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構造改革は大都市圏への人口再集中から始めよ

 今次の金融危機以降の世界経済は1930年代の状況に似たところが少なくない。まず、世界の貿易が停滞していることがあげられる。図2に示すように、現在(2007年~2014年)の世界貿易の成長率は1930年代のそれと同じくマイナスである。

図2 世界の貿易の成長率(1800年~2014年)

※点線はデータが存在しない(not available)を意味する ※点線はデータが存在しない(not available)を意味する

 また、図3に示すように、米国の長期金利が現在のように2%程度まで低下したのはやはり1930年代である。これは米国が長期停滞に直面する可能性を示唆している。

図3 米国の長期金利の推移(1871年~2016年)

構造改革は大都市圏への人口再集中から始めよ

 現在の世界経済が1930年代のそれとは異なるのは中国などの新興国が金融危機以降も高い経済成長を果たし世界経済のエンジンの一翼を担ったからである。しかし、IMFのレポートによれば中国経済をけん引してきた住宅部門は巨大な在庫を抱えている。これが解消されるのは最短でも2020年以降である(Chivakul et al 2015)。こうした世界経済の1930年代に似た状況は日本経済の重しになっている。

ニューノーマルのもう一つの側面

 ところで、世界では直観のリセットを迫られるほどの変化が起きている。例えば、「現在、もっとも俊敏な宇宙計画を持っている国は?」、「世界最大の産油国は?」、「オンラインショッピングによる1日の消費が最大の国は?」、「5千万人のユーザーに達するまでの時間は?」、および「世界経済のエンジンは?」。これらの問いの答えは順に、インド、アメリカ、中国、数カ月、およびFoshan(中国)、Surat(インド)、Kumasi(ガーナ)といった西側のエグゼクティブがこれまで聞いたことのない都市である。

 マッキンゼー・グローバル・インスティテュートは、こうしたニューノーマルは中国をはじめとする新興国市場の発展、技術の影響の加速、世界的な人口の高齢化、モノ・サービス・資本・人々のフローの連結といった4つの力の相互作用によるものであると指摘している。その変化の速さは産業革命の10倍、またその規模は約300倍である。つまり、産業革命の3000倍のインパクトをもつ変革が起きつつある(Dobbs, Manyika, Woetzel.2015.”No Ordinary Disruption,” Public Affairs)。

 もっとも重要な変化は、「都市」に世界経済の新しいエンジンとしての役割が期待されていることである。世界経済のエンジンはもはや中国やインドといった国家ではなく、国境を越えた都市のネットワークである。例えば、今後10年の世界経済の成長の7割はアジア、南米、および中東といった新興国の都市の成長によってもたらされると予想されている。また、そうした活動の地点はこれらの新興国の中でも変化すると見込まれている。世界の都市人口は過去30年間に年平均650万人も増加した。つまり、毎年シカゴ都市圏規模の都市が7つずつ増えたことと同じである。2010年~2025年の世界のGDP成長の半分は新興国の440都市で生み出されると予想されている。これらの95%は企業の経営者が聞いたこともないような町である。戦後、世界経済を牽引した都市はニューヨーク、ロンドン、および東京であった。最近ではこれに上海、北京、およびムンバイなどが加わった。その過程において、地球規模の経済センターの重力は東京から上海や北京へシフトした(日本のデフレの一因でもある)。今後はこれまで聞いたことのないような新興国の都市が世界経済の活動の重力を変えるだろう。

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