最適な人材マネジメントに求められる役割とは?人材マネジメントの方法を紹介

2023.12.04
日経ビジネススクール

企業経営において人材マネジメントが注目されています。「人材マネジメントとは何か」「どのような人材マネジメントが求められているのか」不明瞭な方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、人材マネジメントの概要、必要性、人材マネジメントのうえで必要な業務、最適な人材マネジメントの方法についてポイントをお伝えします。

日経では、人材マネジメントに欠かせない、人材のスキルを定量的に評価できるアセスメントを提供しております。また、経営戦略と連動した教育体系の見直し・構築から、教育施策の立案・実行までご支援可能ですので、お気軽にご相談ください。

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人材マネジメントとは

人材マネジメントとは、経営戦略の達成に向けて、採用、育成、人材配置、人事評価、従業員の働き方など管理を含めてマネジメントを進める仕組みです。

 

企業の財産である人材活用を最適化し、競争力向上や企業の成長を図り、最終的に経営戦略の達成を目的としています。具体的には、採用や育成、評価や報酬、適正な人材配置、異動や休職など従業員の働き方の最適な組み合わせでゴールを目指します。

 

現在、企業には、技術革新、労働力人口の減少、働き方の多様化に応じた体制の構築が課題になっています。この難局を乗り越えるには、適切な人材マネジメントがカギになります。

労務管理と人材マネジメントの違い

労務管理と人材マネジメントは、しばしば混同されます。労務管理は、社員の勤怠管理や給与計算、社会保険の手続きなどが中心です。そのために、短期的に、コストの最小化を図ることがポイントです。

 

一方で人材マネジメントは、経営戦略の達成を主眼に企業の財産である人材の活用を最適化し、競争力向上や企業の成長につなげる人材管理の仕組です。「人材を投資・企業の財産としてみなしている」という点が労務管理との決定的な違いです。そのために、長期的に、人材の最適化・人材スキルの最大化を図ることがポイントになります。

 

労務管理

人材マネジメント

主な目的

 コストの最小化

 人材の最適化・人材スキルの最大化

担当者(担当部署)  人事部門  ラインマネージャー
業務の視野  短期的  長期的
     

 

人材マネジメントが重要視される理由

人材マネジメントが重要視されている主な理由は二つです。

【人材マネジメントが重要視される理由】

  • グローバル市場での競争の激化や急速なデジタル化などの変化に対応する
  • 少子高齢化・働き方の多様化によって人材確保が難しい

人材マネジメントの目的は、企業の経営戦略の達成です。企業の財産である人材の活用を最適化し、競争力向上や企業の成長を図ります。

 

現在、グローバル市場での競争の激化や急速なデジタル化が進んでいます。企業が競争力を強化し成長するには、このような変化に対応することが必要です。

1.グローバル市場での競争激化や急速なデジタル化などの変化に対応する

グローバル競争の激化、デジタル化の進展によって、日本企業は急速かつ激しい変化にさらされています。AI(人工知能)やロボティクスにより業務内容や求められるスキルも変化しています。

 

このような変化に対し、企業は、中長期的な視点で、社員の採用、再配置や再教育など人材マネジメントに取り組み、グローバル市場で競争力を強化していかなくてはなりません。

2.少子高齢化・働き方の多様化によって人材確保が難しい

日本では、少子高齢化が急速に進み、人手不足がますます深刻化していきます。その中で、若年人口が減少し、シニア人口が増加、人生100年時代の到来により、社会で活躍する期間が長期化しています。

 

このような変化に対し、社員個人の自律的なキャリア構築の支援、再配置、成長の機会を提供するなど、人材マネジメントに取り組み、社員と企業の成長を図ることが必要です。

人材マネジメントの主な役割

人材マネジメントのうえで必要になる主な役割は以下の9つです。

【人材マネジメントの主な役割】

  • 人材の確保・採用
  • 人材の教育・能力開発
  • 人材の適切な評価と報酬
  • 人材のキャリアと配置
  • 人材のリテンション
  • 組織開発
  • サクセッションプラン(後継者計画)
  • パフォーマンス管理・エンゲージメント
  • 人材の豊かな人生のサポート

