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楽天の会議、1時間から10分に短縮した即効ワザは?(堀 公俊)

第5回 読めば分かる会議資料、長々と説明する意外なワケは?

■かつての習慣が未だに残っている?

 「レクチャー」という言葉を知らない人はいないと思います。資料などを口頭で詳しく説明することです。学生時代の退屈な講義を思い出す人もいるでしょう。

 会議が長引く原因の一つは、レクチャーの時間が多いことです。説明と言いながら、実際には一言一句そのまま資料を読み上げるだけ。話すより読む時間のほうが早いので、多くの人は資料をざっと眺めた後は、退屈な時間が過ぎ去るのをじっと待つ羽目になります。

 レクチャーという言葉に対して、イントラクショナルデザインの第一人者・鈴木克明氏は、人工知能学者R.シャンク教授の次のような言葉を紹介しています(野嶋栄一郎、鈴木克明、吉田文編著『人間情報科学をeラーニング』)。

1500年代にヨーロッパの修道者が人々に本を読んでいた。「レクチャー」の語源はラテン語で「読む」を意味する。修道士達が人々に読んで聞かせたのは正しい。彼ら以外は字を読めなかったんだから。しかし、今でも教授達が壇上に立って「レクチャー」をしている-その風習は1500年代には意味のあることだったが、それをいまだにやっているという事実はほとんど狂気の沙汰だ。

 会議でもまったく同じことが言えないでしょうか。読めば分かることを、わざわざ説明するのは愚の骨頂。会議とは話し合いの場です。説明は極力省いて、議論にエネルギーを集中すべきです。

■Iメッセージを活用しよう

 とはいえ、いったん始まった説明を止めるのは簡単ではありません。「(あなたは)説明が長い」「(あなたは)あと5分で終えてください」といった、相手の行為に対するコメントでは波風が立ちます。

 そうではなく、私(I)を主語にしたIメッセージを活用しましょう。進行に関する意図を確認するのに使うのです。

「(私は)発言はどのタイミングですればよいのでしょうか?」

 うまくすれば、話が長すぎてみんながじれていることに気づき、大幅にスピードアップしてくれます。気づきにくい相手には、もう少しストレートな言い回しを使うとよいでしょう。

「一通り全部聞いてから意見を言ったほうがいいですか?」

 中には、「とてもそんなこと言えないよ……」という方もいらっしゃるかもしれません。だったら、漠然とした不安を述べる方法をお勧めします。独り言のようにつぶやくのです。

「説明はよく分かるのですが、このペースで大丈夫なんでしょうかね?」

■一瞬の隙を狙って割って入る

 話をはしょらせるテクニックは、資料説明に限らず、発言が長い人全般に使えます。ただし、話に割って入る勇気が求められます。

 話には必ず切れ目があります。立て板に水のような話でも、必ず息継ぎする瞬間があります。そこに間髪を入れず、「ちょっと、いいですか?」と割って入るのです。タイミングが重要です。

 できれば、相手に勢いがつく前に、早目に入りたいところ。「あれ、この話、長くなりそうだ……」と思った時に、すぐに確認を入れましょう。早目にクギを刺したほうが、無駄な時間を過ごさなくてすみます。

「その話は長くなりそうですか? だったら○○を先に片づけてしまいませんか?」

 それに、話が終わりそうになってから、「話が長くてみんなが迷惑しています」と言われたのでは、恥をかかせることにもなります。早目に割り込むのは、相手への思いやりでもあるのです。

 もし、一人で貧乏くじを引くのが嫌なら、みんなを巻き込んでしまうのが手です。賛同者が現れるのを期待して。

「ていねいな説明はありがたいのですが、中には早く議論に入りたい人もいるんじゃないかと……。皆さん、いかがでしょうか?」

■資料が分厚いから説明が長くなる

 そもそも、資料の説明が長くなる一番の理由は、ボリュームが多過ぎるからです。与えられた時間でとても説明できないような資料をつくってしまうから、そうなるのです。

 ですので、資料づくりのルールをつくっておけば、予防策になります。

 実際に、企業の中には「A3紙1枚」「A4紙1枚ベスト、2枚ベター、3枚マックス」などのボリュームの制限を定めているところがあります。凝った資料をつくらないよう、「社内資料はパワーポイント禁止」という会社もあります。

 もう一つ大切なのは、必ず事前に読み込んできてもらうことです。それを前提に、「会議への資料の持ち込み禁止」と定めている会社があるそうです。厳しいですね。

 そのためには、「必ず事前配布する」「席上配布は原則禁止」といった、デリバリーのルールづくりが欠かせません。一例を挙げると、資料説明が長いことに業を煮やした楽天は、「会議資料を前日までに提出する」というルール設け、1時間の会議が10分で終わるようになったそうです。

 その上で、プレゼンテーション(説明)のルールを設けるとよいでしょう。

「事前に資料をお配りしていますので、説明はお互い3分以内にしませんか?」

 先日、この話を聞いたある人が上司に提案したところ、「目上の人に向かって、自分で資料を読んでこいなんて、そんな失礼な話があるか。ちゃんと席上で説明しろ!」と大目玉をくらったそうです。日本の夜明けはいつになったら来るのでしょうか……。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
楽天の会議、1時間から10分に短縮した即効ワザは?(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 
楽天の会議、1時間から10分に短縮した即効ワザは?(堀 公俊)
著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)など多数。最新刊は『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版=写真)。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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