」を具体的に説明したに過ぎません。これも、同じ話を繰り返しているだけで、ワケを説明しているわけでもないのです。

 なので、性格の話が出たら、それ以上踏み込んでも仕方なく、しっかりと受け止めてあげましょう。その上で、「どうやったら仕事が進むか?」に意識を集中したほうが得策です。そうしないと、それこそワケが分からなくなってしまいます。

OK 「要領が悪いんだね。分かるよ。だったら、どうすれば少しでも要領が良くなって、仕事が進むようになるんだろうか?」

◇   ◇   ◇

「ワケあり」全盛、人間だってワケを話せばうまくいく!?(堀 公俊)
堀 公俊(ほり・きみとし)
日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『チーム・ファシリテーション』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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