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フレームワークで働き方改革!

効果てきめん、「仕事のムダを一掃する」4つの視点(堀 公俊)

第3回 効果的に業務を改善する「ECRS」

■成果の出る組織と出ない組織の違い

 大半の企業には、従業員からの(改善)提案制度が設けられています。自ら考え工夫する社員をつくり、会社の衆知を集めるための優れた仕組みです。日本企業の競争力の源泉の一つになっているといっても過言ではありません。
 ところで、皆さんは、年間にどれくらいの件数を提案していますか。同じ制度を持っていても、企業によって実績に大きな開きがあるのをご存じでしょうか。

 日本HR協会が調べた「一人当たり改善・提案件数」(2015年)をよると、一番多いのが三菱重工業・総合研究所(高砂)の年間195件でした。

 2位以下には、宇部興産、三菱電機、日本冶金工業と100件台が並んでいます。これらの会社では、なんと2日に1件のハイペースで提案している計算になります。とても常人ではまねできない芸当です。

 私は、コンサルタントという仕事柄、いろんな企業の台所事情に触れる機会が多くあります。経営学の知見が広く浸透した現在、うまくいっている会社もそうでない会社も、使っている経営手法やマネジメントツールに目立った差があるわけではありません。

 しかし、大きく違うことが2つあります。一つは、スピードです。目まぐるしい環境の変化の中で、同じことをするなら、速くやったほうが勝ちです。グズグズしているうちに、チャンスは手の中からこぼれてしまいます。スピードは価値の源泉です。

 もう一つは、どれだけ徹底して本気でやるかです。同じ提案制度を導入していても、100件出す企業と1件しか出さない企業では、業績に差があって当然です。

■業務のムダを徹底的に洗い出す

 働き方改革に限らず、会社を経営するのに魔法はありません。努力と智恵の積み重ねで、一歩一歩着実に進んでいくしかありません。

 たとえば、業務の生産性を上げたいのなら、とくかく改善ポイントをたくさん見つけることです。乾いた雑巾を絞るようにして、時間、行動、お金、仕組み、プロセス、情報、コミュニケーションのムダを徹底的に洗い出す必要があります。

効果てきめん、「仕事のムダを一掃する」4つの視点(堀 公俊)

 といっても、行き当たりばったりでは効率が悪いです。業務を改善する代表的な切り口があります。それが、今回紹介する「ECRS」です。「排除」「統合」「交換」「簡素」の英語の頭文字を取ったものです。

■改善効果が高い順に考えていく

 この中で、最も改善効果が高いのが「排除」です。余分な仕事、機能、手順を止められないか、重要でない仕事や作業がなくせないかを考えるのです。過剰な決定基準や条件をはずすのもよい方法です。全体の足かせになっているボトルネックや阻害要因をなくすという手もあります。

 次に、考えるべきは「統合」です。重複している機能を1つにまとめる、分業をやめて仕事を一本化する、仕事や発注の単位を大きくする、バラバラな情報を統合して共有する、といったことを検討していきます。

 さらに、「交換」を考えてみましょう。今の仕事を別のやり方に置き換えられないかを検討します。時間、場所、担当者を替えたり、取引先や発注先を替えたり……。仕事を外に出すアウトソーシングも交換の一つです。

 そして、最後に考えるのが「簡素」です。時間、工程、ルートなどを短くする、仕事や手順を簡略化する、仕様、デザイン、包装を減らすといった取り組みになります。間接的なものを直接的なものに変えるのでも効果があります。

 このように、ECRSは、改善効果が高い順に並んでいます。この順番でアイデアを出すのが効率的となります。

■ツケをよそに回すだけでは意味がない

 最後にECRSを使う際の落とし穴を紹介しておきましょう。

 ECRSは働き方改革に欠かせない強力なフレームワークですが、4つの切り口を当てはめても、なかなか改善点が見つからないことがあります。今の仕事のやり方に慣れ親しんでしまい、常識(当たり前)になっているからです。

 そんな時は、仕事の原点に立ち返り、ゼロベースで考えることが大切です。「それは何のためにやっているのか?」「本当にそれが要るのか?」「他の方法ではできないのか?」を問いかけることが大きな改善に結びつきます。

 もう一つよくやる失敗が、部分最適の思考に陥ることです。

 たとえば、ある部署が自分の都合だけで「こんな面倒な手続きは止めてしまえ」と排除すれば、他の部署に負担がかかるかもしれません。手続きをなくしたことで、ミスが増える恐れもあります。これでは元も子もありません。

 必ず、仕事の全体プロセスを見ながら、全体最適かつ長期的な視点に立って改善を考えなければいけません。ツケをよそに回すだけにならないよう、十分に気をつけてください。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
効果てきめん、「仕事のムダを一掃する」4つの視点(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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