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ダメ会議撲滅で変える働き方

会議室のレイアウトでわかる良い会社・ダメな会社(堀 公俊)

第4回 そもそも、みんなでガッツリと議論する気ありますか?

■あなたの会社はどちらのタイプ?

 私は仕事柄、いろんな会社の会議室を使う機会が多くあります。会議室を見るだけで、普段どんな話し合いがなされ、どんな社風の企業か、おおよそ想像がつきます。

 典型的なのが役員会議室です。よくあるのが、大きなロ(コ)の字型にレイアウトされた部屋です。それに対して、一つのテーブルを全員で囲むタイプの部屋もあります。どちらのほうが、活発な議論が展開されていると思いますか。

 どちらかと言えば、前者は根回し済みの案件を「ご異議のある方はいらっしゃいますか?」と粛々と承認していく、形式的な話し合いになりがちです。実質的な審議は、常務会や戦略会議といった少人数の場でなされており、役員会ではあまり異論を出してほしくないのです。

 それに対して後者は、少なくともカタチの上では「ガッツリ議論しよう」という意図が感じられます。互いの距離が近いので意見が出しやすく、一つのテーブルを囲むことから、一体感が醸成しやすくなります。テーブルが円形だと、役員一人ひとりが対等な立場であることが演出できます。

 さて、皆さんの会社の役員会議室は、どちらのタイプでしょうか。ちなみに、ホワイトハウスの閣議の部屋は後者のタイプです。日本の閣議は……よかったらネットで調べてみてください。

■ひと手間加えるだけで全然違う

 会議をやっても活発に意見が出ず、なかなか盛り上がらない。原因はいろいろ考えられますが、机や椅子のレイアウトを変えるのが、誰もができる手っ取り早い対策です。

 私たちの気分は環境に大きく影響を受けます。分かりやすいのが、話す相手との距離です。近いほうが親密に話しやすく、込み入った内容でもやりとりができます。逆に、遠いと話しづらくなり、タテマエや社交的な話になりがちです。

 身近で経験するのが、ホテルの披露宴や高級な中華料理店の大きな円卓です。せいぜい両隣の人としか話ができず、会話に花が咲きません。子どもが大きくなったので、食卓を大きなものに買い換えたら家族の会話が減った、という笑えない話もあります。

 日本の会議室では、部屋一杯の「ロの字型」で机と椅子が配置されているケースが大半です。そのまま使うと、活発な話し合いになりにくくなります。

 煩わしくても、ロの字の各辺を縮めて距離を近づけるようにしましょう。机を2、3台寄せ集めてラウンドテーブルにするのもよい方法です。

「何となく話しにくいですね。もう少し机を近づけて話をしませんか?」

 いっそのこと、机をなくして椅子だけでやる手もあります。腹を割るには、腹を見せるのが一番。机という、物理的にも心理的にも自分を守るガード役をなくせば、ホンネが出しやすくなります。

■全員が一言ずつ話をしてから本題に入る

 加えて、いきなり議論に入るのではなく、軽く場を暖めてから始めれば、意見が出やすくなります。たとえば、私が所属するNPO法人「日本ファシリテーション協会」では、どんな会議だろうが必ず「チェックイン」から始めます。

 話し合いを始める前に、ウォーミングアップを兼ねて、一人一言(30秒程度)ずつ参加者全員が語るのです。テーマは、「今の気分」「今日の期待」「気になっていること」など。一人が語り終わったら、全員で拍手をして、歓迎の気持ちを表すのも習わしとなっています。

「一人ずつ順番に、今日の会議の意気込みを語っていきませんか?」

 一言話をするだけで、緊張が少し和らぎます。みんなに受け入れられると、この場が安心・安全であることが感じられます。一人ひとりの心の中にあるものを知っておけば、発言の裏にある本心を見つけるのに役立ちます。

 結果的に、後の議論がスムーズに進みやすくなります。自分の感情を表すことへのためらいが減り、ホンネが出しやすくなります。活気ある話し合いの場をつくるのに貢献するわけです。

■議事が終わってからホンネが出る

 あわせて、会議が終わった時は、「チェックアウト」をして締めくくります。「今の気持ち」「今日の感想」「言い残したこと」などを、やはり一人一言ずつ順番に語っていくのです。

「まだ少し時間があるので、最後に一言ずつ今日の会議の感想を述べていきませんか?」

 皆さんは、モヤモヤしたままで終わる会議を経験したことはないでしょうか。言いたいことが十分に言えなかった、結論に反対ではないが何か引っかかるものがある、進め方に違和感を覚えた……。そんな残尿感のある会議です。

 進行役も同じ空気を感じているものの、今さらやり直すわけにもいきません。気づかないふりをして会議の幕を閉じ、部屋を出てから愚痴を耳にすることになります。

 だったら、会議を終える前に気持ちを吐き出してみるのが得策です。議事が終わってからの発言なので、何でも気楽に話せます。今回の議事には生かせなくても、次の会議で考慮することができます。ホンネが出にくい日本の会議では、議事が終わってからの発言というは、案外重要なものです。

 「モヤモヤしている」という気持ちを披露するだけでも、多少スッキリします。理由まで語ってもらえばさらに良し。みんなが気持ちを受け止めてくれれば、納得感がアップします。チェックインとチェックアウトを習慣化することをお勧めします。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
会議室のレイアウトでわかる良い会社・ダメな会社(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 
会議室のレイアウトでわかる良い会社・ダメな会社(堀 公俊)
著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)など多数。最新刊は『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版=写真)。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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