ジュガールとは何? インド発、世界2位のITサービスが求める人材像

2024.3.8
日経ビジネススクール

日経の人材開発コラム
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日本TCSの谷村副社長

ITサービス世界2位のタタコンサルタンシーサービシズ(TCS)。英Brand Finance社によるITサービス部門のブランド評価額ランキングでは、米アクセンチュアに次ぐグローバル企業に位置づけられ、日本での事業展開も加速している。人的資本経営で日本企業の先を行くインド発の世界的なITサービス企業はどのように人材を確保し、育成しているのか。TCSの日本法人、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS、東京・港)最高人事責任者(CHRO)の谷村佳幸副社長に聞いた。

話題の麻布台ヒルズに本社機能を移転 知名度もアップ


 

――2023年11月にオープンした都内最大級の再開発都市「麻布台ヒルズ」にある日本一の高層ビルに本社機能を移転しましたが、社内外からの評判はどうですか。

 

当社はIT企業なのでリモートワークをよしとしていますが、コロナ禍には5%台まで下がった出社率は50%前後にまで回復しています。新たなオフィスは営業部門が中心で、ショールームやお客さまとの共創空間としての機能も備え、「訪問してみたい」とお客さまからの評判は上々です。

TCSグローバルの社員数は60万人を超え、売上高は279億ドル(約4兆1千億円)に達しています。しかし、アクセンチュアやIBMなど競合他社と比べて、日本での知名度はまだ高いとは言えません。IT人材の獲得競争は厳しくなっていますが、新オフィスはブランド認知向上のほか、就活学生や転職希望者を惹きつける上でもプラスになっています。最近では新卒の内定者にもよく見学に来てもらっています。

 

――日本の上場企業は23年度から人的資本経営の情報開示に取り組み、人材育成やダイバーシティ対応に本腰を入れていますが、どう評価しますか。

 

もともとTCSは人材育成に力を入れていますし、日本TCS社員の国籍構成は32カ国に及びますので、ダイバーシティでもかなり先行しています。日本企業も人材戦略を立案、様々なKPI(数値目標)を設定して人材を育て、活性化するのはいい試みだと思います。中でも注目しているのは「自分の会社を知人や友人に紹介できますか」といったネット・プロモーター・スコア(NPS)ですね。

ある急成長している日本のIT企業はNPSを本格導入していますが、当社も社員の紹介で人材を採用する「リファラル採用」を導入しているので、参考にしたいと考えています。この採用方式のほうが人材の資質や信頼性が確かで定着率も高いのです。

TCSは世界共通の人事育成・評価システムを構築しているという

新卒向けリファラル採用も開始 若手も成果次第で報酬20%上昇


 

――どのようにリファラル採用を進めていますか。

 

従来の中途採用だけではなく、新卒でも23年度から独自のリファラル採用を進めています。今の新卒の就活生は1人当たり5社の内定を確保しているといわれているので、内定辞退者が増えています。そこで当社は内定者に学生の知人を紹介してもらったり、自社の若手社員に出身校の後輩を紹介してもらったりする、新卒向けのリファラル採用をスタートしたところです。またITエンジニア未経験の人材も対象となる「ポテンシャル採用」による異業種からの採用も積極的に進めています。

 

――採用後にどのようにして人材を育成していますか。

 

TCSは「Elevate(エレベート)」というグローバル共通の階層別人材育成システムを導入しています。入社して2〜3年のジュニア層、それ以降のミドル層、シニアリーダー層の3つのグレードに分かれ、それぞれのロール(役職)やジョブ(職務)に応じたトレーニングを実施、認定試験に合格後、実務において成果を上げたことが評価されば、昇給や昇格につながる仕組みです。

ジュニア層の研修期間は6カ月で固定していますが、その後の研修では、例えば、データサイエンスやセキュリティーなど専門性に応じたトレーニングを適宜実施します。ジュニア層もしっかり実績を上げれば、報酬は20%上がります。研修を経て成果を上げた、5段階評価でB以上、約40%に当たる社員は、昇給や昇給の対象になる、公正な仕組みです。

多国籍チームで働く インドへの実地研修も開始


 

 ――日本人だけではなく、インド人など多国籍の人と一緒に働くため、英語力など異文化コミュニケーションが必要となりますね。

 

日本TCSの約3500人の社員のうち約900人はインドからの出向者で、インドにも日本企業専用のデリバリーセンター(開発拠点)があり、ここでは約5000人の社員が働いています。TCSではプロジェクトごとに適材適所で人材が配置され、多国籍なチームとなるケースが珍しくないことから、語学力は必須になります。

英語によるコミュニケーション能力の養成については「Excedo(エクセド)」というビジネス英語学習プログラムを採用し、3年間で計350人が学習を終えました。なかなか難しいのですが、実践的で効果的なツールです。さらに23年末から若手社員を選抜して、インドのプネやチェンナイなどの開発拠点に派遣する実地研修プログラム「Guruklu(グルクル)」も始めました。

 

――日本TCSが求める人材像はどんなタイプの人でしょうか。

 

当社が採用や採用後の育成で重視している人材の資質はフレキシビリティー(柔軟性)、アダプタビリティー(順応性)、そしてアジリティー(俊敏性)の3点です。インドには「ジュガール(Jugaad)」という言葉があります。日本人は結果に至るまでのプロセスも重視しますが、インド人は結果がすべてで、課題解決力が高いと言われます。ジュガールとは、何か突然のトラブルが起こった際も、限られた条件で創意工夫して、なんとか問題を解決するマインドセットを言います。

英語でいう「ハック」とも似ています。ITの世界では、イノベーションが次々に起こることから、時代や環境の変化に迅速に即応するアジャイルな開発手法が求められます。社内でも急にプロジェクトの計画や予定が変わることがありますが、ITの世界では珍しいことではありません。日本TCSはジュガールに共感できる人材を求めています。

 

(聞き手は代慶達也)

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