管理職になる前に、必ず鍛えておくべき3つの力とは?

2023.10.31
日経ビジネススクール

「現場で優れた業績を上げてきた社員が、管理職に昇進してもなかなか成果を上げられない」という悩みをよく耳にします。

この問題の一因は、管理職に昇進する前の適切な育成が不足していることです。本記事では、管理職になる前、中堅社員のうちに、どのようなスキルを身につけさせておくべきかについて解説します。

管理職の育成にお悩みを抱えている方や、管理職候補層の育成にこれから力を入れていきたいと考えている方は、是非ご一読ください。

日経では、中堅社員・管理職候補層を将来のマネジメント候補として成長を加速させるためのオリジナル研修プログラムを揃えています。経験豊富な人材育成コンサルタントが課題に応じて最適な提案をいたしますので、お気軽にご相談ください。

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管理職に必要なスキルとは

ヒトのマネジメント

管理職として成功するためには、「ヒトのマネジメントスキル」が不可欠です。このスキルが重要な理由は、人間それぞれが異なる感情や動機を持っており、それに適切に応える洞察力と対応力が求められるからです。

管理職は、従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮させ、チーム全体が協力して目標達成に向かうことをサポートする役割を担います。このためには、個々のメンバーが直面する課題を理解し、解決のための支援を行う必要があります。また、従業員のモチベーションを維持し、職場の士気を高めるために、適切なフィードバックと評価が不可欠です。

さらに、チーム内で発生するコンフリクトを効果的に管理し、解決する能力もマネジメントスキルの一部です。これには、公平性と共感性が求められ、従業員間の信頼関係の構築をサポートします。

また、管理職は組織の目標を達成するための戦略を立案し、その実行を指揮する責任があります。このプロセスでは、チームの協力とコミットメントを確保するために、明確なコミュニケーションと方向性が必要です。

モノのマネジメント

管理職における「モノのマネジメントスキル」は、資源の最適化、業務効率の向上、そして組織の目標達成に不可欠です。このスキルは、物理的な資源やプロジェクトに必要なツール、さらには予算など、企業活動における重要な要素を効果的に運用する能力を含みます。

 

まず、物的資源は企業の運営において中心的な役割を果たします。これらの資源が適切に管理されない場合、業務の遅延、コストの増加、さらには品質の低下に直結します。管理職は、必要な資源がタイムリーに利用可能であり、無駄遣いされず、また必要なメンテナンスが行われていることを保証する責任を担っています。

 

次に、プロジェクトやタスクの成功は、しばしば限られた予算内での厳格なリソース管理に依存しています。管理職が「モノのマネジメント」に習熟していると、予算の枠内で最高の成果を出すための戦略的な決定が可能になり、組織全体の利益に貢献します

 

さらに、物的資源の効率的な管理は、企業の持続可能性と環境への影響にも直接関わってきます。リソースを無駄にしないことは、環境保護にもつながり、企業の社会的責任(CSR)の遵守にも寄与します。

カネのマネジメント

管理職にとっての「カネのマネジメントスキル」は、組織の財務健全性を維持し、効果的な予算管理を通じて企業の目標と成長をサポートするために不可欠です。このスキルは、資金の配分、投資、コスト削減、そして収益の最大化という、組織の財務戦略における重要な側面をカバーしています。

 

予算の設定と管理は、プロジェクトの効果的な進行と企業の財務計画に直接影響します。管理職が予算を適切に割り当て、監視し、調整する能力を持っている場合、リソースは最適に活用され、事業は計画通りに進行します。また、不測の事態や市場の変動に迅速に対応するための予備資金を確保することも、このスキルに含まれます。

 

さらに、投資の機会を評価し、リスクとリターンをバランス良く管理する能力は、会社の資金を将来の成長に向けて賢く活用するために重要です。新しいプロジェクトや技術への投資は、短期的な利益だけでなく、長期的な競争力をもたらします。

 

コスト管理のスキルもまた、無駄の削減、効率性の向上、そして組織の利益率増加に寄与します。適切なコスト管理戦略は、企業が財政的な困難に対処し、安定した運営を維持する上で不可欠です。

 
※関連記事:マネジメント研修のカリキュラム内容|研修実施時のポイントを解説します!

