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フレームワークで働き方改革!

上司とのミゾを埋めたいあなた! 第一歩はここから(堀 公俊)

第4回 チームの関係性を高める「ジョハリの窓」

■30年連れ添っても分からないことがある

 「あなたに私の何が分かるの!」
 「お前こそ俺の何が分かるんだ!」
 テレビドラマなどで、夫婦(恋人同士)が言い争いをするときに、よく飛び出すセリフです。
 実際に夫婦げんかで思わず口にしてしまい、気まずい思いをした方もいらっしゃるかもしれません。口には出さなくても、心の中でこう叫んだ経験は誰にもあるのではないでしょうか。

 筆者は、今年めでたく結婚30周年を迎えました。結婚当初に比べれば、趣味嗜好から行動パターンなど、「私が分かっている」「相手も分かっている」ことがかなり増えました。

 それでも、妻に話をしていないことがまだまだあります。例を挙げるとバレてしまうので書けませんが、あえて告げていないことや、恥ずかしくて言えない話もあります。「私が分かっている」「相手が分からない」ことがあるのです。

 おそらく妻のほうもそうでしょう。今の私が妻からどう見えているかも、最近は尋ねたことがありません。「私が分からない」「相手が分かっている」ことがあるはずです。

 さらに言えば、「私が分からない」「相手も分からない」こともあります。たとえば、歳を取るにつれ、どのように嗜好や性格が変わっていくのか、お互いに想像がつきません。

■自己開示とフィードバックを繰り返す

 「私が分かっている」「相手も分かっている」ことが増えれば増えるほど、関係は深くなります。

 そのためには、「私が分かっている」「相手が分からない」ことを、できる限りオープンにすることです。思い切って自分の扉を開いて(自己開示して)みるのです。

 それと同時に、「私が分からない」「相手が分かっている」ことを伝えて(フィードバックして)もらいましょう。それを素直に受け止めれば、さらに関係は深くなります。

 そうやって、自己開示とフィードバックを繰り返せば、相互理解が深まると同時に、未知の自分がどんどん開発されていくわけです。これがJ・ルフトとH・イングラムが考案した「ジョハリの窓」です。

上司とのミゾを埋めたいあなた! 第一歩はここから(堀 公俊)

■部門の壁を打ち破る第一歩として

 働き方改革というと、どうしても労働時間削減や人材活用など、個人の働き方に注目しがちです。もう一つ忘れてならないのは、チーム(組織)の力を向上させることです。

 団体スポーツの例を見るまでもなく、いくら個人が頑張っても、個人と個人がうまく結びつかないとチームとして成果になりません。チームワークが大きな鍵を握っているのです。

 一つ例を挙げましょう。大きな会社ともなると、どうしてもセクショナリズムがはびこり、自部署中心で物事を考えがちになります。営業部は営業部の都合を言い立て、人事部は人事部の論理を展開する。いわゆる「部門の壁」(サイロ)ができてしまうのです。

 そんな時に「相手の立場に立て」「全体最適で考えろ」と叫んでも聞く耳を持ちません。それこそ、冒頭で紹介した台詞が飛び出すだけです。まずは、互いが相手をどう理解しているか、ジョハリの窓を使って対話してみるのが近道です。

 たとえば、営業部は「人事部についてどう思っているか?」をフィードバックし、同時に「人事部からどう思われていると思っているか?」を自己開示します。すると、知らなかった話や思い違いがたくさんあり、互いに相手のことが分かっていなかったことに気づきます。

 相互理解が深まれば、一緒に頑張ろうという気持ちが芽生えてきます。部門の壁を打ち破り、チームの結束を高めるのに役立つのです。

■上司と部下の関係性を高めるエクササイズ

 この話は上司と部下の関係でも同じです。ジョハリの窓を応用した「リーダーズ・インテグレーション」と呼ばれるエクササイズを紹介しましょう。

 チームのメンバーを全員集め、いったんリーダーに席をはずしてもらった上で、以下の項目を順番に出していきます。それをホワイトボードなどに記録してきます。

(1)チームがリーダーについて知っていること
(2)チームがリーダーについて知らない(知りたい)こと
(3)チームがリーダーに分かってほしい(期待する)こと
(4)チームがリーダーに対して貢献できること

 それが終わったら、今度はチームが席をはずし、リーダーに戻ってきてもらって、記録を眺めてもらいます。心の準備が終わったら、チームを呼び戻して、内容に順番に答えていきます。

 ただし、答えたくないところがあれば、パスしてかまいません。リーダーがチームに対する約束があれば、その場で宣言をします。最後に感想を発表してもらい、みんなで分かち合います。

 これが成功するどうかは、いかにリーダーが自分の扉を開くかにかかっています。率直に答えれば両者の距離はグッと近づき、チームの一体感は大いに高まります。

 人材の多様化が進む中、飲み会では部門の壁も上司と部下の壁も打ち破れません。アルコール抜きで「気楽にまじめに話す場」が求められており、勇気のある方はぜひお試しあれ。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
上司とのミゾを埋めたいあなた! 第一歩はここから(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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