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フレームワークで働き方改革!

仕事の効率を高める働き方 完璧なプレゼン資料は不要(堀 公俊)

第9回 選択と集中に役立つ「パレートの法則」

え、まったくやっていないの!

 ある年の夏休みに我が家で起こった事件です。休みも残すところあと一週間。そんなときになって、当時小学生の娘が、夏休みの宿題にまったく手をつけていないことが判明しました。ドリル、絵日記、工作、お絵描き、自由研究など、そこから普通に取りかかって、とても間に合うボリュームではありません。
 事の重大さに気がついた娘は、あわてて得意なお絵描きから取り掛かろうとしています。皆さんが親なら、こんな時にどんなアドバイスをするでしょうか。

 私は娘に2つの質問をしました。一つは「この中で、始業式に持っていかないといけないものはどれ?」、もう一つは「この中で、あなたでないとできないものはどれ?」です。

 その上で、「両方に該当するものから始める」「それ以外のものは別の方法考える」(新学期に入ってからやる、提出期限の先延ばしをする、友人や親が手伝うなど)ことを指示しました。

 そのかいもあり、未曾有の難局を家族の総力を結集して乗り切ることができました。私がつくった工作なんて、なかなかの出来栄えで、先生からおほめの言葉をいただいたくらいです。

こういうやり方を「要領がよい」といいます。要領を辞書で引くと、「物事の主要な部分。要点」(『大辞林』三省堂)と書かれています。

 重要なものに力を注ぎ、重要でないものは手を抜く。それによって、物事を効率的に処理することです。ビジネス用語でいえば「選択と集中」が、要領を良くするために欠かせません。

どこに資源を集中すべきか?

 真面目さを尊ぶ日本社会では、「要領がよい」という言葉を、ネガティブにとらえる人がいます。「ずるい」「ちゃっかりしている」というイメージを持つのです。

 そういう面がないとはいえませんが、やっかみ半分の負け犬の遠ぼえに聞こえてしまいます。「パレートの法則」を頭に入れて、要領のよい働き方を身につけていきましょう。

 全体の大部分は一部の要素が生み出しています。たとえば、売上高の多い順に顧客を並べてみると、上位20%の顧客で総売上の80%を占めていることがよくあります。

 同じように、販売員を販売額順で並べてみると、やはり上位20%の人が、全体の80%の販売を担っていることもあります。このように、「上位20%が全体の80%を占める」現象を、発見した経済学者V.パレートの名前をつけてこう呼びます。

 それなら、上位20%に資源を集中すれば、要領よく物事が進められます。顧客と売り上げの話で言えば、上位20%の顧客への営業活動にできるだけ時間を割くようにするのです。

仕事の効率を高める働き方 完璧なプレゼン資料は不要(堀 公俊)

ソコソコの完成度で止めておく手もある

 私たちが日々行っている仕事においてもパレートの法則が成り立ちます。

 たとえば、2割の重要な仕事があなたの成果の8割を占めているはず。さまつなものは後回しにして、重要な2割に力を注がないと、十分な成果を得ることができません。

 「仕事の重要度」「かける時間」の2軸マトリクスで分析して、適切なバランスになっているか、チェックしてみてはいかがでしょうか。

 会議でもそうです。たくさん議題があっても、重要なものはせいぜい2割くらい。後の8割は、集まって話し合う必要もない話題かもしれません。議題を整理することで、かなりの時間が節約できます。

 一つの仕事の中にもパレートの法則が生きてきます。

 たとえば、プレゼン資料をつくるとしましょう。内容さえ決まっていれば、ラフに骨組みをつくるのは、それほど手間はかからないはず。

 時間をとるのは、デザインに凝ったり、図表をつくったりして、見栄えのする資料に仕上げるところです。完成度をソコソコで止めておけば、多くの時間が節約できます。

安易に切り捨てると痛い目に遭う

 ただし、「残り80%は不要である」という話ではありません。あくまでも、「偏りがある」といっているのに過ぎず、重要度が低い80%に意味がないわけではありません。

 たとえば、ネット販売の分野では、売り上げへの貢献度が低い下位の80%を丹念にかき集めることで、全体の50%の売上を達成している企業があります。「ロングテール」と呼ばれる戦略です。

 効率を最優先にして、お得意さんばかり相手にしていたら、新しい顧客や商品を育てられなくなります。寄与は低くても、売上や利益以外の目に見えない貢献をしている場合もあります。

 また、「神は細部に宿る」という言葉もあります。どんな仕事だろうが、細かいにこだわり、とことん完成度を上げるべく努力するのが、プロのプロたるゆえんです。

 パレートの法則の派生形に「2-6-2の法則」というのがあります。働きアリを調べると、よく働く:20%、普通:60%、さぼり:20%に分かれる、というものです。

 ところが、さぼりを除いても、さぼりや働き者だけ集めても、やはり2-6-2に分かれるそうです。怠け者には怠け者なりの役割があることを示唆しています。

 パレートの法則は、あくまでも現象を表すものです。そこからどんなやり方を導くかは、私たちにかかっています。フレームワークを使いこなす力量が求められるのです。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
仕事の効率を高める働き方 完璧なプレゼン資料は不要(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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