Special Column

経営課題は
国際基準の英語力。
対応急げ

トライズ 代表取締役社長 
三木雄信氏(左)
東京外国語大学大学院教授 言語学博士 
投野由紀夫氏(右)

グローバル展開する企業が増えるなか、危惧されるのは社員の英語力の低迷だ。言語学・外国語教育を研究分野とする投野由紀夫教授、英語スクール「TORAIZ(トライズ)」を主宰する三木雄信氏の対談では、日本人の英語学習の課題が浮き彫りに。ビジネス研修や人材育成の仕組みも抜本的に見直す必要がありそうだ。

三木社長プロフィール

みき・たけのぶ/トライズ代表取締役社長 東京大学経済学部卒業後、三菱地所を経て1998年ソフトバンクに入社。2000年ソフトバンク社長室長就任。15 年より1年で話せる英語スクール「TORAIZ(トライズ)」を運営。

投野教授プロフィール

とうの・ゆきお/東京外国語大学大学院教授。言語学博士(英国ランカスター大学)。専門はコーパス言語学を応用した英語教育、英語辞書学、第2言語習得。日本における代表的なCan-Doリストである CEFR-J プロジェクトの代表者。

出遅れた日本の英語力。
ビジネスシーンでの課題は

──世界の公用語と言える英語ですが、日本では苦手意識を持つ人が多いかと思います。実際に日本の英語力は、Education First (EF)の「English Proficiency Index (EPI)」2023年レポートによると87位と低迷。ビジネスシーンでの課題は何でしょうか。

三木 戦略として世界展開する会社が増えています。英語を話せる人材は海外事業部門などに限られている状況ですが、ビジネスのグローバル化が進んだ現在では、例えば製造や開発の現場の方が、Zoomなどのツールを通じて米国の現地法人と直接やり取りするというような機会も出てきている。会社の研修も転換期にきていると思います。
戦略に合わせて現場でも人材育成も進める会社では、一人ひとりの英語力も含めたスキルセットを分析し、将来の経営幹部育成やタレントマネジメントをグローバルで考えています。すると問題になるのがグローバル研修。世界中のグループ会社から幹部候補生を集めて一斉研修を行うとなると、当然英語になります。英語を話せないと研修にも入れない。
さらに、幹部が全員英語話者になっている会社も増えています。英語を話せないとピラミッドの上に行けないという“ガラスの天井”があるとすると、会社としても問題ですよね。

投野 日本は高度成長期の遺産で、ガラパゴスのようなマインドセットの人もまだまだいます。しかし世界のビジネスが変わったことで、英語で話せなければ世界のリーダーシップを取れないという構図になってしまうと、もったいないですよね。

三木 国際会議ではプレゼンや質疑応答が重要なのはもちろんですが、コーヒータイムなどの雑談が大切になる場面も多いんです。雑談を通じて、お互いの利害などを包括的に理解できたり信頼関係につながったりということがある。英語によるコミュニケーション能力は、本当に大事ですよ。

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ジョブズも説得。ビジネス英語は中学レベルだっていい

──企業のグローバル進出により英語を母国語としない話者も増えていますが、日本の英語学習の課題は何でしょうか。

投野 日本では、英米のネイティブスピーカーが基準という「ネイティブ神話」的な意識がありますよね。今はもう「World Englishes」といって、English+esのように複数形で使う時代。これは、それぞれの国の英語があるという意味で、日本でも「自分の英語」という意識がもっと出てくればいいですね。
学校教育では入試のための英語が偏重されてきたなかで、社会に出たあとも生きた英語を使う場面があることを、高等教育で十分に教えられていないことは課題です。
僕自身はコテコテの受験英語。大学に入って、あれほど勉強してきたのにあまりに話せないことに驚いたことをよく覚えています。そこから受験英語で蓄えたものを使えるように転換するプロセスとして、英会話の集中合宿に出かけたり、留学してみたりすることで、ようやく使い物になる英語を身につけられたと思います。

三木 僕もそうです。英語を本気で始めたのは、25歳でソフトバンクに入社してから。米国出張で、英語が話せないことで相手の企業に軽蔑された僕を孫正義社長(当時)が「彼は優秀なんだ」と一生懸命にフォローしてくれるということがあって、これではだめだと勉強し始めました。ただ、孫さんご自身の英語は、実はIT用語以外はほとんどが中学英語のような簡単な単語だったんです。それでもスティーブ・ジョブズを説得できてしまう。ビジネスではこれでいいんだと分かった経験でもあります。