人材マネジメントとは、経営戦略の達成に向けて、採用、育成、人材配置、人事評価、従業員の働き方など管理を含めてマネジメントを進める仕組みです。

 

日本では少子高齢化が急速に進み、人手不足がますます深刻化していく中で、まず人材の確保・採用が人材マネジメントのうえで重要な業務になります。

1.人材の確保・採用

人材確保の際には、まず経営理念やビジョンの達成に必要な人材像を固め、社内にあてはまる人材がいないときには採用を考えます。新卒採用と中途採用に分け、それぞれに合う採用戦略を立てることが重要です。

 

現在、日本は、労働力人口減少により、人材獲得が激化しています。企業が求める採用基準が高すぎると、その条件に合致する求職者が減少します。企業には、本当に必要な人材を採用するのに必要最小限の採用条件になっているのかの確認が求められます。人材育成制度を整備も求められます。

2.人材の教育・能力開発

人材の教育・能力開発は、経営理念やビジョンの達成に向けて、社員がどのように成長していくのが理想なのかを考えたうえで、社員のスキルアップを促す育成計画を作成、推進することが重要です。必要に応じて、社内外の研修会、セミナー、資格取得にかかる費用の補助などを通して、社員のスキルアップをサポートします。

 

近年は、「人的資本経営」が注目を集めており、政府の「骨太の方針」においても「人への投資」が掲げられています

企業には「リスキリング(学び直し)」「スキルのアップデート」など、社員の自律的なキャリア構築の支援が求められます。

※関連資料:人材育成体系を見直すための87のチェックリスト
※関連資料:人事374人への独自調査結果を公開「人的資本経営調査レポート」

3.人材の適切な評価と報酬

経営理念やビジョンの実現に向けて、経営戦略に連動した人事評価制度を運用することが重要です。

 

適切な目標を設定し、部下が納得する方法で評価します。仕事の成果や能力、意識の向上などを適正に評価したら、成長度や実績、課題、今後への期待などを本人へフィードバックしましょう。そして評価に基づいて、昇給、昇格、インセンティブの付与などの報酬を決定します。

 

企業には、評価や報酬が決定される仕組みを明確化し、評価と報酬に対する社員の納得性を高める努力が求められます。

4.人材のキャリアと配置

経営戦略に連動した目標の達成には、どのような配置が適切かを考えたうえで、個人のプロフィールや保有資格、経験、キャリアプランなど多くの情報をもとにした最適な人材配置が求められます。

 

厚生労働省「平成28年労働経済白書」によると、「中長期的な経営改革の視点での人員配置が行なわれにくい」「一部のハイパフォーマー人材に業務を集中させる人員配置が行なわれがちである」という傾向が見受けられます。企業には、経営戦略達成に向けて、中期的な視点で最適な人員配置をすることが求められます。

5.人材のリテンション

労働力人口減少により、人材確保が困難となる中で、社員の定着が重要になります。具体的には、評価や報酬が決定される仕組みを明確化し、評価と報酬に対する社員の納得性を高める。また、社員の自律的なキャリア構築を支援し、成長の機会を提供することが大切です。

 

近年は、終身雇用制が崩れ、「この会社で自分は本当に成長できるのか」「自分の満足度というものを常に意識する」時代へ社員の意識が変化しています。とくに企業には、社員の自律的なキャリア構築を支援し、成長の機会を提供することが求められます。

6.組織開発

組織で働く人同士の関係性を深め、組織をよりよい方向に活性化させる取り組みやサポートをする組織開発が、経営理念やビジョン達成に向けた人材活用のうえで重要になります。

 

組織開発には様々な方法がありますが、例えば、企業、部署、個人の目標を連動させ、同じ目標に向かって計画を進めていく方法(OKR)があります。近年では、Googleなどの大手IT企業がOKRを導入しています。企業には、このような組織開発も求められます。

7.サクセッションプラン(後継者計画)

サクセッションプラン(後継者計画)とは、経営者や経営幹部などの後継者を育成する人材マネジメントの方法です。後継者の育成は、企業の持続的成長と発展に欠かせない経営課題の一つであると言えます。長期的な企業存続と組織の活性化にサクセッションプランは必要になります。

 

