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白熱MBA講義

ビジョンと理念による統合的ガバナンスの実現

理念から逸脱した人材は解雇するGE

 再び米国のGEのケースを引き合いに出そう。GEにおける有名な9ボックスの人材評価とは、業績の目標達成度と理念の体現度合いをそれぞれ3段階のクロス評価を行い、両方優れていれば昇進、目標達成が未達でも理念を遵守していれば再チャレンジを与えるが、いくら業績面で素晴らしい数字を達成していたとしても、理念から逸脱した判断や行動を繰り返す人材は解雇する、というものだ。

 つまり、数字や業績よりも理念の遵守を会社として重視しているのだが、評価に直結させることで組織の規律として強烈に実践しているということだ。

 そして、経営や現場組織にとって最大の踏み絵は、足元の企業業績や事業目標達成のための手段が、ビジョンに示された会社の意思や理念における価値基準に矛盾したときに、ビジョンや理念をどこまで優先することができるか、にある。

 このような対立が企業の社会的責任や倫理的行動と経済合理性との間で生じた場合、その踏み絵的瞬間において経営者や現場当事者がいかなる判断と行動を取るのかによって、その会社として特に法的・倫理的規律が働いているかが明らかになる。現場の社員一人ひとりが個人の良心や倫理観に基づいて、判断し行動できる組織体質を作ることができるか。そのためにも、経営者はビジョンや理念の重要性や意義を組織内にコミュニケートして浸透させる不断の努力が重要であると共に、自らの判断や行動でそれを体現していくことが求められている。

 組織論の古典的名著である「エクセレント・カンパニー」では、トム・ピーターズは企業の共有価値観の重要性を語り、「ビジョナリー・カンパニー」では、ジム・コリンズは優れた企業は「カルト集団」の様でなければならないと、求心力あるビジョンや理念の重要性を過激に説いている。まさにビジョンや理念は経営や組織に推進力と規律を与える、現代経営の基軸なのである。

統合的なガバナンス組み立ての必要性

 ここで一旦、様々な切り口や要素が提示されたコーポレートガバナンス論を整理しておこう。本稿では、まずガバナンスが機能するためには、経営の規律と組織の規律の両方が揃って確立していることが重要であることを述べてきた。そして、そのためには制度・体制の整備を通して組織内の規律を管理するだけなく、ビジョンや理念の浸透や人材育成などを通して健全で自律的な組織体質を醸成していくことの重要性を論じてきた。

 多少模式的な表現になるが、実効的なコーポレートガバナンスを実現するためには、ハードとしての制度体制の整備と、ソフトとしての理念・人材的な取り組みの両面からの統合的なアプローチが必要と言える。

統合的ガバナンスのイメージ
ビジョンと理念による統合的ガバナンスの実現

 ここで言うハードの整備、つまり制度・体制面の整備には、多くの基本的なガバナンス機能が含まれる。例えば、業績管理機能の構築。これには事業計画や年度予算の策定や承認、進捗管理、さらには組織改編や投資案件などの重要事項の承認も含まれる。あるいは監査機能の充実。監査機能は多様であり、監査役の存在、社内監査体制の整備、コンプライアンスの根幹となる内部統制制度の確立、そして外部の監査法人による会計監査の全てを含むものだ。

 さらには、その監査の対象となる各種のマニュアル・規定集の整備。これらは組織内に正しい業務手続を徹底するものとして、言うまでもなく必須のものだ。そして、それらの頂点に取締役会が存在して、以上の諸機能の掌握・監督を行うのが、法令的にも定められている公式なガバナンス体制である。

 一方、ガバナンス上のソフトの充実に含まれるのが、前述のビジョンや企業理念の策定と運用であり、その体現者としての人材育成・評価も対象となる。そして、その延長線上に経営トップの指名・評価・交代という経営者人事機能があるが、これは取締役会に与えられた重要な権能でもあることから、ハードとソフトの両方に跨る、まさにコーポレートガバナンスの要諦であることがわかる。

 結局、ハードにせよソフトにせよ、その運用を支配する経営者人事がガバナンスの中心命題であるという点に再び帰着することになる。

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