投野 僕の専門の「コーパス言語学」でも、2000語程度が会話の9割前後を占めていることが分かっています。だからおっしゃる通り、使用頻度の高い2000語と専門分野のキーワードがうまく活用できれば、かなりのことはできる。日本の英語学習では、活用のトレーニングが足りないんですよね。実は学校教育でも、小学校の授業では欧州言語共通参照枠(CEFR)で定義されるA1(初級レベル)程度の日常会話はできる教育プログラムなんです。ところが中学・高校と上がるにつれて急に入試に向けてリーディング中心の授業になり、欧州人は難なくこなす普段使いの英会話能力が身についていない。すごくいびつな英語力になってしまっています。

コーパス言語学:実際の書き言葉・話し言葉の使用例を大量に収集・電子化したコーパスを用いて言語研究を行う分野

CEFR(セファール・Common European Framework of Reference for Languages):欧州評議会によって2001年に公開された外国語の学習・教授・評価のための共通枠

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“体重は身長計では測れない” 英語は4技能テストが世界潮流に

──三木さんは、ビジネスパーソンの英語学習でも意識改革が必要だと感じているそうですね。

三木 ダイエットをする時って、皆さん体重は体重計で測りますよね。従来主流の英語テストをビジネス英語の基準にすることって、身長計で体重を測ってしまっているようなものなんです。つまり「聞く」「読む」技能を測るテストで、ビジネスに必要な「話す」技能を推し量ろうとしている。相関はあるとしても、やっぱり体重は体重計で測るように、話す技能をきちんと測れるテストを受けたい。ビジネス英語には「海外での商談」や「グローバルプロジェクトマネジメント」などリアルなゴールがあるので、本当に自分に必要な技能を見極めた教材選びが大事なのですが、そのためには従来主流のテストではチェックが十分できないんですよ。

投野 日本で「聞く」「読む」のテストが主流だった理由は、「聞く」「読む」技能の方がマークシートで採点でき利便性が高かったからです。しかし、人工知能(AI)の発達により、ほかの技能もテストしやすくなってきた。世界全体の潮流としてより発信力を測るテストの必要性が高まっていて、「聞く」「読む」「話す」「書く」という4技能をスキルごとにテストする考え方が強くなっています。

──数あるテストの中で、三木さんの主宰する英語スクール「トライズ」は「VERSANT」を採用しています。その魅力とは?

三木 英語のコーチングを考える上では、ゴールに合わせた尺度を測るためにテストが必要です。話せる英語をビジネスパーソンが学ぶという観点であらゆるテストを調べた結果、VERSANTを選びました。最新のAIを活用した英語4技能テストが提供されており、低コストで時間を選ばず受けることができます。
テストを学習の品質管理に活用するなら、やはり月1回ぐらいの頻度で受けて、学習方法の軌道修正をしたいですから。

──学習の品質管理に活用できるという「VERSANT」の特徴はどんなところでしょう?

投野 英語力を測る“スケール”が細かいことですね。CEFRではA1からC2までの6段階のスケールになっていますが、これを英語に最適化した「グローバル・スケール・オブ・イングリッシュ(GSE)」という10から90に精密化した非常に面白いスケールがあり、「VERSANT」のスコアはそのスケールにおける自分の位置を示しているんです。このスコアごとに対応するCAN-DOリストがあり、その時点までに身につけているべき語彙や文法などを一覧表で見ることができて、個人のレベルが細かく把握できます。

三木 学ぶモチベーションとしては、1点刻みのスコアはいいですね。身長や体重の変化も計測しないと自分では分かりづらいように、英語力の成長も自分では分からない。それが「VERSANT」では数値化され、上がった部分が細かく目に見えるので「話せるようになった」と自信にもつながるんです。

──ビジネス現場での利用が多いのもうなずけますね。

三木 会社の英語研修プログラムを改善する場面でも、数値で効果を測れるので実際に習熟率は毎年良くなっていきますね。「この人と同じぐらい話せれば」というような基準を、スコアとして立てられるので会社としても計画しやすいんですよ。

投野 スコアごとのCAN-DOリストによって、英語をどんな目的で使うかを独自に設計でき、目標に合わせたプログラムがつくりやすいですね。教材やタスクをつくるのに非常に便利です。テストもずいぶん変わってきているので、あとは教える側のメンタリティですね。半分ぐらいの先生たちは前向きですけど、まだまだ「自分たちのやり方は変えられない」という人も多いんです。そこを打破しなくてはと思っています。

三木 ビジネスの現場でも似た課題があって「今までそうやっていたから」という理由で固定化されていることは多いんですよね。これは会社の構造の問題で、人事異動で研修担当になると研修のプロではないし、ましてや英語研修の有効なやり方なんて分かるわけありません。だから「今までどおりTOEIC L&Rで」と変わらないのを見ると、もったいないなと歯がゆい思いがしますね。
会社のトップは海外戦略を立てていても、現場の人材育成の仕組みが追い付いていない会社が多い。そこをつなげるために、企業の研修を設計する人の意識改革が必要です。人事や育成の制度を抜本的に見直すフェーズに来ていると思います。

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