あなたの会社の出社ルールは?
3年半ぶりオフィス賃料上昇が示すこと

2024.1.19
日経ビジネススクール

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皆さんの会社ではどんな出社ルールがありますか? 出社と在宅勤務では、それぞれに一長一短があるものですが、産業界で出社回帰が進んでいるのが実態です。

出社回帰がはっきりと

出社回帰を象徴する出来事が起きました。東京都心部では、新型コロナウイルスの影響から下落してきたオフィス賃料がおよそ3年半ぶりに上昇しています。三鬼商事(東京・中央)によると、東京都心部では2023年12月に賃料が前月比0.1%高となりました。人材確保のために都心のオフィス需要が高まっていることが背景にあります。

振り返ると、2020年春にコロナ問題が深刻化して以来、日本では在宅勤務が一気に浸透しました。NTT東日本と独立行政法人情報処理推進機構が20年4月から、シンクライアント型VPNを活用した「シン・テレワークシステム(以下、本システム)」の無償提供を始めたことも、在宅勤務を後押ししたはずです。

NTTが打ち出した新しい働き方

コロナ下の産業界で話題になったことといえば、NTTです。同社は2022年7月、新たな働き方「リモートスタンダード」を始めました。勤務場所を「社員の自宅」とする制度です。当時、国内主要グループ会社の従業員の半数に当たる約3万人を対象にスタート。出社を出張扱いにする徹底ぶりでした。

NTTの新たな働き方を象徴するコンセプトが「ワーク・イン・ライフ」。仕事と私生活の両立を目指す「ワーク・ライフ・バランス」に対して、仕事を含む人生全体の充実を意味する言葉です。日本経済新聞の取材に対して、NTTの山本恭子執行役員は「ワークはライフの一部。ライフ全体の充実なくして、仕事の充実はない」と説明しています。

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在宅勤務率は果たして非効率なのか

一方で、最近になって出社回帰の動きがはっきりしてきました。日本生産性本部が2023年7月に実施した調査では、企業のテレワーク実施率は15.5%となり、20年5月の31.5%から半減しています。

同様の傾向は、他の調査でも出ています。日本経済新聞社がまとめた2023年のスマートワーク経営調査によると、1カ月の勤務日のうち在宅勤務をした比率を指す「在宅勤務の実施比」が2割未満だった企業が53.6%にのぼりました。22年と比べて18.6ポイントの上昇です。

企業の生産性や従業員のエンゲージメントにもかかわる問題だけに、単純に在宅勤務比率は何割が適正なのか、決めつけるのは難しいものの、出社派が増えていることが分かります。在宅勤務だと、「勤務とプライベートの境目が曖昧になる」、あるいは「管理職にとってマネジメントの負荷が高まっている」などの指摘も耳にします。とすれば、NTTのような先進的な取り組みを進める企業は少数派だったということになります。在宅勤務を含む多様な働き方を認めて、生産効率を高める本来の狙いが産業界に浸透していなかったとしたら残念なことでしょう。

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なぜ在宅勤務なのか、なぜ出社なのか明確に

2023年12月24日の日経電子版記事によると、日本生産性本部の上記とは別の調査では、自身のテレワークでの働き方について82.6%が「満足」と答えました。管理職が部下のテレワークでの仕事ぶりを「満足」とした回答も76.1%に上っています。

この点について、日経電子版が識者に意見を出してもらうThink!で、サイバーエージェントの石田裕子専務執行役員が分かりやすく説明しています。以下に、一部引用してみましょう。

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出社している人は「出社した方が生産性が高い」と言い、テレワークをしている人は「在宅勤務の方が生産性が高い」と言うのは、人は自分の見たいものを見たいように解釈するからに他なりません。企業が働き方の選択肢を増やすにしても減らすにしても、一度従業員がテレワークを経験し仕事が成立することが分かっている以上、それぞれの選択肢の意義や理由を明確に説明できないと納得しない人が増え、最終的にエンゲージメントの低下を引き起こす可能性があることを理解しておかなければならないと思います。

いかがでしょうか。石田氏が、企業が考えなくてはいけない課題をずばり指摘していると思います。

 

(村山浩一)

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