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ダメ会議撲滅で変える働き方

議題は2つ、新工場とコーヒー 正しい議論の順番は?(堀 公俊)

第3回 軽い話からサクサク片づけよう、それが命取りになる!

■やっぱりコーヒーはX社でないと!

 ある会社の部長会議で二つの議題が提案されました。一つは、新しくベトナムに工場を立てることの可否です。人件費高騰の折、この会社でも海外展開を検討せざるをえなくなり、新興著しいベトナムに白羽の矢が立ったわけです。

 もう一つは、本社会議室にコーヒーサーバーを設置する件です。今までサービスをしていた総務課から提案があり、業者を選定しなければなりません。さて、この会議はどうなると思いますか?

 おそらく、ベトナムの新工場の件は、ほとんど議論にならないと思います。あまりに問題が大きくて複雑だからです。とても門外漢が口を挟めるものではありません。

 「問題に詳しい人が適切に考えているんだろう」「主だった人には根回しがされているはずだ」と考え、発言を慎むようになります。特段意見が出ないままに、可決承認されることでしょう。

 反対に、コーヒーサーバーの件は、大いに盛り上がります。身近な話題だけに、誰もが気軽に意見を出せるからです。

 誰もが一過言あり、決定に貢献しようと、さまざまな意見を述べます。コーヒーのウンチクまで飛び出す、「自己アピール合戦」となります。議論百出となって、簡単には決着がつかないでしょう。

 重要な問題の議論に時間を割かず、ささいな問題ほどアンバランスに重点を置く。これを「パーキンソンの(凡俗)法則」と呼びます。「予算会議での各項目に要する時間は、その金額に反比例する」ともいわれています。

■すぐに片づくはずの話に時間を取られる

 問題はここからです。もし、二つの議案を30分でこなさないといけないとしたら、どちらから先に議論すればよいでしょうか。

 もちろん答えは、ベトナムの新工場です。「簡単に片づく」と思って、コーヒーサーバーの話を先に始めてしまうと、下手に盛り上がってしまい、予想外に時間が取られてしまうからです。

 難しい問題を後回しにしたい気持ちは分かりますが、重要なものから取りかからないと、肝心の議論ができなくなります。まさに本末転倒です。

 にもかかわらず、実際には、「すぐに片づくものをやっつけてから、後でじっくりと重要なものを……」と言い出す人が必ず現れます。それに乗っかってしまうために、いつまでたっても重要な議題がまともに議論されず、先送りになるのです。

 そういう人がいたら、間髪入れず異論を述べましょう。そうしないと、無駄な議論に時間を取られる羽目になってしまいます。

「そんなさまつなことより、大事な話から先にやりませんか?」

■重要ことにエネルギーを集中する

 では、重要な議題といったい何なのでしょうか。

 そもそも会議とは、読んで字のごとく「会って議する」場です。単なる報告・連絡よりも、審議・決定を伴う議題のほうが、目的にかなっています。他の手段でもやりようがあるテーマは、優先順位が低いと言わざるをえません。

 だからといって、即断即決できる急ぎの課題に追われると、貧乏暇なしになってしまいます。「問題解決」ではなく、「問題処理」に奔走することになりかねません。

 戦略立案、人材育成、技術開発、業務改革など、緊急度は低いものの周囲への影響度(インパクト)が高い案件は、どうしても先送りになりがちになります(「計画におけるグレシャムの法則」と呼びます)。意識的に優先順位を上げなければなりません。

 「下半期の三六協定の申請について」といった定型的な決定(ルーチンワーク)よりは、「来年度の基盤技術開発テーマの絞り込み」といった非定型的な決定(戦略的意思決定)のほうが優先されるわけです。

 「今、何が重要な課題か?」を共有してこそ本物のチームといえます。議題の順番を議論することは、チームのベクトル合わせに寄与してくれます。重要なことにエネルギーを注ぐことこそ、働き方改革の勘所だといっても過言ではありません。

■潔くバッサリと落としてしまう

 そうやって、計画的に議題をこなしていっても、予期せぬことは必ず起こります。そのせいで、たいていは時間が足りなくなります(そうならないとしたら、形だけの会議をしているのかも?)。消化しきれないと分かったら、どうするのが適切なのでしょうか。

 好ましくないのが、「残りの議題をすべて大急ぎで片づける」というものです。どれも議論が中途半端になり、参加者の不満が募るからです。「ドサクサにまぎれて強引に押し切った」と非難を浴びる恐れもあります。

 時間がない時こそ、もう一度、議題の優先順位を議論しなければなりません。重要なものに集中して、そうでないものは潔く落としてしまうのが賢い方法です。

「この中で、きょうここでどうしても決めないといけないものはどれですか?」

 扱わない議題については、「次回に先送りする」「他の審議方法を考える」「決定を他の人に委ねる」といったプロセスの代替案を合意しておきます。そうやってメリハリをつけるほうが、結果的に満足度の高い会議になります。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
議題は2つ、新工場とコーヒー 正しい議論の順番は?(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 
議題は2つ、新工場とコーヒー 正しい議論の順番は?(堀 公俊)
著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)など多数。最新刊は『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版=写真)。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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