コンプライアンス研修とは?効果的に研修を行うポイント

2024.2.1
日経ビジネススクール

コンプライアンス(法令遵守)は、企業の社会的評価や信頼の維持に必要不可欠です。最近では、コンプライアンスの重要性を社員に理解してもらうために、コンプライアンス研修を実施する企業が増えています。しかし、いざコンプライアンス研修を実施しようとしても、どのようなテーマを取り扱うべきか悩んでいる企業の担当者の方もいるのではないでしょうか。


本記事では、コンプライアンス研修を効果的に行うポイントを解説します。社員にコンプライアンスの重要性を理解してもらえるテーマや研修の実施方法を紹介します。ぜひ最後までご覧ください。 
  

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企業に不可欠なコンプライアンスの概念

コンプライアンスは、日本語にすれば「法令遵守・法律や規則を守ること」といった意味です。近年では、ただ法律や規則を守るだけでなく、社会問題解決への貢献や環境への配慮などの意味も含まれています。

コンプライアンスが重みを増した背景

コンプライアンスが重みを増している理由には、主に3つの社会意識の変化が挙げられます。

  • 企業が起こす不祥事の増加
  • グローバル化
  • テクノロジーの進化

上記の背景から、企業活動に注がれる国内外の視線が厳しくなり、企業側も従来に比べて格段にコンプライアンスを意識せざるをえなくなっています。

コンプライアンス違反のリスク

コンプライアンスに違反すると、下記のようなリスクが生じます。

  • 社会からの信用失墜
  • 政府や行政からの罰則・処分
  • 損害賠償の支払い・売り上げ減少による業務悪化

重大なコンプライアンス違反を犯すと、たちまち社会からの信用を失ないます。処分・罰則が科されるだけでなく、業績の悪化で最悪の場合は経営破たんにつながり、これまでつくりあげてきた企業価値が崩壊します。

 

コンプライアンス違反により多大な損害を被った例はいくつも存在します。

 

社会的な信用を守るだけでなく、多大な損害を防ぎ、企業の維持・存続を図るうえでも必ずコンプライアンスを徹底しなければなりません。

コンプライアンス研修の目的

コンプライアンスの重要性を社員に意識づけするには、研修が効果的です。ここでは、コンプライアンス研修の目的を3つ解説します。目的を明確にしたうえで、開催テーマや実施方法を決めましょう。

【コンプライアンス研修の目的】

  • リスクを回避する
  • 法令を含めた社会ルール、および社内で守るべきルールを共有し意識を高める
  • 企業価値の維持・向上を図る

下記で解説する内容を参考に、コンプライアンス研修を企画・実施する前に、目的を明確にしましょう。

リスクを回避する

コンプライアンス研修は、組織のリスクマネジメント・リスクヘッジが最大の目的です。研修のなかで、「どのような行為が違反につながるのか」「違反を犯すとどのような損害を被るのか」を説明します。

 

事例を交えながら説明することで、社員一人ひとりが危機感を抱き、コンプライアンスを徹底する重要性の理解が深まるでしょう。繰り返し研修すると、コンプライアンスへの意識が高まり、不正が起きにくい組織の体制づくりにつながります。

法令を含めた社会ルール、および社内で守るべきルールを共有し意識を高める

コンプライアンス研修は、社会や社内で守るべきルールに対する意識改革にもつながります。企業のなかの狭い空間で過ごしていると、その場の雰囲気や長年染みついてきた組織風土に流され社会で一般的に守るべきだと認められている基本的なルールを見過ごしている場合があります。ルールの見過ごしが続くと、法律や規則に知らず知らずのうちに違反してしまうリスクがあります。定期的にコンプライアンスを意識づけしなければなりません。

 

コンプライアンス研修は、自分では気づかない無意識の感覚を正し、法令を含めた社会ルールや社内ルールを遵守する重要性を浸透させるのが目的の一つです。組織風土、職場のムードに流されるのではなく、世の中の常識を客観的に理解し守れる社員の育成が、企業の存続にもつながるといえます。

