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白熱MBA講義

セブン&アイの鈴木会長退任劇を4つのなぜから考える

「カリスマ経営者の独裁的行動」の系統進化要因

 系統進化要因は、「その企業の過去の経営者から、どのようにしてカリスマ的独裁者的行動が生まれてきたのか」という問いになるだろう。鈴木氏の場合に関して仮説を立てるとすると、次のようになろうか。

(1)前任者のDNA:前任者は、イトーヨーカ堂創業者で現名誉会長の伊藤雅俊氏である。同氏は、東京千住の小さな羊華堂洋品店を、巨大な小売りグループ企業に一代で育てた人物である。彼の経営スタイルの中で、次の二つは後代にも継承されたDNAだったのではないか。

(a)借金嫌いによる慎重な経営:伊藤氏は、幼少時母親が借金で苦しんだことや創業初期の資金難から、極度の「借金嫌い」だったという。それが、収益重視の経営方針や慎重な出店政策につながっている。

(b)売り場(マーケティング)重視・本業重視:伊藤氏は、小さな商店時代に、商圏内の顧客ごとの細かいニーズに合わせて品ぞろえを徹底し、顧客からの信用を獲得した。そこから、「信用第一」のために「お客様に喜ばれる品揃えを続ける」という信念が培われた。まさに「顧客のニーズに応える」マーケティングそのものである。それが、多角化よりは本業、しかも売り場の魅力アップと単品収益管理を重視する経営姿勢となっている。

(2)突然変異としての鈴木氏のDNA:鈴木氏は、元々小売りには興味もないながらイトーヨーカ堂に中途入社し、しかも販売や仕入れの経験もない中で経営者になった言わば、小売り企業での異端分子である。彼の経営上の信念は、セブンイレブンの創業時の苦難と、後のイトーヨーカ堂の「業革」の苦闘から生まれたようだ。

(a)徹底力:創業時の苦難の中で、ドミナント出店(高密度多店舗出店)、小口配送などの革新的な施策を、社内外の抵抗と反対を押して徹底的にやり遂げた。そこで「トップの役割は、ものごとをいかに徹底できるかにある」という強い信念と徹底スキルが培われたようだ。

(b)統計と心理学による変化の読み:鈴木氏は、ヨーカ堂の前職時代から、統計と心理学に造詣を深め、ヨーカ堂入社後は、営業はしないながら、販売データで、店頭の動き、顧客の心理やニーズなどの微妙な市場変化を的確に読みとるスキルを蓄積してきた。現在のビッグ・データ・アナリストの先駆者的存在とも言える。

「カリスマ経営者の独裁的行動」の発達要因

 発達要因は、「部下たちが、どのようにしてカリスマ的独裁者的行動を形成していくのか」という問いだろう。これは、以下の要因があると思われる。

(1)徒弟的たたき上げ:鈴木氏の部下たちは、日々仮説―検証サイクルを鈴木氏と一緒に回し、鈴木イズムの薫陶を受け、鍛錬されてきた。鈴木氏の考えを先取りし、その期待に応えることに長けたもののみが生き残る仕組みだと想像する。またコンビニという複雑ではあるが、基本的には単一事業の経営に集中特化しており、その累積経験効果は一層高い。

(2)ライバル的部下の排除:同時に、部下が成長して、自分のカリスマ性や独裁的権威を脅かすのは、おそらく慎重に避けてきたと想像する。自分を超えそうな部下は排除した結果、「鈴木信者」に取り巻かれることになったのではなかろうか。

鈴木氏の辞め方・辞めさせ方は適切だったか?

 以上が「ティンバーゲンの4つのなぜ」による分析結果である。これを元に、次の2つの問いを考えてみよう。

 第一の問いは、「鈴木氏の辞め方・辞めさせ方は適切だったか? 有能な鈴木氏を慰留すべきだったのではないか? 平和的・段階的政権交代はできなかったのか?」である。

 「4つのなぜ」分析からの仮説は、「鈴木氏の経営者としての力量はすでに限界だったので、もっと早く辞めるべきだった。また鈴木氏は自ら道を譲れなかったので、結局残念な辞め方しかできなかった」というものである。

>> 鈴木氏の退任は遅きに失した

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