近年は、「人的資本経営」が注目を集めており、人的資本経営の実現のためにサクセッションプランは重要な役割を果たします。企業にはサクセッションプランの策定が求められます。

※関連記事:サクセッションプランは人的資本経営の最重要事項

8.パフォーマンス管理・エンゲージメント

パフォーマンス管理は、社員一人ひとりのパフォーマンスの向上で、組織や企業の成長にもつながるので重要です。例えば上司は、部下が目標達成に向けて主体的に考え行動できるように、コーチングします。具体的には、上司と部下が目標達成に向けて取った行動の振り返り、今後何をするべきかなどについて、定期的にコミュニケーションを取る方法で主導します。

 

近年は、多くの企業で、パフォーマンス管理が導入されています。パフォーマンス管理によって、一人ひとりが強みを生かして成長できる環境の整備は、社員のエンゲージメント向上につながります。その意味で、企業にはパフォーマンス管理への取り組みが求められます。

9.人材の豊かな人生のサポート

会社に関わる全ての人が、精神的、肉体的、社会的に幸福な状態であるのをウェルビーイングと言います。人材の豊かな人生をサポートすることは、従業員満足度が向上し、人材の確保、社員の定着につながるので重要です。

 

近年の企業の取り組みとしては、ストレスチェック、産業医との連携、ハラスメント相談窓口設置、従業員満足度調査(ES調査)実施などが挙げられます。

 

また、食堂・カフェの設置、独自の休暇制度の導入、社員旅行の実施、テレワークの推進、資格取得支援などの福利厚生の拡充も挙げられます。例えば、福利厚生の充実は、社員の精神的な安定とエンゲージメント向上に役立ちます。企業には積極的な取り組みが求められます。

最適な人材マネジメントの方法

企業の財産である人材の活用を最適化し、競争力向上や企業の成長を図る人材マネジメントを成功させるには、どの段階でどのようなことを行なったらよいのでしょうか。最適な人材マネジメントの方法は以下のとおりです。

【最適な人材マネジメントを行なう方法】

  • 経営戦略と連動したあるべき姿を描く
  • 人材マネジメントの各役割の中で現状と目標のギャップを洗い出す
  • サーベイ・アセスメントを活用する
  • 目的を設定し施策を打つ

人材マネジメントとは、経営戦略の達成に向けて、採用、育成、人材配置、人事評価、従業員の働き方など管理を含めてマネジメントを進める仕組みです。最初に、経営戦略と連動する人材マネジメントの策定が重要です。

1.経営戦略と連動したあるべき姿を描く

人材マネジメントの目的は、企業の経営戦略の達成に向けて、企業の財産である人材の活用を最適化し、競争力向上や企業の成長を図ることです。よって、経営戦略に沿っていなければなりません。

 

まず、経営戦略達成に向けて必要となる各役割や数を決定します。例えば、人材マネジメントの各役割を担う人物像のあるべき姿を明確化します。

2.人材マネジメントの各役割の中で現状と目標のギャップを洗い出す

現状の人的資本を分析し、人材マネジメントの各役割の中で現状とあるべき姿とのギャップの洗い出しが大切です。

 

そのギャップが人材マネジメントの課題になります。例えば、人材マネジメントの課題を解決するのに研修が必要なときは、そのギャップが研修のテーマや内容になります。

3.サーベイ・アセスメントを活用する

現在の社員のスキルや適性を把握したいときには、主観的な判断だけではなく、明確な判断基準を基にした客観的な評価が必要です。例えば適性検査や360度評価、アセスメント研修など、サーベイやアセスメントの活用も有効と言えます。

4.目的を設定し施策を打つ

企業は経営戦略の達成に向けて、どのような克服すべき課題があり、その課題を解決するのに、どのような人材マネジメントが必要か。目標を設定し、施策打つことが大切です。そうすることで、企業の経営戦略の達成に欠かせない人材マネジメントを成功に導くことができます。

まとめ

現在、企業には、技術革新、労働力人口の減少、働き方の多様化など様々な課題がつきつけられています。それらを解決するうえで、人材マネジメントは非常に有効です。本記事の内容をヒントに、経営戦略達成に向けて、企業の財産である人材の活用を最適化し、競争力強化や企業の成長につながる人材マネジメントを成功させましょう。

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