企業価値の維持・向上を図る

コンプライアンス研修で社員の意識が向上し、健全な組織運営を実現できれば、社会から信頼される企業になるでしょう。組織全体の遵法意識が高まれば、社員が一丸となり責任感を持って業務に取り組むようになり、サービス・商品の質も自ずと向上していきます。


信頼度が高い企業が提供しているサービスや商品は、消費者に安心感を与え、高い価値の提供で顧客は満足感を得られます。企業価値の維持・向上には、健全な組織運営の実現につながるコンプライアンス研修が欠かせません。

コンプライアンス研修で扱う一般的なテーマ

ここでは、コンプライアンス研修で扱う一般的なテーマについて解説します。

【コンプライアンス研修で扱う内容】

  • 個人情報保護のルール
  • SNSの適切な扱い方
  • 社内ハラスメントに関する意識
  • 著作権や肖像権のルール
  • 下請法について
  • 自社のルールについて

コンプライアンス研修は、テーマによって得られる効果が異なります。目的に応じたテーマとゴール設定が重要です。ぜひコンプライアンス研修を企画する際は、下記で紹介する6つのテーマを参考にしてみてください。

個人情報保護のルール

コンプライアンス研修で、個人情報保護法のルールについて学ぶ機会を設ける企業が増えてきました。近年、インターネットの普及とテクノロジーの進化により、誰でも簡単に他人の個人情報に触れる機会が増えました。

 

その結果、個人情報の漏洩や不正利用といった事件が増えています。誰もが自分の個人情報が流出する危険に晒されています。自分が被害者になるだけではなく、思わぬ形で加害者になってしまうケースもあります。セキュリティーへの意識を高めなければなりません。企業としてもリスク対策が欠かせません。社内サーバーの脆弱性により、企業の顧客情報や機密情報が漏洩してしまい、企業の信頼が失墜した事例は後を断ちません。

 

個人情報は身近で仕事に欠かせないだけに、常日頃から意識していないと思わぬ形で事故につながります。個人情報保護のルールをテーマにしたコンプライアンス研修は、セキュリティー対策への意識強化につながります。

SNSの適切な扱い方

近年、SNSの普及によりタイムリーな情報を収集したり、個人的な意見を発信したりする機会が増えました。SNSは非常に便利で、マーケティング戦略や広告配信のプラットフォームとして、利用している企業や社員も多いのではないでしょうか。しかし、SNSは気軽に使えるからこそ、下記のような危険な面があります。

  • 社員の発言による炎上
  • 顧客情報や社内の機密情報漏洩
  • 社員同士のトラブル発生

社員が常識を外れた不適切な発言をしたり、非公開のイベント情報を勝手に発信したりと、SNSによるコンプライアンス違反が増加しています。SNSによるトラブルを未然に防ぐためにも、コンプライアンス研修で、SNSの適切な扱い方を伝えましょう。

社内ハラスメントに関する意識

企業内のハラスメント問題は、企業が取り組むべき長年の課題です。近年では、ハラスメントの種類が増え、企業の経営陣や管理職にとって注意を払うべき事柄が格段に増えている状況になっています。

【ハラスメント一例】

  • パワーハラスメント(パワハラ)
  • セクシュアルハラスメント(セクハラ)
  • モラルハラスメン(モラハラ)
  • ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
  • マタニティーハラスメント(マタハラ)

上記で紹介したハラスメント以外にも30種類以上あるといわれています。近年では、働き方改革の一環としてリモートワークを取り入れる企業もあります。リモート環境を利用した「リモハラ」と呼ばれるハラスメントも問題となっています。

 

ハラスメントは当事者間のトラブルに止まらず、紛争や裁判沙汰にも発展するケースが少なくありません。ハラスメント対策の一環として、コンプライアンス研修にテーマとして盛り込みましょう。

著作権や肖像権のルール

著作権や肖像権のルールについても、コンプライアンス研修で取り扱うべきテーマです。コーポレートサイトやコンテンツを制作する際、Web上にある画像や写真、動画などの素材の利用・転載には注意が必要です。しかし、著作権フリーの素材を除いて、ほぼすべての素材に著作権や肖像権があり、無断利用・転載は法律上禁止されています。

