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知っておきたい タイでよくある契約の落とし穴

■もしも紛争になってしまったら

知っておきたい タイでよくある契約の落とし穴

 例えば相手が代金を支払わず債権回収を行いたい場合、同じ被害を受けた他社と結束して訴えるのも、事実を明らかにするという点では良いですが、相手の限られた資金を他社と取り合う事態を避けるためには、債権回収のアクションはできる限り早く起こすべきです。紛争解決のためのアクションには、大まかに、口頭による請求→会社名での書面による請求→弁護士名での書面による請求→訴訟、という4つのステージが考えられます。各段階で交渉による解決を試み、状況に応じて、当事者同士で交渉するのか、弁護士を使うのか判断すべきです。

 当事者同士による交渉のメリットは、関係性のある者同士、比較的温和なムードで交渉・解決が可能なことですが、特にタイでは、パワーバランスが低い場合は交渉が不利に進む可能性があることと、論理的・合理的な内容の交渉にならない可能性があることがデメリットです。弁護士による交渉のメリットは、厳格なムードの中で専門家間における論理的・合理的な交渉が可能なことですが、デメリットとして、厳格な印象が先方の気持ちをかたくなにしてしまう可能性があること、専門家に依頼するための費用がかかることが挙げられます。弁護士に依頼するかどうかは見積もりを見てからでも決められますので、まずは相談してみましょう。

 「交渉は準備が80%」と言われています。まずは状況の把握と争点の整理をすること。次に証拠の収集。そして自己立場の確認として、有利性・不利性をある程度想定しておくことです。また、合意に至らない場合の代替案の検討など、自社のゴール設定を事前にきちんとするかどうかで交渉時間のかかり方も変わってきます。

 残りの20%は実際の交渉です。ポイントとしては、まず今後も相手方との関係性を維持していきたいのか、それとも全面抗争で良いのかを決め、それに合わせたムード作り、言葉選びをすること。次に、感情論を排除し、争点に沿って交渉を進めること。交渉の場では、相手の主張の真意を探ることも重要です。あとは提案の実現可能性・客観性、そして合意ができない場合の相手の代替措置を意識することです。

■タイ人の特性を把握すること

 ある調査によれば、タイ人は人付き合いにおいて関係性を維持することを重視しており、都合の悪いことは笑ってごまかす、嫌だという感情を隠す性質があるそうです。故に、もめごとを嫌い、立場や意見をぼやかしたり、問題に正面から向き合わない傾向があるため、交渉から逃げられないようにしなければなりません。もちろん、相手に尊重の気持ちを持つことも重要です。

 任意交渉が決裂してしまった場合は、訴訟・調停・仲裁という対応方法が考えられます。最も一般的な手法である訴訟には、強制執行まで比較的スムースに進めるというメリットがあると同時に、タイ語が要求されるため法廷に通じた通訳が求められます。また、調停は柔軟な解決が可能ですが、法的な執行力がありません。仲裁の場合、仲裁地、準拠法、使用言語などの選択が可能になりますが、ハンドリングできる人が限られることなどもあり、費用が高額になりがちです。

(ArayZ 北果林)

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