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フレームワークで働き方改革!

「社長の性格を変えないと改革できない」は本当か?(堀 公俊)

第6回 網羅的に問題を検討する「ロジックツリー」

なるほど、こんな手があったのか!

 残業を減らすためのユニークな取り組みをしている企業があります。例を挙げると、
・残業するときは、「残業中です」と書いたTシャツを着せる
・退社時間を朝礼で宣言して、守れなかったら恥ずかしい罰を与える
・残業を減らした分だけ、ご褒美の手当てやボーナスがもらえる
・残業をチケット制に。1カ月にもらえるチケットに上限がある

 今や、「ノー残業デー」「上司の率先退社」「強制消灯」くらいは当たり前。関係各位の創意工夫と涙ぐましい努力に頭が下がります。

 これらを見て、「素晴らしい! ウチでもぜひ」と思った方。それこそまさに落とし穴です。

 こういった取り組みは、他の施策と一緒にやってこそ効果があります。場当たり的に形だけ真似ると、サービス残業が増えたり、家に仕事を持ち返ったりといった、副作用が必ずでてきます。

 置かれた状況にもよります。一口に残業が多いといっても、どのくらいの多さなのか、時期や人のバラツキはどうなのか、それによって打ち手が変わってきます。社風の問題もあり、強制的にやると、かえって社員のやる気を削ぐことにもなりかねません。

 やはり、問題の本質にメスを入れ、総合的に施策を組み合わせていなかいと、一筋縄ではいきません。何にでも飛びつく癖のある方、気をつけてくださいね。

社長を変えない限り改革はできない?

 そこで登場するのが「なぜなぜ分析」(5Whys)です。「なぜ」「なぜ」と何度も問うことで、真の原因が見つかる、という考え方です。うまくいくかどうか試しにやってみましょう。

(1)「なぜ残業が減らないのか?」→「仕事が多すぎるから」
(2)「なぜ多すぎるのか?」→「人手が足らないから?」
(3)「なぜ足らないのか?」→「人的コストをかけないから?」
(4)「なぜかけないのか?」→「会社の方針だから」
(5)「なぜ方針なのか?」→「社長がケチだから!」

 結局、残業が減らない真の原因は、社長の性格にあることが分かりました。社長を代えるか、性格を変えてもらえれば、この問題は解決できます。本当にそうでしょうか。そうだとしても、実現できるのでしょうか。

 なぜなぜ分析は、問題解決に威力を発揮するフレームワークの一つです。とはいえ、正しい使い方をしないと、こんなとんでもない結論を導いてしまいます。

 たとえば、一つの現象に対して、原因が必ずしも一つとは限りません。洗いざらい検討した上で、本流を追っかけていかないと、どうでもよいところを掘り下げることになります。

 また、原因は、できるだけ客観的なものを探さないといけません。個人よりも組織、資質や風土よりも制度やシステム、心理よりも行動など。手が打てる原因を見つけないと意味がありません。

モレなくダブリなく要因を洗い出す

 この点を改良したのが、論理思考で定番のフレームワークである「ロジックツリー」です。

 まずは、「なぜ残業が減らないのか?」の原因をモレなく挙げていきます。「仕事が多すぎる」の他にないでしょうか。すぐに思いつくのが「生産性が低い」です。

 では、仕事が多すぎる原因は「人手が足らない」の他にないでしょうか。人手(イン)と業務量(アウト)が見合っていないのですから、「ムダな仕事が多い」が考えられます。「生産性が低い」ほうは、「スキルが低い」「仕組みが整っていない」に分けることにしましょう。

 こうやって、考えられる要因を2つ、3つに大別して挙げていけば、すべての要因を網羅したツリー図ができあがります。これがロジックツリーです。要因をモレなくダブリなく(MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)挙げていくところに特徴があります。

 でき上がったツリーを見ながら、どこが本質的な原因なのかを検討していきます。目星がついたら、何らかの定量的なデータを集め、仮説を検証するのが望ましいやり方です。

「社長の性格を変えないと改革できない」は本当か?(堀 公俊)

複雑な問題をシンプルに考える

 ただし、ロジックツリーには弱点もあります。要因同士が相互に絡み合っている(独立でない)ときには、あまり役に立たちません。

 典型的なのが、スキルが低いから人手が足らなくなる、あわてて採用するとスキルが低い人が集まる、といったケースです。原因が結果を生み出し、その結果が原因となって結果を強化してしまう。原因と結果が入れ子になっている場合には歯が立たないのです。

 特に、人や組織がからむ問題は、悪循環になっていることが多いもの。単純にロジックツリーをつくっても分析しきれないことがあります。

 もう一ついえば、「家に帰りたくない」「職場から帰りづらい」といった、漠然とすべての要因に関わる話も、扱うのが難しくなります。そんな時は、別のフレームワークがあり、おいおい紹介していくことにしましょう。

 ロジックツリーの良さは「Aになるのは、主にXかYしかない」と割り切って考えるところにあります。その切れ味を活かせば、複雑な問題もシンプルにとらえることできます。ここぞというところで使ってみてください。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
「社長の性格を変えないと改革できない」は本当か?(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)、『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版)など多数。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

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