中堅社員から管理職になった時に、つまづきがちなポイントとは

業務遂行への過度な固執

中堅社員が管理職に昇進した際、過去の実績が業務の遂行能力によるものだと考え、新しい立場でも同じ方法を用いて成果を出そうとする傾向があります。しかし、これが彼らをつまずかせる一因となります。管理職としての役割は、個々のタスクの遂行よりもチーム全体の生産性や士気、目標達成に重きを置くものです。

業務への過度な介入は、「マイクロマネジメント」とも呼ばれ、チームの自律性を奪い、創造性やモチベーションを低下させる可能性があります。また、自ら業務に手を出しすぎることで、より戦略的、あるいは長期的な視点を持つべき管理的な決定や計画を疎かにするリスクも生じます。その結果、チーム全体のパフォーマンスが悪化するという事態につながりかねません。このバランスを理解し、自分の役割を再定義することが、新たな管理職にとっては不可欠です。

ビジネス視点の欠如

中堅社員が管理職へとステップアップする際、事業や経営の観点からビジネスを捉える能力の不足が障害となることがあります。彼らはこれまで自分の専門分野や担当業務に集中してきたため、事業全体を俯瞰し、戦略的な意思決定をするスキルが未熟な場合が多いのです。これにより、部門の業績だけでなく、会社全体の目標やビジョンと整合性の取れた計画を立てることが難しくなります。

また、市場の変化や競争環境を適切に評価し、リスク管理や将来予測を行う能力も不足していることが露呈します。このギャップを埋めるためには、経営戦略やビジネスデザインに対する教育とトレーニングが不可欠となります。

自己成長の停滞とそのリスク

中堅社員が管理職にステップアップする際、自身のこれまでの実績や能力を過信し、学び続けることの重要性を見落とすことが一つの躓きポイントです。彼らはしばしば、過去の成功がそのまま未来でも通用すると考えがちです。

 

しかし、管理職としての新しい役割は、未知の課題や状況、急速に変化するビジネス環境への対応を必要とし、これには継続的な学習と自己改善が不可欠です。自己成長のプロセスを怠ることで、新しい管理職は技術的に時代遅れになったり、チームや組織のニーズに対応できなくなったりするリスクが生じ、最終的には業績にも影響を及ぼす可能性があります。

※関連記事:新任管理職研修の主な内容と目的|研修を成功させるポイントとは?

管理職になる前に、これだけは鍛えておきたい3つの力

管理職になる前に「ヒト・モノ・カネ」のマネジメントスキルを習得しておくことが理想ですが、それに至るまでの基礎として、いくつかの基本的な能力を身につけておくことが必要です。これらの能力は、チームの効果的な運用をサポートし、将来的には、より高度なマネジメントスキルへとつながる土台となります。

事業・経営観点でビジネスを捉える力

これまでの「業務最適」から、「事業最適」視点での判断力を

中堅社員が管理職を目指す際に鍛えておくべき重要な力の一つは、「業務最適」ではなく「事業最適」で判断する能力です。これは、個別の業務効率だけを追求するのではなく、会社全体としての最適な結果を優先する思考方法を意味します。

このスキルが求められるのは、管理職が日々の業務管理から一歩離れ、組織全体の利益を最大化するためには、局所的な成功よりも全体戦略に基づいた意思決定が不可欠だからです。この視点を持つことで、リソースの配分、プロジェクトの優先順位付け、チーム間の協力など、より幅広い範囲での効果的な意思決定が可能になり、組織全体としての成長と持続可能性に貢献できます。

事業・経営視点へのシフトが、成功するマネージャーへの道

中堅社員が管理職への道を歩む上で必要なのは、業務を安定して回すだけのプレイヤー意識から、会社の将来を見据えたマネージャーの視点へと意識を変えることです。これは、単にタスクをこなすのではなく、その業務が会社にとってどのような影響を与え、事業全体の戦略や目標にどう貢献するかを常に考え、行動する能力です。

日々の業務に追われる中で、この大局的な視点を持つことは容易ではありませんが、事業や経営の成功を左右する重要な決断を下す際には不可欠です。このスキルを磨くことで、個々の業務を超えた価値創造に繋がり、組織のリーダーとして真に求められる存在になるための基盤を築けます。

ビジネス・経済情報収集を行う習慣

事業・経営観点を持つためには、世の中の経済・ビジネス情報に目を向ける習慣が必要

業務をこなす中堅社員から、事業・経営視点を持ち判断する管理職へとステップアップするには、幅広い経済知識とビジネス情報を積極的に収集・学習する習慣が必要です。

経済の動向や業界のトレンド、競合他社の動きを把握することは、ビジネス機会を見逃さず、リスクを最小限に抑えるのに役立ちます。また、リーダーシップの観点からも重要で、経済とビジネスに詳しいリーダーは信頼性が高まり、チームを成功に導くことができます。

