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英文会計はこう読め

キャッシュフロー計算書見れば 経営者の意思がわかる 第8回 キャッシュフロー計算書の8つのパターン

■アップルとIBMのキャッシュフロー計算書を比較してみよう

 では、前回のコラムで解説したアップルとIBMのキャッシュフロー計算書を分析しておきましょう。図表2の一番下のトヨタのキャッシュフロー計算書は、アップルとIBMのキャッシュフローの特徴を説明するために付け加えています。

図表2 アップルとIBMとトヨタのキャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書見れば 経営者の意思がわかる

 まずトヨタのキャッシュフロー計算書から説明しましょう。営業キャッシュフローのプラスの額と投資キャッシュフロー(Investing cash flows)のマイナスの額が常にほぼ同額です。つまり、営業活動で稼ぎ出した現金(Cash)をほぼそのまま投資活動に充てているということです。これが日本の伝統的な長期ビジョンの優良企業のキャッシュの使い方です。

 一方で、IBMのキャッシュの使い方が欧米の優良企業のキャッシュの使い方です。稼ぎ出した営業キャッシュフローの約6割を財務キャッシュフローのマイナスに充てています。この中身は配当金の支払いと自己株式の取得です。つまり、株主のために多くのお金を使っているのです。欧米の企業は株主資本主義の考え方がベースになっています。事業は基本的に株主のために行われているのです。

 アップルのキャッシュの使い方はどちらかといえばトヨタに近いかもしれません。しかし、投資キャッシュフローを子細に眺めてみると、確かに投資もかなり行っているのですが、投資キャッシュフローの大半が有価証券の取得です。つまり、投資に向ける以上の営業キャッシュフローが積み上がっており、それを有価証券に変えて次の展開を待っているという感じなのです。

 このようにキャッシュフローを見てみると、会社の状況や経営者の意思が読み取れるのです。

 今回のコラムで英文会計に関する一連のコラムは終了です。財務3表を一体にして勉強すれば、英文会計も容易に理解できます。

 グローバルに活躍しようと思っている人がまず理解しておかなければならないことの一つが、世界共通のビジネス知識である英文会計ではないかと思います。会計が理解できれば、ビジネスを高く広い視点から眺めることができるようになります。なぜなら、会計は事業全体のプロセスを数字で表しているからです。この高く広い視点こそが、グローバルに活躍するために不可欠な要素ではないかと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。このコラムが英文会計を理解するための一助になればはなはだうれしく存じます。

◇   ◇   ◇

國貞 克則氏(くにさだ かつのり)
ボナ・ヴィータ コーポレーション代表取締役、日経ビジネススクール講師
キャッシュフロー計算書見れば 経営者の意思がわかる
 1983年東北大学工学部機械工学科卒業、神戸製鋼所入社。海外プラント輸出、人事、企画、海外事業企画に従事。96年米国クレアモント大学ピーター・ド ラッカー経営大学院でMBA取得。2001年ボナ・ヴィータ コーポレーションを設立して独立。「社長の右腕業」として中小企業の経営企画・人事組織・ 会計財務面をサポートする。経営幹部・管理職向けリーダー育成研修、わかりやすく会計の仕組みが理解できる会計研修などが得意分野。
 著書に『財務3表一体理解法』『財務3表一体分析法』『財務3表実践活用法』(以上、朝日新聞出版)『The Trilateral Approach:グローバルに働く人の英文会計』(ボナ・ヴィータ コーポレーション)『書いてマスター!財務3表・実践ドリル』(日本経済新聞出版社)『究極のドラッカー』(角川新書)等、訳書に『財務マネジメントの基本と原則』(東洋経済新報社)がある。

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