若手を生かす再生エネのテスHD、27歳で女性管理職も

2024.1.16
日経ビジネススクール

日経の人材開発コラム
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テスホールディングス人事部門の松本さん(左)と川島さん

太陽光発電など再生可能エネルギーや省エネルギー施設の建設や保守・運営を手掛けるテスホールディングス(TESS HD)。注目のグリーントランスフォーメーション(GX)銘柄企業として高成長を遂げている。ただ建設分野は人材確保が一段と厳しくなっている。どのように人材を確保、育成してゆくのか。同社人財戦略本部副本部長の松本大樹さんと同人財開発チーム長の川島愛那さんに聞いた。

チャレンジ人材育成へ教育費1人8万円


 

――人的資本経営が迫られる中、人材育成に力を入れていますが、目指す人材像とはどのような姿でしょうか。

松本さん 一言でいえば、チャレンジングな人材です。当社グループは第1次、第2次石油危機の時代背景のもと、省エネルギー分野に特化したエンジニアリング企業として1979年に創業しました。大阪で誕生した独立系の小さな会社から始まり、コージェネレーションなど省エネから太陽光発電、バイオマス発電の再エネなど次々新たな事業領域に挑戦して、成長してきました。現在も「脱炭素のリーディングカンパニー」を目指し、顧客に向けてエネルギーの総合ソリューションを提供しつつ、新たな脱炭素分野にチャレンジしていくため何事にも積極的な人材を求めています。

現在、TESSグループ連結の従業員は約370人であり、2030年までに教育投資額を1人当たり年間8万円にまで引き上げて人材育成等に力を入れてゆきます。社員の自由な発想を大事にして、若手人材もどんどん管理職などマネジメントに抜てきしています。


――創業して40年を超え、中高年の社員も多いと思いますが、若手の管理職も少なくないのですか。

川島さん 例えば、私の場合は、24歳でこの会社に転職してきて、27歳で管理職に登用してもらいました。8人のチームメンバーのほとんどが私よりも年齢は上の方です。戸惑いはありましたが、チームメンバーとは、年齢に関係なく、仲間として一緒に頑張っていくという考えで常に取り組んでいます。

松本さん 彼女の場合、やる気があり、人材採用面で能力を発揮し、実績を上げたので抜てきされたわけです。もちろんこれは一例であって、営業やエンジニアリングの分野でも、若くても能力を発揮し実績を上げている社員も多く、将来を嘱望され、管理職に登用されるケースも少なくありません。

川島さんは27歳で管理職に抜てきされた

女性取締役が課題を洗い出し、ESG経営推進


 

――ダイバーシティ経営も重視されるなか、日本のメーカーの女性幹部の比率が低いことが課題となっています。女性の社員や管理職の比率は高いのですか。

松本さん グループの女性社員の比率は20.1%で女性管理職比率はまだ3.7%にとどまっています。やはりエンジニアリング会社なので、どうしても男性技術職の比率が高いのです。しかし、2030年には女性社員・管理職比をそれぞれ30%以上、10%以上に引き上げたいと考えています。


――いまだに建設関連は男社会です。どのようにして女性の人材を育てていくのでしょうか。

川島さん 女性が働きやすい環境についても大きく改善しています。2022年に女性活躍推進・ESG(環境・社会・企業統治)担当に女性取締役が就任し人材の多様性や気候変動への対応といったESGに関する活動を進めています。全女性社員や男性管理職との1on1を開始し、積極的に課題を洗い出して、各部署と課題解決に向けた検討を行ったり、ステークホルダー・ダイアログで社外の有識者の意見を伺うなど、ESG経営の実現に向けた取り組みを精力的に推進しています。

当社は少数精鋭が故に一人一人が担う役割が非常に大きいため、出産・育児などのライフイベントのための休暇の取得実績はあったのですが、総合職の取得実績はまだまだ少ないのが実情でした。実際に同僚の女性管理職とも、よく「本当に大丈夫かな」という話をしていました。今はESGに対する取り組みの影響もあって、社内の雰囲気も社員の意識も変わりつつあるので、女性管理職でも産休を経て無事に出産、現在は復職し、育児と両立しながら働いている実績も出てきました。ベビーシッター利用支援制度も整うなど、育児しながら働ける環境になっています。

長期研修実施、マネジャーを2倍強に増強へ


 

――次世代リーダー人材はどのように教育していますか。

松本さん 次世代のリーダーには、当社グループが重視している「現場力」と「知識力」、「ひらめき力」をつけてもらいたいと考えています。その一環で、外部講師なども活用して半年から10カ月の長期研修を実施しています。リーダーシップを磨くため、ロジカルシンキングや相手に伝えるコミュニケーション術のほか、ファイナンスやアカウンティング、データ分析力など実践的な能力やスキルも学んでもらっています。次世代の人材を育成して、現場のプロジェクトマネジャーができるレベルのチーフ・アシスタントマネジャー人材を現在の88人から30年には200人体制に増強する方針です。

全国の工場や物流施設を対象に太陽光システムなどの施工・管理・運営を一体的に手掛けているテスグループ

――全社員の人材活性化のため、どのような試みをやっていますか。

川島さん 当社グループはESGを重視しています。事業活動自体がE=環境に貢献しており、また上場に伴いG=企業統治も強化されました。そんな中でS=社会貢献活動もより充実していきたいとの思いから、社内横断型組織「ワクワクわーくプロジェクト」をスタートしました。私も含め性別や年齢、部署も様々な12〜13人メンバーで集まり、検討を重ねました。その結果、ボランティア休暇制度の導入のほか、募金活動等を通じてがんやパラスポーツ、災害復旧など様々な支援活動に取り組んでいます。

文系から技術職転換もあり、インドネシアなど海外市場も開拓


 

――少子化が進む中、いずれの企業も人材確保に四苦八苦しています。特にエンジニアなど理系人材の獲得は難しいのですが。

川島さん 毎年、20人程度の新卒を採用していますが、年々理系の人材を確保するのが難しくなっています。もちろん、従来通り理系出身の学生が技術職配属となりやすい傾向は変わりませんが、文系出身でも、適性を持っている、やってみたいという意欲があれば、チャレンジできる環境作りを行っています。

すでに社内には文系出身の技術職社員も複数います。営業職と技術職を経験した上で技術職としてのキャリアを選択し、現在では大規模な太陽光発電所建設工事の所長を務めたり、大型コージェネレーションプラントの工事主担当を担ったりするような社員もいます。

松本さん 確かに人材不足は深刻です。しかし、再エネ市場は2050年には市場規模が20年比の1.3倍に伸びると言われています。それに対応し成長し続けるためにも様々な手を打っていく必要があると考えています。

例えば、当社グループはインドネシアなどで海外事業も展開していることもありますが、ダイバーシティの観点からも今後は外国籍の人材採用も検討しています。また有能な人材を抜てきすることはもちろん、次世代のリーダーを計画的に育成することに注力し、会社の成長を支えていきたいと考えています。

(聞き手は代慶達也)

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