経済知識とビジネス情報の継続的な学習は、管理職としての成功に向けた不可欠なスキルであり、自己成長と組織の発展に貢献します。この習慣を身につけることで、将来のビジョンを明確にし、戦略的なリーダーとしての役割を果たす準備ができます。

環境変化を敏感に察知し、ビジネスチャンス・リスクを常に思考する力を

事業を担う人材には、環境の変化がビジネスチャンスやリスクにどのように影響するかを考える習慣が不可欠です。この習慣は、組織にとって重要な戦略的スキルです。

環境の変化を意識的に追跡し、その影響を分析することで、新たなビジネスチャンスを発見し、競争優位性を築くことができます。例えば、市場のトレンドや技術の進化に敏感に反応し、製品やサービスを改良・開発することで、顧客満足度を高め、収益を増加させるチャンスをつかむことができます。

また、リスクを予測し、事前に対処策を考えることも重要です。環境の変化がビジネスに悪影響を及ぼす可能性がある場合、それに備えることで、組織の安定性を保つことができます。たとえば、競合他社の動きや法規制の変更に対応し、リスクを最小化する戦略を練ることが求められます。

この習慣を身につけることで、管理職として組織を成功に導く力を養い、変化の激しいビジネス環境においても堂々と対応できるようになります。

数字の観点で事業を捉える力

事業拡大のためには、効果的なデータ分析と活用が求められる

数字を理解し、分析する能力は、組織やプロジェクトの健全性を評価し、戦略的な方針を立てるための基盤となります。収益、コスト、予算、市場シェアなどの数値データを正確に解釈し、優先順位を設定することが求められるからです。
客観的な視点を持つことで、感情や主観的な判断に左右されず、事実に基づいた意思決定が可能となります。これは、難しい状況や重要な問題に対処する際に非常に役立ちます。

数字を活用する力は、リーダーシップとも密接に関連しており、組織内でのリーダーとして、チームや部門のパフォーマンスを評価し、改善の機会を見つけ出すために数字を用いることで信頼を得ることができます。

この能力を磨くためには、数値データの分析スキルを向上させること、財務、経済学、ビジネス戦略に関する知識を増やすこと、そして客観的な視点を持つトレーニングを受けることが重要となります。数字に基づく適切な判断力を身につけることが、管理職としての成功に大いに貢献します。

マクロ経済の知識と決算短信の読解力

中堅社員から管理職へ昇進する際に必要な力は、景気動向やマクロ経済の観点、そして企業の決算短信を最低限読み解けるスキルです。これらのスキルは組織の成功に不可欠で、以下の理由で重要です。

まず、マクロ経済の理解は戦略的な意思決定に欠かせません。景気動向や政策変更が組織に及ぼす影響を把握し、リスクを最小限に抑えるためには、マクロ経済の動向を理解することが必要です。
また、決算短信を読み解くスキルは、組織の財務健全性を評価し、戦略を立てる上で重要です。収益、利益、負債、キャッシュフローなどの指標を分析し、組織の財務状況を正確に評価することが求められます。
さらに、これらのスキルはリーダーシップにも関連しています。経済的な洞察力と財務知識を持つリーダーは、部下を効果的にガイドし、組織全体の成果を向上させることができます。

これらのスキルを養うためには、経済学や財務分析に関する基本的な知識を獲得し、業界トレンドに敏感になることが大切です。また、実務経験と実践的なトレーニングを通じて、これらのスキルを磨くことが不可欠です。経済と財務の理解を深め、組織の成功に寄与する準備をすることが、管理職としての成長の鍵です。

まとめ

管理職になる前に、「経済知力」の養成を

日本経済新聞社では、管理職になる前に必要な3つの力「事業・経営観点でビジネスを捉える力」「ビジネス・経済情報収集を行う力」「数字の観点で事業を捉える力」を高めるには、「経済知力」を磨くことが必要だと考えています。

「経済知力」とは、世の中の情報をもとにビジネス・経済のメカニズムを理解し、その知識を基に効果的な意思決定を行う力です。これには、国際市場の変動や産業内のトレンド、または政策の変更など、マクロとミクロの両方の視点から現状を分析する能力が含まれます。

この力を培うことで、急速な市場の変化や予期せぬ経済的ショックが発生した場合でも、その影響を迅速に評価し、企業の戦略や運営に適切に反映させることができます。

経済状況の正確な把握は、リーダーとしてチームや組織の方向性を示し、社員やステークホルダーに対して信頼を築く基盤ともなります。したがって、管理職を目指す方は、経済知力を深め、情報収集と分析の習慣を確立し、ビジネス環境における敏腕なリーダーへと成長する準備を整えておく必要があります。

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