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フレームワークで働き方改革!

PDCAはこう使え 大人が子どもにゲームで勝てないワケ(堀 公俊)

第5回 継続的に仕事を改善する「PDCA」

計画して管理するのがマネジメント

 マシュマロタワーというゲームをご存じでしょうか。4人1組になり、乾麺パスタ(20本)、マスキングテープ(90cm)、ひも (90cm)、マシュマロ(1個)、はさみ(1個)を使って、できるだけ高い自立したタワーをつくるゲームです。
 ただし、タワーのてっぺんに必ずマシュマロを乗せないといけません。制限時間は、検討を含めて18分です。皆さんなら、どんな作戦で臨むでしょうか。

 このゲームをいろんな場で試したところ、大人と子どもではやり方が違うことに気づきました。

 大人は、全体の構造をデザインするのにたっぷり時間をかけます。それが終わると大まかな役割分担を決めます。残り時間半分くらいから一気に製作に入り、各自作業に没頭します。大抵は制限時間ギリギリになってタワーができあがります。

 それに対して多くの子どもは、スタートするやいなや、一人ひとり勝手にタワーをつくり出します。すぐに行きづまるものもあれば、それなりにでき上がるものも。望みのありそうな案をみんなでワイワイと加勢しながら、何度もつくり直していきます。かなり無駄の多い進め方です。

 要するに、大人は「計画して管理する」というマネジメントの基本が叩きこまれているわけです。そのおかげで、与えられた資源をフルに活用して、効率的に仕事が進められます。

愚直に粘り強く回し続ける

 今回ご紹介する「PDCA」は、まさにそのためのフレームワークです。元々、品質を改善する方法として考え出され、提唱者の名前から「デミングサイクル」とも呼びます。

(Plan) :目標や方針を明らかにして、実現可能な実行計画に落とし込む
(Do) :計画に従って着実に実行しながら、計画の進捗度合いを測る
(Check) :成果の達成度ややり方を評価し、成功や失敗の要因を分析する
(Action) :改善や修正を施し、反省点を次の計画にフィードバックする

 このサイクルは、1度回して終わりではありません。何度も繰り返し回す中で、継続的に仕事が改善されていきます。愚直に粘り強く何度も回し続けられる組織だけが、真の成果を得ることができます。

PDCAはこう使え 大人が子どもにゲームで勝てないワケ(堀 公俊)

こんな失敗をやらかしたことはありませんか?

 PDCAはマネジメントの基本にもかかわらず、使いこなせていない人が多く見受けられます。陥りやすい失敗を解説しておきますので、自分の経験を振り返ってみてください。

 Pで典型的なのが、「忙しくて計画をつくる暇がない」といって、やみくもに実行する人です。そんな場当たり的なことをするから、忙しくなるのです。つくっても、目標や計画が曖昧だったり、メンバーで共有されていないために、うまく回らないこともあります。

 逆に、Dでは、計画をつくったところで満足してしまい、実行する気が失せてしまう人がいます。おおよそできたところで、実行を止めてしまうのも同じです。「仏作って魂入れず」では、せっかくのプランが絵に描いた餅になってしまいます。

 一方、Cで多いのが、やることで達成感を味わい、検証も評価もしない人です。目標や計画が曖昧で、事後になって評価できないことが分かる場合もあります。原因追究が責任追及になって、合理的な分析ができなくなるケースも。

 最後のAでいえば、こだわりが強すぎて、やり方を変えようとしないケースが散見されます。これでは失敗や反省が次に活かされません。やり方を改善せずにガンバリズムに陥ったり、上っ面をなでたりするだけの改善策でお茶を濁した、というのもよくみられる症状です。

PDCAは今や時代遅れか?

 あわせて、「PDCA」は万能ではない、ということも頭に入れておきましょう。

 実は、マシュマロタワーで、大人が子どもに勝つのは至難の技。それどころか、大半の大人たちはタワーを立てることすらできません。

 最大の誤りは、制限時間ギリギリになってマシュマロを頂上に乗せること。予想外のマシュマロの重さに気がついたところで後の祭り。間違った方向に全力で走ってきたことに気がつくのです。

 その点、子どもは早い段階から失敗を繰り返し、思考錯誤で正解を探していきます。やっているうちにアイデアがひらめくと、考える前に手が動きます。こういう状況では、あえて計画も管理もしないほうが適応的だと言わざるをえません。

 今のビジネス環境は、目まぐるしく変化しており、想定外の事態が頻繁に起こります。そんな中、既存の情報を元にした計画や管理に縛られると、臨機応変に動けなくなります。

 そう考えたアメリカ空軍は「OODA」(Observe:観察、Orient:情勢判断、Decide:決定、Act:実行)という新しいフレームワークを提唱しています。詳しく知りたい方は、田中靖浩「米軍式 人を動かすマネジメント」(日本経済新聞出版社)をご一読ください。

 だからといって、PDCAは役に立たないわけではありません。弱点を知った上で、「計画にこだわらない」「管理しすぎない」「分析過多に陥らない」ようにすればよいのです。これからの時代、サイクルを回すスピードを上げることが、PDCAを使いこなすための勘所となります。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
PDCAはこう使え 大人が子どもにゲームで勝てないワケ(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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