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会議の進行役に向く人の見分け方 なぜ彼は上手なのか(堀 公俊)

第6回 ファシリテーターの意外な共通点、ご存じですか?

■ファシリテーターが持つ意外な共通点

 会議に関する講演や研修をすると、「どんな人がファシリテーター(進行役)に向いていますか?」という質問を受けることがあります。今まで1万人以上を指導してきましたが、確かに向き不向きがあるのも事実です。

 たとえば、私が所属する日本ファシリテーション協会の会員(約1600人)には不思議な共通点があります。それもファシリテーションに興味を持つはるか以前の。何だか分かりますか?

 ほとんどみんな、学級(クラス)委員長の経験者なのです。生徒会の役員をやった方も、一般の組織よりはるかに多く見受けられます。

 ホームルームがうまく進められなかったトラウマなのか、仕切り屋さんが多いのか、はたまた損な役回りを引き受ける奇特な人たちなのか……。理由は分かりませんが、元学級委員長という人がいたら、それだけでファシリテーターに向いているのかもしれません。

 真面目に条件をひとつ挙げるとしたら、「言葉をていねいに扱える人」です。

 そもそも、議論というのは、考えが違う人同士が問題解決をするためにやる行為です。それを「力」(暴力や権力)ではなく、「言葉」で解決するところに最大の特徴があります。

 言い換えると、議論とは言葉と言葉の闘いです。しかも、言葉と論理は一体のものです。それを舵取りするファシリテーターが、言葉をうまく使えなかったらどうしようもありません。

■そもそも、その話の前提は何か?

 たとえば、ある人の意見に対して、「え? 何それ?」「サッパリ、分からん」と全員の頭に疑問符が点灯したとしましょう。どんなフレーズを投げかければ、「分かる」ようになるでしょうか。

 「分かる」にもいろいろあります。一つは、「前提(文脈)が分かる」と分かりやすくなります。

 たとえば、「働き方改革に力を入れるべきだ」と言われても、論点は何で、それと今の議題とどう関わりがあるものなのか。論点とのつながりが分からないと、頭がついていけません。

「スミマセン。それは、何についてのお話なのでしょうか?」

 何が発端でこの言葉が生まれたのか、そこからどういう経緯で世の中に広まっていったか、今社会でどんな取り組みがなされているのか……。提案の背景も分からないと、意味が分かりません。

 中でも重要な前提が「目的」です。何のためにそれを主張するのか、それによって何を達成しようとするのか。そこが違えば受け取る意味も違ってきます。

「よかったら、今回のご意見の背景や目的を聞かせていただけませんか?」

 加えて、言葉の定義というのも大切な前提の一つです。

 人によって、言葉に込める意味が違うからです。言葉の意味が分からないと、主張を正しく理解できません。言葉を疎かにすると議論が深まっていきません。特に、「働き方改革」のようなはやり言葉(バズワード)や概念的なビジネス用語は注意が必要です。

「○○という言葉は、たとえば、どういう意味で使っていらっしゃいますか?」

■抽象度を動かすと分かりやすくなる

 2つ目に、「内容が分かる」です。そのために大切なのが「抽象度を動かす」ことです。

 たとえば、話が長すぎて(=具体的すぎて)「分からない」と言われたら、エッセンスをコンパクトに圧縮して言い直すと分かりやすくなります。これを抽象化と呼びます。

「要するに、一言で述べると何なのでしょうか?」
「つまり、○○したい、ということですね?」

 逆に、話が短すぎて(抽象的すぎて)「分からない」と言われたら、事例、経験談、比喩などを挙げて、イメージしやすくしましょう。これを具体化と呼びます。

「たとえば、どんなことを進めていきたいのですか?」
「一例を挙げれば、△△というお話と理解してよろしいですか?」

 同じレベルで何度説明しても、分かりにくいものは分かりにくいまま。抽象と具体を言ったり来たりすることで、伝えたいものが見えてくるようになります。先ほど述べた言葉の意味も、抽象度を動かすことで意味がハッキリしてきます。

■誰もが理解できるワケをそろえる

 さらに、3つ目に、「筋道が分かる」があります。当人がどのように考えてそこに至ったのか、ワケ(理由、根拠、原因など)が分からないと理解できません。

 たとえば、「働き方改革をやるべきだ」という考えを得るには、「○○という社員の声がある」「ライバルもやっている」「社会全体で□□と言う動きがある」といったよりどころがあるはずです。筋道を説明して初めて、言っていることの意味が分かります。論理を明らかにして初めて、まともな議論ができるようになります。

 ところが、自分の考えを主張するのに夢中になると、ついワケを説明するのが疎かになってしまいます。当たり前だと思って省く人もいます。「ン?」と思ったら、すかさず尋ねてみましょう。

「なぜそう思うのか、ワケ(理由、根拠)を聞かせてもらえませんか?」

 ただし、ワケは何でもよいわけではありません。万人に受け入れられる、客観的なもののほうが通りやすいです。「本当に起こったこと」(事実、データ、現物など)や「いつも起こること」(原理、法則、パターンなど)が望ましくなります。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
会議の進行役に向く人の見分け方 なぜ彼は上手なのか(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 
会議の進行役に向く人の見分け方 なぜ彼は上手なのか(堀 公俊)
著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)など多数。最新刊は『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版=写真)。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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