 

自由にコンテンツを発信できる世の中になったため、紛争や裁判などのトラブルに発展するケースもあります。

 

著作権や肖像権は、非常に身近なルールであるにもかかわらず、つい忘れがちな問題です。コンプライアンス研修に取り入れることをおすすめします。

下請法について

下請法とは、下請け会社との取引に関する禁止事項や実務上の義務について定められた法律です。元請けと下請けとの取引は、企業における日常業務であり、無自覚のうちに法令違反に陥るおそれの高い業務といえます。公正取引委員会や中小企業庁は厳格に取り締まっています。下請法に反する行為をしてしまうと立ち入り調査や罰則を科されます。

 

元請け・下請け会社のいずれも、常に下請法を意識してコンプライアンス遵守に努めなければなりません。日頃から意識づけるためにも、コンプライアンス研修で下請法について取り上げましょう。

自社のルールについて

法律や規則を遵守するのは当然ですが、社内ルールを守る意識も重要です。自社ルールは、社内環境を整えたり業務をスムーズに進めたりするのに不可欠なだけでなく、法律・規則に違反しない予防策としての効果もあります。

 

社内ルールを守らない社員がいると、大きなトラブルに発展しかねません。例えば、社員が自宅で残った仕事をするために、無断で顧客情報を家に持ち帰ってしまうケースでは、仕事が捗って業務への貢献があったとしても、もし万が一、顧客情報が紛失・流出することなどがあれば、重大な損失となります。会社として厳しく管理する必要があります。

 

コンプライアンス研修で社員に社内ルールの理解してもらうことで、社会のルールや規範の遵守につながり、社会からの信頼獲得や企業価値の向上が期待できます。

コンプライアンス研修のポイント

コンプライアンス研修を意味のあるものにするためには、下記で紹介するポイントを押さえておく必要があります。

【コンプライアンス研修のポイント】

  • 最適なタイミングで継続的に研修する
  • 社員のニーズに合ったテーマでカスタマイズする
  • 社内の制度を一緒に整える
  • マネジメント層のマインドを変える

コンプライアンス研修の目的を達成するには、研修内容の最適化と社内の体制を整えるほか、研修担当者の意識改革も重要です。ぜひコンプライアンス研修を企画する段階で、参考にしてみてください。

最適なタイミングで継続的に研修する

コンプライアンス研修を、最適なタイミングで継続すれば、社員にコンプライアンス遵守の目的や重要性を浸透させられます。最適なタイミングを見極めるには、下記の5つのポイントを押さえましょう。

  • 同業他社でコンプライアンス違反が発生したタイミング
  • 大々的にニュースで取り上げられ、社会問題に発展するほどの違反が発生したタイミング
  • 社内でコンプライアンス違反に該当する事案が発生したタイミング
  • 新入社員・中途社員が入社したタイミング
  • 社内のルール改正や組織体制の見直しのタイミング
  • 法律やルール改正の施行のタイミング

一度だけでは、時間が経てば忘れてしまいかねません。上記で紹介したタイミングを参考に、コンプライアンス研修を繰り返し実施することで高い効果を発揮するでしょう。

社員のニーズに合ったテーマでカスタマイズする

コンプライアンス研修は、企業や上層部側で一方的にテーマを決めるだけではなく、社員のニーズや立場によってカスタマイズするのがポイントです。


社員のニーズに合ったテーマの研修を開催すると、その社員が抱えている問題解決につながる可能性があります。例えば、管理職がハラスメント問題に悩んでいるときは、ハラスメントに関しての研修があれば解決策・対策方法に気づけます。ほかにも、下記を参考にカスタマイズしてみてください。
  • 新卒社員・中途社員:SNSの使い方・著作権や肖像権のルールなどの基礎知識
  • 管理職:ハラスメントに関する研修・コンプライアンス事例への対策
  • 経営層:下請法・社内ルールのつくり方・コンプライアンス遵守の社会的意義

