いま、中堅社員育成に注力すべき3つの理由とは?

2023.10.31
日経ビジネススクール

組織が持続的に成長し、競争力を保持するためには、中堅社員の能力開発が欠かせません。
中堅社員は、各種業務の遂行に留まらず、チームやプロジェクトの推進力となる存在であり、その経験と知識は企業にとって貴重な資産です。彼らのスキルやリーダーシップを伸ばすことは、組織全体の能力向上に寄与し、全社のパフォーマンスアップを実現します。
しかしながら、企業の人材開発戦略は、新入社員のトレーニングや上級職のマネジメントスキル強化に重点を置きがちで、中堅社員層への具体的な取り組みは不十分な場合が少なくありません。

本記事では、企業の中堅社員育成において陥りがちな課題を紐解き、いま、中堅社員の育成に投資すべき理由を解説していきます。

日経では、中堅社員・管理職候補層を将来のマネジメント候補として成長を加速させるためのオリジナル研修プログラムを揃えています。経験豊富な人材育成コンサルタントが課題に応じて最適な提案をいたしますので、お気軽にご相談ください。

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中堅社員育成で陥りがちな課題と考え方

課題1:「もう教育は不要」という罠

中堅社員は、その業界や職務での豊富な経験を背景に、基本的なスキルや業務の流れを熟知しています。このため、彼らはしばしば、指導や追加研修の必要がない、または既存の知識やスキルで十分対応可能と見なされがちです。これは誤った認識であると言えます。

現在のビジネス環境は、技術革新や顧客ニーズの変動、グローバル市場の新たな動向など、絶え間ない変化の連続です。これらの変化に対応するためには、中堅社員もまた、学び続け、スキルを更新し、柔軟性を保つ必要があります。過去の経験や現在のスキルセットに固執することなく、新しい知見を取り入れ、変化に対応する意識を持つことが不可欠です。

もし中堅社員がこれらの新しい挑戦への適応を怠れば、組織全体が市場での変化に対応できず、新しい技術の導入に遅れを取るリスクが高まります。これは、企業の競争力を損なう可能性があるため、中堅社員の継続的な育成とスキルアップに注力することが、組織の長期的な成長と成功にとって重要です。

課題2:明確なキャリアパスの不在

中堅社員が直面する最大の課題の一つは、自身のキャリアパスの不透明さです。彼らが自分の将来に対して明確なビジョンを持てず、成長の道筋が見えない場合、それがモチベーションの低下を引き起こし、結果として職場全体の生産性に影響を及ぼすことがあります。
 

その解決策として、企業は中堅社員一人ひとりのキャリアに沿った個別の道筋を提供することが求められます。
このプロセスは、定期的な1対1のミーティングの実施から始まります。こうしたミーティングでは、各社員の個人的な目標や野心、職務上の関心を深掘りし、それに基づいた成長戦略を一緒に策定します。このアプローチにより、社員は自らの職務やキャリアが企業の将来像とどのように結びついているのか、また、どのように自己実現を達成できるのかを明確に理解することが可能になります。

課題3:「型にはまった研修」の限界と課題

中堅社員の能力開発を真にサポートするためには、単なる形式ばった育成プログラムでは不十分です。現場での緊急のニーズや個々の潜在能力を無視した一律のプログラムでは、彼らの真の力を引き出すことができません。成功への鍵は、それぞれの中堅社員が持つ豊かな経験や知見を深く理解し、それを土台にして個々のニーズに合わせた教育プランを展開することにあります。

 

これを達成するには、教育担当者やその社員の直属のマネージャーが緊密に連携し、その人の強み、改善が必要な点、そしてキャリアアップへの意欲といった要素を把握した上で、育成プログラムをカスタマイズする必要があります。

 

さらに、このプロセスは、企業の戦略的目標とも一致させることが不可欠です。そうすることで、社員一人ひとりが自分の成長を実感し、同時に会社の目指す方向性にも貢献していくのです。このアプローチにより、個人の能力だけでなく、組織全体の競争力強化にも繋がります。
 

※関連記事:中堅社員育成のよくある失敗例と成功例

中堅社員育成に注力すべき3つの理由

1.管理職候補の早期育成ができる

多くの企業において、管理職候補者不足が問題に

現在のビジネス環境は急速に変化し、これに対応するためには、新しいリーダーシップのスタイルと戦略的思考能力を兼ね備えた管理職が不可欠です。しかしながら、多くの企業においては管理職候補者の育成が不足しているというのが実情です。この問題は、短期的な業績に注力するあまり、中長期的な人材育成の視点がおろそかになっていることに起因します。

中堅社員層に焦点を当てると、彼らは専門的なスキルや企業文化の理解や企業内の知識は豊富ですが、管理職として必要なリーダーシップや意思決定能力のトレーニングが不足しているケースが多々見受けられます。その結果、彼らが昇進の機会に恵まれたとしても、即戦力として期待されるほどの準備が整っていないのも現状です。

さらに、優秀な中堅社員が管理職へのステップアップをためらう一因として、彼ら自身がリーダーとしての自分を想像できない、あるいはその準備が不足していると感じている点が挙げられます。これは、企業側が中堅社員に対し、管理職としてのキャリアパスや成長機会を具体的に示し、サポートする体制を整えていないことが原因です。


