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ダメ会議撲滅で変える働き方

ちゃんと人の話を聞けよ そう思う前にできることは?(堀 公俊)

第11回 なぜ貴社の会議は結論が出ないのか?

■人の話、ちゃんと聞いている?

 私は、あちこちで講演する機会が多いのですが、聴衆を退屈させないよう、途中で軽いエクササイズをはさむことがあります。会議改革のからみの講演でよく使うものを一つ紹介しましょう。

 「今から、あるテーマについての私の見解を披露します。皆さんは、それをしっかり聞いて、結論や主張のポイントを一文にまとめてください」。述べる時間は1分ほど。講演のプロの話を聞いてまとめるのですから、別段難しくないはずです。

 ところが、結果は興味深いものがあります。書いた文章を近くの方と見せ合うと、表現どころか、内容がまるで違ったりするのです。

 ピントはずれの人も少なからずいて、「ちゃんと人の話を聞いていたの?」と言いたくなります。私が要約した答えを述べると、「おお!」「そうだったのか」とどよめきが生まれることも。

 何が言いたいかといえば、会議で一人ひとりメモを取るのは危険である、という話です。

 人は、自分の興味で相手の話を聞いてしまいます。自分の心に響いたものだけメモして、そうでないものは落としてしまうのです。しかも、自分の枠組みで理解して、自分の言葉に変換して書くので、本人が述べた言葉とは似て非なるものになります。正しくメッセージが届かないのです。

 これを避けるには、誰かが共通のメモをつくり、都度みんなに確認してもらうしかありません。それこそが板書です。会議を「見える化」すれば、生産性は格段にアップします。

■一言一句、目と耳で確認する

 この話をすると、「何を書けばよいのですか?」とよく質問されます。

 第2回で述べた、ゴールや終了時間はもちろん、アジェンダや会議のルールなどは必ず書くようにしましょう。参加者の足並みをそろえるために大切なものであり、一つひとつ書いて確認を取るのがよい方法です。進行役が書く気配がなければ、お手伝いを申し出るようにします。

「ここに書いて確認させてもらってもいいですか?」

 議論に入ってからは、出てきた意見を拾って整理してほしいのですが、面倒といえば面倒です。だったら、最低限、結論だけでも書くようにしてはどうでしょうか。

 結論といっても大きく3種類あります。一つは、ここで決定した内容(合意点)です。

 日本の会議は結論をあいまいにしがちで、何が決まったかを確認せずに、「では、そろそろこのあたりで」となって幕を閉じることがよくあります。言葉にするのをヤボだと思っているからです。

 解釈の違いが生まれないよう、文章にして目と耳で一言一句を確認してもらうのが一番です。分からなければ、こちらから尋ねてみましょう。

「ところで、きょうは何が決まったのでしたっけ?」

結論が神棚に上がらないために

 2つ目に、合意にもとづく実行計画(アクションプラン)です。

 せっかく苦労して合意をしても、決まったことを実行しなければ、何の成果も生み出しません。役割分担や納期までキッチリつめておかないと、結局、誰も動かなくなってしまいます。

ところが、言うは易(やす)し、行うは難し。「できるだけ仕事を増やしたくない」という心理が働き、触れずに終わらせようとしてしまいます。誰か他の人がやってくれるだろうと期待して。

 ここは、誰かが勇気を持って、実行プランまでつくっておくことを、言い出すしかありません。「あえて」というフレーズを添えて。

「絵に描いた餅にならないよう、あえて誰がいつまでに何をするかを決めておきませんか?」

 正論を言われたら、うやむやにしてお茶を濁そうと思っていた人も逃げられなくなります。自分の担当を書かれたら、受け入れざるをえなくなります。オープンにすることが、言いっぱなしで終わらせないための特効薬です。

■プレッシャーをかければ結論は出る

 3つ目に書いて確認してほしいのが、次回に向けてのプロセスの合意点です。

 会議の成果は、決まった話だけではありません。「決まらなかった」というのも結論の一つであり、それも確かめておかなければなりません。「今後どう詰めていくのか?」も考えておく必要があります。次回のスケジュールや進め方はもちろんのこと、その間に課す宿題を決めておきましょう。

 特に、対立があるときは、いったん持ち帰って検討することが重要となります。多少なりとも、相手に歩み寄る提案が出てくることが期待できるからです。

「◇◇については合意できなかったので、次回までに○○を各職場で検討した上で、新たな提案を事前にメールで共有しておくことにしませんか?」

 ときには、散々議論したにもかかわらず、結論が出ずに物別れに終わる場合もあります。みんな忙しい中、無理をして集まったのに、何も決められず先送りに……。疲れがドッと出る瞬間です。

 そんな時でも、安易に諦めず、それで本当によいか問いかけてみましょう。結論に向けて、もうひと頑張りしようという活力が生まれてきます。

「せっかく集まったのに、このまま何も決まらなくて本当にいいのですか?」

 この言葉がキッカケとなって、「分かったよ。じゃあこの件は○○でいいよ」と折れてくれる人が出ないとも限りません。「ここまでの苦労を無駄にしたくない」という心理が決断を引き出すからです。交渉でもよく使うテクニックであり、覚えておいて損はありません。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
ちゃんと人の話を聞けよ そう思う前にできることは?(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
ちゃんと人の話を聞けよ そう思う前にできることは?(堀 公俊)
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)など多数。最新刊は『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版=写真)。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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