社内の制度を一緒に整える

組織全体でコンプライアンスに関する社内制度やガイドラインを整えることが重要です。コンプライアンス違反が発生してしまう原因の一つに、社内ルールやコンプライアンス規定の存在を知らなかったケースがあげられます。まずは社内制度を整え、コンプライアンス違反者にはペナルティがあることを周知徹底しておいてください。


コンプライアンス研修を始めることが決まっても、当初はコンプライアンス遵守の目的や重要性を理解していない社員がほとんどです。社内の制度を整え、積極的に研修を受けなければならない環境をつくらなければなりません。組織全体でコンプライアンスを遵守していく体制を整えましょう。

マネジメント層のマインドを変える

マネジメント層の意識を変えるのにも、コンプライアンス研修は効果があります。企業において、経営層や管理職以上のマネジメント層の社内での立ち振る舞いは、組織風土に大きな影響を及ぼします。マネジメント層がコンプライアンス遵守に対しての意識が低い場合は、部下も上司の姿を見て影響されてしまいます。


コンプライアンス研修担当者だけに一任するのではなく、上層部が率先してコンプライアンスに取り組み、違反が起こりにくい組織風土を醸成していく必要があるでしょう。

コンプライアンス研修の方法

【コンプライアンス研修の方法】

  • Eラーニング
  • 自社開催
  • 外部委託

 

コンプライアンス研修は企業にとって必須ですが、相当の専門知識を必要とするだけに手間やコストもかかります。自社の予算やリソースに合った実施方法を選ぶのがポイントです。下記で紹介する方法には、それぞれメリット・デメリットがあります。選定の際の参考にしてみてください。

Eラーニング

Eラーニングとは、インターネットを通じてオンライン上で研修や講義を受けながら学習する方法です。Eラーニングのメリット・デメリットは、下記の通りです。
 

 メリット  デメリット
 時間や場所を問わずに学べる  教材を作成する手間がかかる
 業務への影響が少ない  ツールを導入するコストがかかる
 進捗状況や習熟度をデータで管理できる  モチベーション維持が困難

 

自社開催

自社開催のメリットとデメリットは以下の通りです。

 

 メリット  デメリット

社内で抱える課題に合わせてカスタマイズしやすい

企画から実施までに時間がかかる
研修ツールやシステムの導入コストがかからない 研修会場を確保するコストがかかる
研修内で直接講師に質問できる 業務に影響する

 

また、コンプライアンス研修を自社開催するには、3つの選択肢があります。

  • 集合研修:複数人の社員に対して効率よく教育できる
  • オンライン研修:研修会場を確保せずに済み、コストを抑えられる
  • 社外講師による研修:専門性の高い講師に直接質問でき、その場で回答を得られる

自社開催にはメリットがありますが、開催する時間や手間やコストがかなりかかってしまうことを念頭に置いておく必要があります。

外部委託

外部委託とは、研修会社やコンプライアンスの専門家に依頼して研修を実施する方法です。外部委託のメリット・デメリットは、下記の通りです。


 

 メリット  デメリット

社内にない知見や考え方を吸収できる

委託料がかかる
外部のプロに直接質問できる 社内のニーズに合わせるために連携が不可欠
研修の企画・実施にかかる手間を軽減できる 自社の課題を完全に解決できるテーマをカスタマイズするのが困難

 

外部委託は、手間を軽減できる一方で、委託料を払わなければなりません。委託会社を選定する際は、研修実績を確認し、うまくコミュニケーションが取れる企業に依頼しましょう。

まとめ

コンプライアンス研修は、「社内のリスクヘッジ」「ルール・規則の共有」「企業価値の向上」といった目的で実施します。研修テーマをカスタマイズする際には、社員のニーズや自社で解決したい課題に合わせて企画するのがポイントです。コンプライアンス研修の効果を高めるには、マネジメント層の意識を変え、社内制度を整えたうえで、最適なタイミングで定期的に実施することが重要です。

コンプライアンス遵守は、企業内の問題だけでなく社会的な意味を含んだ重要な取り組みです。コンプライアンス遵守の重要性や違反した場合のリスクについて組織全体で理解し、健全な組織運営を目指しましょう。

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