この状況を踏まえ、組織の将来を見据えた戦略的視点から、中堅社員の隠された能力を引き出し、真のリーダーへと成長させる取り組みが必要不可欠となっております

中堅社員のうちに、現場視点の1つ上「事業視点」を

これからの組織の中核を担うであろう中堅社員には、現場の業務に留まらず、より広い「事業視点」を身に着けてもらうことが不可欠です。それは、彼らが単にタスクをこなす実行者ではなく、ビジネスの成長を主導し、会社の目標達成に寄与する意思決定を行えるリーダーへと成長するためです。

 

「事業視点」とは、企業のビジョンや事業全体に対する深い理解と、その達成に向けた戦略的な思考力や判断力、そしてそれを実現する行動力を指します。現場レベルでの作業に従事する中堅社員も、企業全体としてどのように価値を生み出し、市場においてどのように差別化を図るかを理解することで、自らの業務における判断や提案に幅と深みを持たせることができます。

 

「事業視点」を育むことで、彼らは日々の業務を超えた会社の発展に寄与する提案を行ったり、改善活動に自発的に参加したりするなど、能動的な行動を取るようになります。さらに、事業の成功を最大化するための資源の配分や優先順位付けについても、より戦略的なアプローチで参画することが期待されます。

2.イノベーションの加速につながる

現場の中核を担う中堅社員こそが、イノベーションの源

企業が競争力を維持し続けるためには、イノベーションの加速が不可欠です。この点で、中堅社員の役割は非常に重要です。彼らは業界の知識が豊富で、多くの場合、企業文化や顧客のニーズ、社内のプロセスといった、ビジネスの核心に関わる深い理解を持っています。だからこそ、彼らのスキルや視点を活かすことは、新しいアイデアの創出やそれを実現するための斬新なアプローチを生み出す大きなチャンスとなるのです。

 

中堅社員が経験に裏打ちされた自信を持ち、彼ら独自の視点から問題解決や改善提案を自由に行える環境があれば、企業内のイノベーションは自然と加速します。これは、彼らが日々の業務を通じて直面する課題に対する深い洞察を持っているため、実用的かつ効果的な解決策を見つけ出せる可能性が高いからです。

 

加えて、中堅社員に新しい技術や手法に積極的に挑戦させ、失敗を許容する文化を育むことで、彼らは既存の枠を超えたアイデアを恐れずに提案することできます。その結果、会社は市場や技術の変化に対応する新たな方法を開発することが可能になり、業界内でのリーダーシップを強化することができるのです。

創造的な発想を行うための情報収集と思考力が不可欠

現代のビジネス環境では、変化への迅速な対応や革新性が求められるため、社員一人ひとりの広い視野と柔軟な思考が不可欠となります。特に中堅社員は、彼らの豊富な経験を基に、日々の業務だけでなく、自社の成長に寄与する新しいアイデアや戦略を考える重要な役割を担っています。

 

しかし、そのポテンシャルを最大限に発揮するためには、業界の垣根を越え、他業界の動向や新しい技術の知識にも目を向ける必要があります。これは、彼らが異なる視点を持ち、固定概念にとらわれない創造的な解決策を生み出す上で欠かせない要素です。例えば、セミナーや異業種交流会への参加などを通じて、最新トレンドや幅広い知見に触れることが、これまでとは異なる新鮮なアイデアの創出に繋がることもあります。

 

このような外部からの刺激は、中堅社員の思考を拡張し、既存の業務プロセスや商品に対する新たな見方を促すことにつながります。加えて、知識を深めることは、社員の自己成長欲求を満たし、新しい挑戦へのモチベーションを高める効果もあります。継続的な学びと成長のプロセスは、彼らが自社のビジネスに革新をもたらすためのエネルギーを充電する源となるのです。

 

結局のところ、企業の未来は、社員がいかに創造的で、かつ情報に敏感で、そして新しいことに挑戦するかにかかっています。中堅社員にこうした機会を提供することで、企業全体としてのイノベーションの土壌を育み、持続可能な成長へとつなげていくことが可能です。

3.周りの社員のエンゲージメントを強化できる

中堅社員は、組織内で安定したパフォーマンスと影響力を発揮する重要な存在です。彼らの特性は周囲の社員、特に若手や中途社員のエンゲージメントを強化する上で欠かせません。長年の経験から培われた業務知識、人間関係の構築、そして危機管理能力など、中堅社員が持つこれらの特性は、チーム内の安定した運営と組織の目標達成に寄与します。

 

まず、中堅社員の特性として理解しなければならないのは、彼らが会社の文化や価値を具現化し、また、仕事の進め方や業務のノウハウを体系的に把握していることです。この豊富な知識と経験は、若手や中途社員にとって貴重な学びの源となります。彼らはメンターとして、具体的な業務指導はもちろん、企業文化に溶け込むためのアドバイスやサポートを提供できるのです。これにより、新しいメンバーは自らの役割を早期に理解し、自信を持って業務に取り組むことが可能になります。

 

また、若手や中途社員の成長促進において、中堅社員は彼らが直面するさまざまな課題やストレスに対処する手助けをします。新しい環境や業務に適応する過程で生じる不安を軽減し、個々の能力開発に合わせた指導を行うことで、より迅速かつ効果的な成長をサポートするのです。これは、個々のパフォーマンスの向上だけでなく、チーム全体の生産性の向上にも繋がります。

 ※関連記事:中堅社員研修が企業に及ぼすメリットは大きい!中堅社員のあるべき姿とは?

まとめ

中堅社員の育成に投資することは、単に個人のスキルアップだけではなく、組織のイノベーションや変革の促進、そして企業文化の強化にも繋がります。彼らが持つ経験を生かし、新たな挑戦に自信を持って取り組むことができる環境を整え、継続的な学びの機会を提供することで、組織全体が向上するのです。

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